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世界最強だったボッチの俺が、幼女に敷かれる武器屋の看板娘に!  作者: うずはし
第一章 勇者の俺は武器屋の看板娘になる
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06 完売の宴


 店の扉がカランコロンと音を立てて開いた。


「いらっしゃいませ」


 店長のおっさんは、笑顔で来客に挨拶をする。しかし、


『よう! ただいま店長』


 そこには新入りの俺、もとい看板娘と貧相な幼女の姿。

 広場に見切り品の剣を売るため、わずか十分ほど前に出発したばかり。


 その二人が戻ってきて、明るい笑顔で突っ立ていた。まあ、実際笑顔なのは俺だけだが。


「なんだあケンさ……チャコちゃん、もう帰ってきちまったのか。本当に今の若いもんはしゃあないなあ」


 おっと、名前を言い間違える辺り、娘姿のイメージにその名前がしっくりきていないのでは? 変更するなら今のうちですぜ店長さん。


 俺達が広場に行くも誰にも相手にされず、嫌になって諦め帰ってきたと思ったのだろう。店長は呆れ顔でこっちを睨む。


「まあ、商売ってもんはそんなに簡単ではないからな。それが勉強出来ただけでも良しとするか」

『おい、店長! 約束通り全部売ってきたぞ。あっという間に完売だ!』

「まさか……そんな馬鹿なことありえない。どうせそこらに売り物を置いてきたのだろ? そうだ、お金。売上金を見せてみなさい」


 俺は布袋を取り出して、中に入っている硬貨をジャラジャラとテーブルに出した。どうよ?


「……本当だ。全額ある」

『だろう! 正直、俺もビックリしたわ。陳列した途端に行列が出来て、ものの数分で即終了。もっと持っていけばよかったぜ』


 きっと、ネット販売だったら秒だったぞ秒。これは販売員スキルってヤツなのだろうか。

 とにかくこれで、今日の特別報酬はゲットだぜ。


 などとドヤ顔で喜んでいると、何だか外が騒がしくなってきた。


「お、おい、チャコちゃん」


 引きつった顔に言葉をどもらせる店長。どうやら様子がおかしい、まさかとは思うが。


『ん? どうした店長。今更報酬無しとか言わないよな、約束だったぞ』

「安心しろ、今日は思う存分飲み食いさせてやる。そんな事より大変だ、どえらい客の波が押し寄せて来るぞ。チャコちゃん、接客を頼む! 急げ」


 そう店長が言い終えた瞬間に、店の入り口から大勢の客がドドドっと店内へ流れ込んできた。


 まさか販売員スキルが継続中だったとは。あるいはそれとは別のスキルなのか。

 とにかく店内はお客でひしめき合い、俺は店長の言いつけ通り何とか接客をこなしていた。


 店長はかつてないほどの客でレジが大混雑。金勘定にあたふたしている。

 ミミは何も出来ないので、マスコット代わりとして椅子に鎮座していた。


 

 こうして、店に訪れる客足は途絶えることなく、大盛況のうちに店内の全商品が完売した。

 

 そして気が付けば日も落ち、辺りは夜の町になっていたのだ。





「「カンパーイ!」」


 俺と店長そしてミミの三人は、近くの酒場で盛り上がっている。

 テーブルには沢山の料理が所狭しと並べられ、ジョッキ片手の店長は既に出来上がっていた。


「よおーし、ケンさん。今日はジャンジャン飲んで食べてくれ。ガハハハッ!」

「おう! 遠慮なく頂くぜ店長。酒は飲めねえがよ」

「なあんだ、酒は駄目かあ、しゃあねえなあ。よし! おーいマスター。旨いジュースを樽ごと持ってきてくれ、樽ごとだあー。ガハハハッ!」


 っつたく、酔っぱらいはこれだから困る。

 俺の世界ではまだ飲酒出来ない年齢なのでね、そこはきちんと守らないと。えらいな俺。


 そして俺は今、元の姿に戻っている。


 売るものが無くなってしまい、今日のお仕事は終了となったので、出退勤プレートを『退勤』に裏返した。

 すると、今まで読めていた活字が全く訳の分からない落書きにしか見えなくなり、元のポンコツ君に戻ったことを実感したのだ。

 店員のための数々の特殊スキルは、娘姿の時にしか効力を発揮しない、そういった仕様らしい。まあ、当然か。


 相変わらず無口な幼女ミミは、俺の隣で大きな肉の塊と格闘中だ。よく食べるなあ、こいつ。

 さっそく俺も食べよっと。うん、久しぶりの御馳走だ。

 んー、旨いぞ。


「そういえばケンさんや。ヒック」


 うわ、だいぶ酔いが回ってんじゃないの。目が座ってるし。

 

「なんすか店長」

「今晩の宿は決めてあるのか?」

「あー、そういえば未だ何も。昨日まで野宿だったしなあ、気にしていなかったわ」

「幼い子も一緒なんだし、そこは気を使った方が良いぞ」

「ああ、ありがとな店長。しかし、この時間で見つかるかなあ、空き部屋」

「……それなら我が家の空き部屋を使いなさい。なんなら、これかかも宿代わりにしてもかまわんぞ。ヒック」

「ありがとう店長。世話になるぜ」


 酔っぱらいの言うことは当てにならないのが殆どだが、まあここは素直に甘えるとしよう。

 店長、恩に着るぜ。そしてこれからもお世話になります。


「妻と子供が帰って来るまでだがな、ガハハハッ! ヒック」

 

 おう! 店長みたいな親父なら大丈夫だ、絶対に帰って来ないぜ。俺が保証する、イッヒッヒ!


「そうと決まれば、先ずはその汚い身なりをどうにかせんとなあ。家へ上げられんぞ」

「うん、確かに。特にミミは酷いからな」

「着替えは俺のと……娘のおさがりがあったはずだ。それを持って公衆浴場へ行くがいい。ヒック」


 ミミと公衆浴場かあ……相手は幼女だし何も問題ないはずだ、何も……


次回はミミと混浴の予定です。

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