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偽ギャルとイケメンエルフ

 此処で世話になると言ってのけた、帝国の密偵こと黒ギャルの柳生世理華。

 しかし堂々と言ったその言葉に、僕は疑問を感じた。

 何故、精神魔法の影響が無いのか?

 セリカから詳しい話を聞いてみると、そこには知らなかった事実が浮き彫りになってくる。


 召喚者は、無理矢理働かされていなかったのだ。

 最初だけは研修期間的な扱いの精神魔法の契約がなされるようだが、結果を残すと契約満了となって自由な身になれるという。

 そして自由になった彼等は、更なる結果を残せば家が貰え、トップクラスの人になると貴族にまでなれるという事だった。

 予想の斜め上を行く扱い方に、驚きを隠せなかった。


 そして彼女は、そんな高待遇の帝国を捨てて、蘭丸が好きという理由で安土へと残ると宣言。

 しかし蘭丸は素っ気無い態度で、その場を立ち去ってしまった。

 僕等は彼女の心変わりを阻止する為、蘭丸と彼女がくっつく事を提案。

 渋々、本当に渋々だが、恋のキューピット役を演じる事を決意したのだった。

 しかし蘭丸に、その気が無ければ話にならない。

 僕は蘭丸に、彼女の事をどう思ってるか話をしに行ったのだが。

 そして僕は彼の嫌悪している点を聞き出す事に成功したのだった。





「あのオークみたいな色黒と馴れ馴れしい態度」


「オークって色黒なの?」


「あ?そういえばオークは合流してないな」


 ゲームの世界では、ほぼ必ず出てくる存在のオーク。

 しかしこの世界に来て長い僕等も、オークという種族には未だにお目にかかっていなかった。


「オークみたいな見た目だから、彼女が嫌だと?」


「見た目だけじゃない。態度もほとんどオークにソックリだ。耳と鼻が違ったら、俺はオークと勘違いしていただろう」


 態度もあんな感じって・・・。

 オークって、ただのギャルとギャル男の集団って事!?


【ウェーイ!マオっち、遊ぼうぜ〜ぃ!レッツパーリィしようぜぃ!】


 何、今の?


【いや、ギャル男ってこんな感じかなと】


 ギャル男ってそんなんなの?


【ギャル男って、個人的にはイラッとする事を連発する連中かなって思って】


 確かにイラっとしたけども。

 実際に会ってないから、どうでもいいよ。


「ん?それって彼女の色黒と態度が違ったら、蘭丸的には印象が変わると?」


「そうだなぁ。でもあんなのそう簡単に直らないだろ?」


 なんという事だ。

 こんなに簡単なミッションだったとは。

 色黒に関しては難しい。

 流石に日焼けを白くするなんて、僕には出来ないから。


【美白魔法みたいなの存在しない?】


 したら今頃は皆、肌が綺麗だよ。

 まあこの世界の人って、結構肌綺麗な人が多いけど。

 でも、態度に関しては簡単だろ!

 だって彼女、茶道家だよ?

 茶道と華道って、マナーとかうるさそうじゃん。

 それなら簡単に直りそうじゃない?


【まあ真面目な態度になったら、急に雰囲気変わったからな。どっちが素か分からないけど】


 しかしこれなら、セリカが嫌われているという点は無くせそうだ。

 ついでだし、好みのタイプも聞いておこう。


「お前が彼女に抱いている印象は分かった。ちなみにこういう人が良いなって感じの人は居るの?」


「そりゃ居るには居るよ」


「へぇ、どんな人?」


 イケメンの好みとか、正直気になったりする。

 やっぱり自分に合うレベルの人じゃないと駄目なのか?

 理想高そうな気がする。


「聡明で気配りの出来る人。あと全体を把握していて冷静だと良いな。強くてもいいし、強くなくてもいいし」


「見た目は?」


「可愛いより綺麗な方が好みだな」


「ふーん」


【なあ、これって】


 あぁ、長可さんに近い。

 あの人綺麗だし、分からんでもないが。


「マザコンか」


「まざこん?なんだそれ?」


「あまり他意は無いから気にするな」


「余計に気になるじゃないか!」


「気にすると疲れるぞ。じゃ、僕は他の人の所に行くから」


 そう言い残して、蘭丸の元を去った。



 ちなみに他の人の所と言ったが、行くべきか迷っている人が居る。

 それは慶次の兄、又左こと前田利家である。

 会った事を伝えるべきか。

 それとも長浜へ戻る前に、さりげなく言って逃げるべきか。

 この前の怒りようを考えると、少し言い出しにくいのだ。


【別にいいだろ。言わなくて】


 そうかな?

