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世界最強だったボッチの俺が、幼女に敷かれる武器屋の看板娘に!  作者: うずはし
第一章 勇者の俺は武器屋の看板娘になる
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04 これ間違いなくメロンだろ

誤字報告お待ちしております。


「さあ、先ずはケンゾウさん。あなたから一口食べてくれ」


 皮が厚くそのままではかぶりつけそうになかったので、おっさんが奥のキッチンで『働き方改革の実』を切ってきた。

 切られた実は、豪快に大皿へ盛りつけられている。


 外見からは判らなかったが、刻まれたその姿や匂いはまるでメロンのようだった。

 いや、これ間違いなくメロンだろ絶対。


「とにかく、最初の一口はケンゾウさんが食べれば、あとは誰がどのように食べようが構わんらしい。ささ、召し上がれ」


 俺は勧められた『働き方改革の実』という名のメロンを一切れ手に取り、生唾を飲み込む。

 せめてどういった効果があるのか、説明くらいは欲しかったが。


 相変わらず食い意地の張っているミミは、執拗にメロンらしき果実を狙っている。

 そうはさせまいとするおっさんの意地もあり、今は毛むくじゃらな腕によって羽交い絞めにされている幼女。もがくようにジタバタと暴れている。


「痛っ! このチビ噛みつきやがった。ケンゾウさん、いいから早く食べてくれ!」


 暴れるミミは、おっさんの腕に噛みついた。

 メロンのいい匂いがしてるしね、無理もないよ……イテテ! 俺もやばい、締め付けが激しくなってきたぞ。

 

「クッ、考える暇は無しかよ……仕方ない、いただきます」


 選択の余地すら無い俺は、メロンらしき果実に噛り付く。


 ん、旨い! メロン独特の甘い香りが口いっぱいに広がってくる。これがキンキンに冷やしてあったらもっと格別だったんだろうと、少し残念に思えてしまう程だ。

 ていうか、もうこれメロンだぞ絶対。



「……どうだ、ケンゾウさん。何か変化はあったか?」

「いや、別に。……っていうか、普通に旨いだけのメロンだけどな」

「めろん? まあ、何言っているかわからんが、早速オレらも食べよう。いい匂いで、もうおチビちゃんが限界なのでな」


 拘束していた毛むくじゃらの腕を解くと、ミミは脇目を振らずメロンに飛びつく。

 おっさんもメロンを手に取り、一口食べてみる。すると、


「……げっ、不味いぞ」


 そう言い放つおっさんの隣で、ミミも苦虫を食べたような顔をしていた。

 

「嘘だろ。そんな筈は……」


 俺はもう一口噛り付いた。

 ん? 味がしない。

 いや、なんとなく胡瓜みたいな匂いが鼻に抜けていって、遅れて口の中は苦みと渋みが襲ってきた。


「うわ、何だこれ不味い!」

「な、そうだろ」


 俺が食べた一口目だけ旨かったということは、もうこの果実はお役目を果たしてしまったと考えるべきなのか。不味くなったのはそういうことだろう。

 窓越しに見えていた警備隊の人たちが、一斉に引き上げていくところを見ると、やはりそういう事だった。


 もう一度取説を確認する店主は、頷きながら箱の中から小さな板切れを取り出した。

 赤色と青色、裏表色が違っていて、中心に何か文字らしき模様がある。端には小さな穴まで空いていた。


「おっさん、なんだそれは?」

「おお、これか。これはだな『出退勤プレート』と説明書に書いてある。何でも、この穴を使って壁に掛けて使うらしいのだが……よし、これでいいだろう」


 釘を壁に打ち付けたおっさんは、プレートの赤色が見えるように壁に掛けた。


「これが退勤らしいぞ。まあ、そこに書いてあるから判るだろ」


 いや、文字が読めない俺には全く判りませんが。


「そしてだな、こいつをクルリとひっくり返せばあら不思議……っと」


 店主がプレートの向きを青色に変えて壁に掛けた瞬間、俺の体に異変が起こった。


 ボンと白い煙が出現すると、たちまち俺の体を飲み込んだ。

 一瞬目の前が真っ白に。

 包んだ煙はすぐに消えて、俺の視界が開けると、目の前のおっさんとミミがあんぐりの表情。


『え? なに、なに、どうした? ん、あれ? なんか俺の声高くない?』

「おおーー! ケンゾウさんが、看板娘のかわいこちゃんに大変身したぞ。ありがとう、これでこの店も安泰だあ」

『え゛え゛っ! どういう事?』


 俺の姿をまじまじと観察した後、あまりの嬉しさに、男泣きする店主のおっさんだった。

 


 



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