10 今日も一日がんばるぞ
誤字報告ありがとうございます。
次の日の朝。
今日は、店舗に商品を陳列するため、朝早くから倉庫の中の在庫を引っ張り出している。
「ケンさん! ここに置いてあるやつは、全部お店に持っていてくれ」
「オッケー、店長。……うわ、こりゃまたすげえ量だな。おいミミ、この剣だけ持ってくれ」
「ン!」
この中で一番軽そうな剣をミミに手渡した。
ちっちゃな手と腕でその剣を抱えて、てくてくと俺の後ろを付いてくる。かわいいいなあ。
今日の開店時間に合わせて、急いでお店の商品を並べなければならない。
空っぽになってしまった陳列棚に並べるのは一苦労。ミミもお手伝いに加わっている。
それというのも昨日、ありえないほどのお客が押し寄せ、あっという間に店舗の全ての商品を売り切ってしまったせいなのだ。
それは全て『働き方改革の実』を食べた俺の能力、もとい、俺が美人店員に変身した時の特殊能力によるものである。
「よいしょっと。ふうー、とりあえずこの辺に置いておけばいいだろう」
俺は剣の束を陳列棚の脇に置いた。詳しい位置は店長じゃないと判らないからな。
俺の後ろに居るミミからも、一本の剣を受け取る。
「ほい、ミミありがとう」
「ン」
昨日までの薄汚かった幼女から一変、綺麗な姿になったミミは、少しだけ人間の子供っぽくなっていた。
それは昨夜、お風呂で汚れた体を洗い流してあげたら全身が光って、その瞬間にちょっとだけミミが変化したんだ。
俺の言う事が分かるようだし、簡単な言葉も喋れるようになった。ちょっとしたお手伝いだって出来るぞ。
店長は、魔王の呪いが解けたって言うけど、実際は本当かどうか判っていない。あの魔王だよ、そんなに簡単に解ける呪いなんて掛けるだろうか。
まあ、それ以前はただ生きているだけの置物のようだったから、これってすごい事だけどな。
だから俺は、今まで以上にミミへ優しく接しようと思っているのさ。そしたらもっと成長しそうだよね。
「ようし、運び出しは全部終わったから、今度は商品を端から並べていくぞ」
「了解。それにしても在庫だけでこの量とは、どんだけ流行っていなかったんだよこの店」
「はっ! とりあえず初心者用の最新モデルには手え出してたからなあ。売れ残りが増えれば借金が増えて、儲けるためには新作を入れる、その繰り返し。まさに自転車操業とはこの事でえ」
ドヤ顔で言ってるが、要は借金で首が回らなかったって事だろ。それよりも、自転車操業なる言葉がこの世界にある事のほうが驚いたわ。
何とか陳列を終えて、開店時間に間に合わせることが出来た。
「あのな店長。こっれって時間外手当付くのか?」
「おう? まあ、その、出さない訳じゃないけどな」
なにその歯切れの悪さ。元々手当の事、考えてなかったろう。
「まあ、今日の売り上げ次第かな。昨日みたいな売れ方するとも限らないし」
俺もそれは同意見だ。昨日はあの実を食べた直後だったし、その効力が強すぎて商品が売れたようなもの。一日経った今日も、同じにいくとは限らない。
そのうえ今日の品揃えは、少々古いのもばかり。その分割引してあるのだが、とても売れるとは思えないのだ。
「じゃあ、まあ試しに、売ってみるとしますかな」
店長は、そう言うと『出退勤』プレートを青色に変えた。俺の変身タイムです。
凛々しい男子が、ポンっと可愛らしい美女に早変わり。衣服も何となく女性物になっているから不思議だよな。
そしたら早速お客様ご来店。
『いらっしゃいませ』
こうして今日も一日、忙しい日が始まったのである。
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