 敢えて伝えるなら、嫌々だけど働いてますってくらいか?


【怒りの矛先が別に行くようなら、言わない方が吉だって】


 そうだね。

 部下になったハーフ獣人の連中に八つ当たりとか、見たくないもんね。

 よし!

 前田さんには会わないでおこう。





 蘭丸と別れた後、僕は長可さんの元へと足を運んだ。

 長可さんの所へ話でもと振ったのは僕だが、よくよく考えてみるとハードルが高い事に気付いた。

 だってこれで長可さんから嫌われたら、逆風どころか台風並みに吹き荒れるという事だからだ。

 しかも蘭丸はマザコン気質。

 今更ながら、とんでもない事を言ってしまったと反省している。


「ごめんください」


「あら、魔王様。今日はお客様が多い日ですね」


 長可さんが普通に出迎えてくれた。

 機嫌が悪そうな感じはしない。

 まだセリカは来てないのかな?

 いや、お客が多いって言ってたんだ。

 来てる可能性の方が高い。


「あの、小さい子供と色黒の女の子って来ました?」


「二人とも中にいらっしゃいますよ。どうぞお上がりください」


 二人とも居るのに、機嫌悪そうじゃないのか。

 これは良い方向に進んでると考えて良いのかな?


「あ!まおうさまだ」


「お邪魔になっております。蘭丸様とはお話出来ましたか?」


 ん?

 物凄く丁寧な感じがするんだけど。

 座布団の上で胡座かいてるチカとは違い、セリカは背筋の伸びた綺麗な正座をしていた。


「姿と言動の違和感が半端ないね」


「魔王様。人を見た目で判断してはいけませんよ。柳生さんは物腰の柔らかい、とても良い子じゃありませんか」


「長可様。私など至らぬ点の多い若輩者でございます」


「そんな事ないですよ。それに魔王様。彼女の点てたお茶を飲みましたか?私、これほどのお茶は飲んだ事ありませんでした」


「恐縮でございます。今後も精進させていただきたく思います」


 え?

 何この関係。

 もしかして、めっちゃ気に入られてる?


「セリカさん?ちょっとよろしくて?」


「えぇ。長可様、少しお暇させていただきます」


 変に丁寧だから、こっちも丁寧に言おうとしたら、オネエみたいな言い方になってしまった。

 まあセリカも流してくれたみたいだからいいけど。

 笑顔で応じる長可さん。

 これ、完全に落ちただろ。



「ちょっと!今、どういう関係なの!?」


「え?普通にお話しさせてもらってるだけですよ」


「全然普通じゃないよ!あんなに機嫌良さそうな長可さん、見た事無いよ!」


「あら?そうなんですか?」


 さも普通じゃないの?みたいな感じで言ってくるが、長可さんだって馬鹿じゃない。

 敵の密偵だった女に、簡単に心を許すわけがないのだ。

 それなのにこの対応。


「アンタ、凄い事してるって自覚持った方が良いよ」


「そうですか?普通に挨拶させてもらって、特技を聞かれたので、お茶を点てただけなのですが」


 お茶ってすげえぇぇぇ!!

 それだけで心を許してもらえるのか。

 それともこの子が凄いのか。


【伊達にテレビで紹介されるほどの茶道家じゃないって事だろ】


 女子高生って肩書きが先行してるだけじゃないって事か。

 本当の天才なんだな。


「それで、蘭丸さんとはどのようなお話しを?」


「そうそう!何で避けられてるか、理由聞いてきたよ!」


「本当ですか!?直せる事なら良いのですが」


 不安そうな顔をしているが、さっきの長可さんとの掛け合いを見る限り、一つは余裕でクリアだな。

 あとはこっちか。


「一つ目は何もしないで問題無い。何故なら、馴れ馴れしい態度が嫌だという理由だからだ」


「それはどう言った意味でしょう?」


「簡単に言おう!アイツ、ギャルが嫌いなんだよ。色黒で馴れ馴れしい感じが嫌なんだと」


「あら!そうでしたか」


 その言葉に安堵したのか、ちょっとした笑顔が見られる。

 クソッ!

