02 この店を畳むつもりだったからな
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俺たちを店内に入れると、店主のおっさんがテーブルに食べ物を並べてくれた。
並べられたパンやら果物なんかを、ミミは何も言わず一心不乱に食べまくっていた。
「ああ……あれは、オレの昼飯だったんだがなあ……」
「すまんなおっさん。恩に着る」
「まあ、腹を空かした子供を見捨てる訳にもいかんだろう」
ついでに言うと、俺もかなり腹ペコなんだが。
「それより、何で最強勇者様がこんな辺鄙な町に居る? しかも腹空かしてるって、ちょちょいと狩りでもすりゃあ問題ないだろ?」
「……それがさあ。頭のこいつが……」
俺は人差し指で、自分の頭にはめられた金色のリングをコンコンと突く。
そう、頭にはまっている『緊箍児』の働きで、俺のチート掛かった能力や魔力がほぼ全て封印されてしまっているのだ。
悪魔の代物『緊箍児』の発動は、俺が知る限りでは三つの条件があるらしい。
一つ目は、貧相な幼女ミミに関する事柄。これは前回解説したから以下同文。
二つ目は、魔力の行使又は発動の禁止。俺の異世界の活躍において、全般的にチート掛かった魔力のお陰で、最強の地位を得たと言っても過言ではない。なので、ここを封じられたのはかなりの痛手だった。
そして三つ目は、むやみな殺生の禁止である。なぜかここにお釈迦様の教えが入っていることに、納得いかないのだが。
まあ、これのお陰で気軽に狩りが出来ない訳で、早々と食料難に陥るって寸法。
肉類なんかに頼らなければどうにかなるのだが、見知らぬ草木に手を出すほど俺の肝は据わっていない。元々頼る仲間も居ないし、くっついてくる幼女はなんも出来ないし。八方塞がりってのは正にこの事だと思う。
以上の条件を破れば、単純に頭が締め付けられるだけ。しかし、その痛みは半端ではないので、あの有名なお猿さんが大人しくなったのも頷けるのだ。
「そりゃまあ、気の毒なこって」
「同情してくれてありがとう、おっさん」
「いやなに……八方塞がりって言やあ、ウチの店も一緒だがな」
「え?」
「初心者用の武器ってのは、安価で扱いやすのが売りだろ。でも最近の冒険者ときたら、自身のレベルが低いのにも関わらず、初っ端からレア装備を選びたがる」
その点については、俺も同じようなもんだったぜ。レベルは最初からマックスだったけどな。
「だから、ここ最近は売り上げが芳しくなくてな、借金は膨らむ一方さ。まあ遅かれ早かれ、この店を畳むつもりだったからな」
でも、町を行き交う人々は沢山いた。ならばこの店構えに何か問題があると見るのだが。
「女房と子供も、この家を出ていっちまってよ……借金まみれのオレは、首つるしか道はねえのかと……」
おっさんのその辛気臭いツラが、売り上げ低迷の主な要因だと思うぞ。
「なに言ってんだおっさん! まだこっから頑張ろうぜ!」
「どうやって? 仮にケンゾウさんが店員やるとしてもだ、その愛想の無い、人望も無い人柄じゃあ客も近寄らないぞ」
ごつい顔したおっさんに言われるとムカツクのだが、言っていることは正しい。
なんせ俺は、パーティーさえろくに組めないボッチの勇者だったからな。コミュ障には自信があるぜ。
そういえば、頭の輪っかは、いつの間にか大人しくなっていた。
多分、ミミのお腹が満たされた証拠である。ちくしょう、全部食いやがって!
「とりあえず、ミミの餓死は回避できたから……俺達は、次の働き口探しに行こうかな」
「おう頑張れよ。オレは八百屋なんかが、いいと思うぞ」
「あんがと。おっさんも頑張れよ」
と、ミミだけ飯を頂いて何とかなった俺達。短い間だったが世話になった武器屋を、後にしようとしたその時だった。
カランコロンと店の出入り口が開き、一人の若い兄ちゃんが木箱を抱えてやってきた。
「ちわーっす。ハジマリーノ急便でーす。お届け物でーす。ここにハンコかサインお願いしまーす」
不思議そうな顔でその荷物を受け取ると、直後におっさんは「こ、これは!」と、歓喜の声を上げていた。
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