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初代魔王の天下取り

 織田信長。

 この名前を知らない日本人は殆ど居ないであろう。

 それくらい有名な偉人だ。

 何故そんな有名人の名前が、こんな所で出てくるのだろうか。


【信長って言ったら、俺でも知ってるもんな。たしか本能寺で明智光秀にやられただよな】


 正確には、光秀に直接は殺されてなかったと思うけど。

 扱い的には、燃える本能寺の中で自害じゃなかったかな?


「魔王様?どうかされましたか?」


「い、いやちょっと知ってる名前だったもので。名前以外は詳しく知らないんですけどね」


 流石にこの名前を出された時は、動揺が隠せなかった。

 どんな人だったか聞いても怪しまれないかな?

 信長がこんな所で何をしていたか、凄い気になる!


「流石に名前を知らない魔族は居ないでしょう。当時の事を知っている者もおります。話を聞かれますか?」


 おぉ!

 詳しい話が聞けるとは、ありがたい!

 どんな話を聞かせてもらえるのだろう?

 前田さんは猫田に指示を出し、誰かを呼びに行かせた。

 数分後、猫田さんは戻ってくると、後ろに亀の獣人を連れてきていた。

 亀というより陸亀かな。



「ただいま亀山を連れて戻りました」


 陸亀の獣人は亀山さんらしい。

 もう信長の名前が出た時点で、これくらいでは驚かない。


「まお・・・」

「阿久野です」


「あ、阿久野様」

「阿久野です」


「阿久野さん」

「あ・く・の!です」


「あくの・・・くん」

「・・・」


 まあこれなら変に怪しまれないかな。


「亀山、こちらに居る阿久野くんに、初代様のお話をしてやってほしい」


「はぁ、こちらのお子さんにでございますか?」


「故あって詳しく知りたいのだ」


「畏まりました。では私が信長様とお会いした時の頃のお話から」


「信長と会った!?いつの話ですか!?」


「え~400年以上前ですかね。450年は経ってなかったと思います」


 獣人スゲー!400年経っても生きてる獣人なんか居るのか!

 亀山さん、それでもまだ初老って感じで、入ってきた時も足腰弱ってる雰囲気無いもんなぁ。

 余計に驚きだわ!


「では続きを・・・」



「私がまだ幼かった時、信長様はこちらの土地にやって来られました。あの時はまだヒト族の魔族に対する偏見が今よりも酷く、ヒト族の大半は魔族の事を蔑んでおりました。そんな頃に信長様は、鹿の毛皮を羽織り角を頭に付けて、『我は第六天魔王!』と言って押しかけてきたそうです」


 信長、随分と傾いているな。

 まあ若い頃はおおうつけと言われてた人だし、なんとなく分からんでもないか。


「信長様はこちらの世界に来た時、とある王国に身を寄せていたと聞きました。しかしその王国の悪政を間近で見て、ヒト族に見切りをつけたそうです。そこで王国時代に耳にした魔族の事を思い出し、一人で王国を出て旅をされたとか」


「信長様はその時いくつくらいだったんですか?」


「信長様は既に50近いとおっしゃってましたよ。しかしこちらの世界に来て、随分と若々しくなったみたいです」


 当時で50歳か。

 年齢からすると、本物なら本能寺の変の後から来たって事かな。


「鹿の皮を被った変人ヒト族が来たという事で騒ぎになりましたが、槍や弓に優れていた為にすぐに認められました。そしてヒト族の国では見なかった魔法の存在を知って、天下布武という言葉を使うようになったのです。それから1年後、彼は自分の考えに賛同した魔族を従えて、全ての国をまとめ上げると言い残して旅立ちました。私も初代利家様の供として、ついて行きました」


 なんか50歳の割に活発だな。

 この世界に来て、戦士に適応してたのか?