 可愛いじゃないか!

 蘭丸爆ぜろ!


「というかさ、何故ギャルになんかなったの?」


「別にギャルになりたかったわけではないのですが。ただ、小さい頃からずっと茶道に携わって生きてきました。高校時代ですかね。同級生の方々にこのような方達がいらっしゃって、自由で良いなと思いまして」


「今まで堅苦しく感じてたって事?」


「そうじゃないと言ったら、嘘になると思います。だから夢の中でくらいはこんな格好して、素敵な方と一緒になってみたいじゃないですか」


 夢の中?

 この世界、夢だと思ってるって事?


【無理に教えなくていいんじゃない?夢だと思ってるなら、そのままの方が幸せって事もあるだろ】


 うーん、どうなんだろ。

 こんな世界だし、死に直面した時に夢だからと諦めたりしないかな?


【だからこその蘭丸だろ。好きな人が出来たのに、そんな簡単に死にたくないのが普通じゃないか?】


 なるほど。

 一理ある。


「じゃあ、それは分かった。それじゃ、ギャルになってたのは」


「なんとなく、今までの自分じゃない自分になりたかった。というだけです」


「じゃあその格好というか、ギャルに拘りがあるわけじゃないと?」


「そうですね。蘭丸さんが元の姿の方がお好きというのなら」


「むしろそっちの方が好みだと思うよ?」


 頭の良い大和撫子タイプの人なんか、めっちゃ好きそうだからな。

 僕だってそんな人が居たら、めっちゃ好きやねん!


【何故急に関西弁!?俺もそんな人が居たら、好きやけんね!】


 そっちだって急に博多弁じゃないか!

 どっちにしろ、羨ましい・・・。

 あと、もう一つの方は直せないしなぁ。


【肌を白くする方法なんて、俺達知らないからな。時間が経てば白くなるのかな?】


 どうだろう。

 そこは諦めてもらうしかない気がするよ。


「ギャルメイクに、その馴れ馴れしい話し方とかは直せるのは分かった。でも色黒だけはね・・・。そこは頑張って好きになってもらうしかないかな」


「この肌ですか?先程は肌焼いてると言ったのですが、実は違いまして」


 腕の一部分を擦ると、少し色が薄くなった。

 更に擦ると、なんと地肌が見えるじゃないか!


「え?何これ?」


「流石に日焼けまでしたくなかったので、隠密用の染色を身体に塗っているだけなのです」


 なんじゃそりゃあぁぁあ!!!

 じゃあ完璧じゃん!

 ただの蘭丸の好みのタイプの女の子の完成じゃん!

 ハァー!

 苦労せずに好みの女性に好かれるとか。

 ホント蘭丸爆散しろ。


「長可さんに言って、風呂入らせてもらいなさい。上がったら、僕のところに来るように」


 なんか、長浜に居ても良かったんじゃないかと思えてきた・・・。





「蘭丸!」


「またお前か。今度はどうした?」


 少し呆れたような顔をした蘭丸だった。

 今度は弓から槍へと持ち替えて鍛錬をしていた。

 邪魔をしているので、ここは素直に謝っておいた。、


「それで、今度は何の用?」


「鍛錬終わったら、俺んとこ飯食いに来ない?」


「でも、母上に何も言ってない」


「長可さんには俺が言ってある」


「それなら良いよ」


 作戦は上手くいったようだ。

 ちなみに長可さんも、俺の家に来ている。

 俺の家って言っても、基本的に誰も居ない、空き家みたいな家だけど。



「何で急に飯誘ってきたんだ?」


「しばらく会ってなかったからな。たまには良いだろ?」


「それもそうだけど。何か怪しいな」


 勘が鋭い男だな。

 だがもう遅い!


「もう支度は出来てるはずだから」


「はず?誰か別の人が準備してるのか?もしかしてハクト?」


 ハクトも来ているが、基本的には彼は作っていない。

 あくまでも監督として、味見とかだけしてもらっている。


「着いたぞ」


 扉を開けて中に入ると、見慣れた顔の人達が来ていた。

 だが一人だけ、どうしても見た事の無い人物が居る。





「どちら様ですか?」

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