05 看板娘のチャコちゃん誕生
俺は店内の鏡で、自分の姿を確認する。
『な、な、なんじゃこりゃあー!』
そう、あまりの変貌ぶりに腰を抜かすほど驚いた。
そこに映った俺の姿は、亜麻色の長い髪で二重瞼に大きな瞳の綺麗な少女だった。背丈は変わらず、見た目の年齢も多分同じ高校生位だ。
見れば見るほど、その美貌にうっとりとしてしまう。
うん、頭の『緊箍児』は長い髪が良い塩梅に隠しているし、なによりナイスバディな巨乳ちゃんであるのが嬉しい。
……せっかくなので、俺の胸に生えてしまった大きな饅頭二つを鷲掴みにしてみるぞ。
それって、別に良いよね? 俺の体なんだし、女体にしたのはおっさんなんだし、法律的にも間違っていないから。
全くこれっぽちも、全然疚しくはない……筈だぞ。
恐る恐る衣服の上から、自分のお山に触れてみる。
『おおおーーー! なんだこの柔らかさぁー。この世の物とは思えねー! しかも、重量感たっぷり』
感動のあまり、思わず涙がこぼれちまったぜ。
TSってこういう事だったんだなあ。モミモミ。
「おいおい、ケンゾウさんよ。変態行為なら、一人の時にやってくれ」
ジト目で俺を見下す、おっさんとミミ。
『…………あっ』
健康男子の性、甘い誘惑に負けてしまった俺に、そんなに凍り付いた視線を向けないでくれ。
羞恥で死んでしまうだろうが。
畜生! こんな仕打ち嬉しくないぞ、全然嬉しくないからなっ!
「ふむふむ……実を食された方は、武器屋の店員に特化した性能に仕上がるはずです……だとよ」
『俺は、ロボットか何かか!』
「まあ、見た目だけでも随分と改善されておるからな。野暮ったい三白眼の店員さんじゃあ、商品を買う気にもならんだろう」
おっさん。外見についての悪口を、あんたにだけは言われたくない。
『あのさ、実の効果があっても客が来なきゃ駄目じゃね?』
「それは大丈夫だろう。じゃあ試しに、そこの見切り品の剣を広場まで行って売ってきてくれんか」
明らかに初心者用の安物の剣で、二十本位束ねてある商品を指差した。
一本ずつ特価の値札まで張り付けてあって、これは小型ゴブリンに最適って……ん? あれ、字が読めるぞ。
まさかと思い、俺は慌てて壁に掛けた出退勤プレートに目をやると、そこにははっきりと『出勤』と表記してあるのが判った。
(すげえ、これは解読スキルなのか……)
どうやら本当に店員の為に特化した能力が身に付いているらしい。他にも未知の能力がありそうなので、内心ワクワクしてしまった。
『なあ、おっさん。マジでこの姿で行かなきゃか?』
「そうさ、そのお嬢さんの姿じゃなきゃ意味ないだろうが。愛想の無い野郎では誰も寄り付かんぞ」
まあ確かに、ボッチだった勇者より幾分マシなのだろう。外見は。
ただ、中身は変わりようが無いし、口調だってこの通り。女の子の声になっているだけなので、結果売れなくて駄目なんじゃね? と、思っていた。
『まあいっか。おっさん、この剣の束を持っていけばいいんだな』
「ああ、よろしく頼むよ。あー、あと……オレのことは店長と呼びなさいケンさん!」
む。いきなり店長って呼べとか、馴れ馴れしくケンさんとか、一瞬で偉くなっちまったなあ。
まあいいけどさ。
『……あのな店長。思うけど、この姿でケンさんって変じゃねえか?』
「ふむ、確かに。可愛らしくはないな」
そして、しばし考え込む店長。俺は剣の束を担いで出発の用意をしている。
おっと、ミミも連れていかないとだな。危ない危ない。
突然、ポンと手を叩いた店長。
「よし! たった今、天から名案が降ってきたぞ。うん決めた、今日からお前は『チャコ』と命名する。チャコちゃん……うん、いい名前だ」
な! ん! だ! と! よりにもよってその名前!
店長は腕組みをして頷いている。いやいや、何かの冗談だろ。チャコって普通ありえんから。
『おい店長! それマジで言ってんのか!』
「ん? 別に変じゃなかろう。この国の女の子なら、至って普通の名前だ。怪しまれることも無いはずだぞ」
『だからって、チャコは無いだろう。もっと他にもいい名前があるはずだ、例えばほら……シャーロットとか、ソフィアとか』
「なんじゃそのセンスの無い名前は。まあケンゾウって名も可笑しいけどな、ガハハッ」
うるさい! 俺の名前については触れないでほしかったわ。
まあ、店員の時だけなので、渋々店長の名付けたチャコで納得する事とした。
「じゃあ早速広場に行ってきてくれ。全部売れたら特別に報酬を出そう」
『言ったな店長! 見てろ、あっという間に完売してやるからな』
「おうおう、がんばってこい。期待しているぞチャコちゃん」
俺は意地でも全部売り切ると心に誓い、ミミを連れて町の広場目指して出発したのだ。
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