「彼は従ってくれた魔族の重臣に、新しい名前を与えました。そのうちの一人が犬の獣人である前田家でございます。ちなみに前田という名前の由来は、『お前、犬だから前田な!』というよく分からない理由でした」


【なんで犬で前田家なんだ?】


 前田利家の小さい頃の名前が、犬千代なんだよ。


【安易なネーミングセンスだな・・・】


「前田家の他にはどのような方達が居たんですか?」


「前田家の他ですと、佐々や柴田、丹羽に池田と佐久間、木下が有名でしょうか」


【あれ?豊臣秀吉は居ないのか?】


 秀吉は最初は木下だったんだよ。

 後に羽柴を名乗ったけど、信長的には木下だったんだろうね。


 しかし明智とかは流石につけなかったか・・・。

 というより、大半が織田家の古参家臣の名前っぽいな。

 荒木とか松永とか、絶対つけなさそう。


「信長様は少人数で、小国とはいえいきなり国を奇襲し落城。その後もヒト族の国だけでなく、魔族の国も侵略や調略を繰り返しながら、最後は自分が世話になった王国を落としました。そして世界で初めて国を一つにまとめ上げたのです」


 魔族の国も落としてるのかよ!

 やっぱり武将は凄いな。


「統一した後の信長様の言葉を今でも覚えています。『フロイスに戯言で第六天魔王と言ったが、本当に魔王になるとはな。人間50年とは詠ったものの、儚いだけで終わらぬのがこの信長よ!』」


 結局二つの世界で天下取っちゃった感じか。

 信長マジ化け物だな。


「この時に言った第六天魔王が世界に浸透し、信長様は魔王となられたのです。しかし、やはり信長様もヒト族。統一を成されて僅か3年で崩御されました」


 天下取って数年か。

 やり残したことも無く、往生したのだろう。

 やる事やって逝くとか、正直カッコいい生き様だ。


「その後、信長様の御子である信忠様が二代目魔王となり・・・」


「信長の子!?信長様に子が居たんですか!?」


「え、えぇ。エルフの正妻との間に一人だけ・・・」


 50過ぎて子供ちょっと驚きだが、それよりも・・・


【エルフとの子だとおぉぉ!!!なんて裏山けしからん!!】


 信長めぇ!

 やる事もやってたのかよ!

 エルフっていったら、そりゃもう美人しかいないでしょうよ!

 くっそー!やっぱ王様はモテるのか。


【おい、俺達も魔王になろう。そして美人エルフとイチャイチャしよう】


 ・・・ハッ!

 危ない危ない。ちょっと想像したら、それもまた良いなと思ってしまった。

 僕達の目的はエルフじゃなくて魂の欠片集めだ。

 エルフはその過程で仲良くなれればいい。


「なるほど。亀山さん、詳しい話ありがとうございました。色々と知らない話が聞けて良かったです」


「お役に立てて良かったです。では利家様、私はこの辺でお暇させていただきます」


 亀山さんは前田さんに頭を下げて、部屋から出て行った。



「まお・・・阿久野くん、ところでこれから先はどうされるのですか?」


「今のところは魔法の練習を主にして、ある程度の生活が出来るように頑張るつもりです」


「では、こちらの村で共に暮らしませんか?創造魔法以外の魔法も覚えられるとよろしいかと?」


 この村で生活出来るのはとてもありがたい。

 でも魔王ってバレる事を考えると、迷うところではあるな。


【別に気にしなくていいんじゃないか?そこまで深く考えて誘ってくれた感じじゃないと思うんだけど】


 そうかなぁ?

 あまり気が進まないけど、危険を感じたら離れればいいか。


「ではお言葉に甘えさせてもらいます。しかし、僕の事を何と言ってこの村に入れるのですか?」


「そうですね。隣のエルフの町からやって来た事にしましょう。阿久野くんはダークエルフの血が流れていると思われるので、おそらくそれで通用しますよ」


 魔王ってダークエルフなの?

 ムキムキマッチョだったけど、全然エルフっぽくないな。

 エルフって言ったら、長身痩躯のイケメンってイメージなんだが。

 まあその辺は別にいいか。


「では、今後ともよろしくお願いします」

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