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世界最強だったボッチの俺が、幼女に敷かれる武器屋の看板娘に!  作者: うずはし
第二章 初心者クエストをクリアしよう
13/18

11 私に付き合ってもらえませんか


 看板娘のチャコちゃんの効果は絶大で、今日陳列した品物は全て完売となってしまった。


『いやー、お昼を待たずして今日の営業が終わってしまうとは。ミミ、表の看板を裏返してきてくれ』


 ミミは「ん!」と頷き、トタトタと店の入口まで行く。

 カランコロンと音の鳴る扉の表側に回り込み、少し高めの位置に掛けてある看板を、つま先立ちをしながらパタンと裏返した。

 営業中から閉店に変えたのである。これでお客さんが間違って入ることは無い。


 店内のお客さんも殆ど居なくなり、残るは会計中の中年男性客と、レジに並ぶ若い女性客だけだ。

 パチパチとそろばんのような計算機をはじく店長。その指先は昨日よりはだいぶマシになっていて、買い物客を待たせる時間も短縮したぞ。


「まいどあり。次のお客さんどうぞ」

 

 店長が最後の客を呼ぶも、商品の剣を持ったままジッと動かない。

 どうしたんだろう?

 

 俺は気になりその客を見ると、意外にもほっそりとした女性客で、胸は俺よりも控えめといった感じか。言っておくが、俺の自慢じゃないぞ。

 見た目、とても冒険向きじゃない感じの人物だった。


『どうしましたお客さん。会計済まして下さい』

「……あ……あの、私」


 胸の前で商品の剣を握りしめて、ためらう雰囲気の女性客。その手は若干震えていて、よっぽど剣が気に入らなかったのかな。


『あー、もう商品それでラスイチなんすよー。若干古い物だから特価品ですけどぉ、お姉さんにはちょっち使いづらいかな? どうします、次の入荷待ちます? 店長、次の入荷いつだっけ』

「んー、六日後かなあ。特別に予約、受け付けるよ」

『……って、言ってますけど。どうします? 次回の予約しちゃう?』

「あ、いいえ、買います。今すぐ買っていきますけど……」

『けど?』


 女性客は何かを言いたいらしいのだが、しばらくモジモジしていた。


「じゃあお客さん、買うなら先に支払い済ましちゃいましょう」


 店長がそう告げると、女性客は意を決した表情で俺の手を握ってきた。……なんで?


「店員さん、お願いがあります! 私と付き合って下さいっ!」

『……へ?』


 こりゃあ、参ったな。


 そんないきなり告白されても、唐突過ぎだし、それにお互いの事全然知らないでしょ。


 もしかして一目惚れってやつですが? 二枚目は辛いなあ。


 お姉さんだって、すらっとしていて体型も良いし、割と美人だし。どっちかと言えば俺の好みですよ。

 それに比べてると俺なんて、世界最強とか言いながら弱くなっちまってるし、人付き合いだって悪いしさ。今なんてほら、女の子の姿になっているし…………って、


『え゛え゛えぇぇええぇーーっっ!!』


 今の俺、女の子の姿だよ?

 百合? ねえ、いきなり百合のお誘いなの?


「すみません言い間違えました。私のクエストに付き合って頂きたいのです。初心者のクエストです」


 なあんだ、クエストに付き合うって事か。びっくりし過ぎてミミが一瞬『緊箍児』を締めたじゃないですか。


 でも俺、今は戦える体じゃないしなあ。

 間違ってモンスター倒しちゃったら、俺の命の危機だかんな。


 などと俺が渋い顔をしていれば、店長がカウンターから出てきて低めの声で女性客に話掛けた。ダンディっぽく。


「お嬢さん、何か事情がお有りの様で。ささ、こちらに腰掛けて、お茶でも飲みながら詳しい話を聞かせてもらえませんか」

「すみません、ありがとうございます」

「この武器屋は、悩み相談も引き受けていますから。遠慮なく仰ってください」


 いつからそんな商売始めたんだよ。


 品物を売り切ってしまったので、すっかりリラックスモードに。

 全員でテーブルを囲み、お茶をすすっていた。


「私はこの店の店長です。そしてこちらが店員のチャコ。チャコの妹ミミです」


 あ、今から妹設定になったよミミ。


「で、貴女のお名前は?」

「あ、失礼しました。私の名前は藤島佳代子(ふじしまかよこ)です」

『ブーーーーッ!!』


 まんま日本人の名前に、思わず含んだお茶を噴き出してしまったぜ。

 心配無い、全部店長の顔にかかったから。


「汚いなあチャコちゃん。勘弁してくれよ」

『ごめん、ごめん』


 そしたらミミが真似して「ぶぅ~~っ」って、店長に向けて。

 さすが無邪気な子供だ、真似っこしたくなるんだな。


「こらこらミミちゃん。悪いお姉ちゃんの真似しちゃ駄目だよ」

「ぶぅ~~っ」


 あーあ、店長びしょ濡れ。



 それはそうと、俺は初めて異世界転移された人物と遭遇したのだ。

 しかも女性に。




ここまでお読みくださりありがとうございます。

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