08 きれいに洗おう
誤字報告ありがとうございます。
異世界の湯けむり。そして、満天の星空を眺めながらの露天風呂。
そこそこ空いているし。いいねー、最高だよここ。
「よし、ミミ。そこの椅子に座りなさい」
俺は、湯船の脇にミミを座らせる。ちょこんと座ったミミの姿は、まあまあ可愛いかな。
いきなり湯船に飛び込むのはマナー違反、それ位俺も知っているさ。
入る前に体の汚れを落とさないとね、これ常識。最低限のエチケットですよ。
特にミミは色んなものが体にくっ付いているから、そのままお湯に浸かると大変な事態になりかねない。
受付の美人お姉さんにも迷惑かけたくないしな。
先ずは湯船の温度を確認。うん、熱過ぎず丁度良い。
そして、桶に目一杯お湯を汲み取り、ミミの頭からザバーっとぶっかけた。
どうよ? おチビちゃん。
微動だにせず相変わらずのノーリアクション。まあ期待はしていなかったけどね。
石鹸をしっかり泡立てて、頭から洗っていく。ゴシゴシ。
「んー、汚れが酷すぎて泡立ちが良くないなあ」
シャンプーという画期的なアイテムは無いから、石鹸で頑張って髪を洗わなければいけないけど、これは結構大変だ。洗い流してもう一回、ゴシゴシ。
目に泡が入っちゃいけないから、ミミは自然と目を瞑っている。よし、このまま顔も洗っちゃおう。
お顔は掌で丁寧に。むにゅむにゅ。
うん、だいたい綺麗になったかな。もう一度頭にお湯を掛けて洗い流す。
「おおっ、お前結構可愛い顔してるな」
今まで汚れが酷く判らなかったが、ミミの髪は明るい赤色。だが、傷みが激しく艶は無い状態だ。
ちゃんと手入れすれば、鮮やかな赤色になるかもしれない。
そして、顔も意外と可愛いぞ。
整った顔立ちにくりくりと大きな瞳。仏頂面で瞳が淀んでいるところが非常に残念だが、これは今から将来が楽しみですぞ、ってな感じ。
幼女だと思って期待はしていなかったが、これはなかなかの逸材である。
「……さてと、次は体なんだけど……」
俺は周りをキョロキョロと見回す。おじさんが三人程湯船に浸かっていて、こっちを怪しんでいる様子はない。
「俺の考えすぎか……だよな、四歳児相手に変に意識するってのも可笑しな話だし。それに、他人には仲の良い兄妹に見えているのかな?」
十歳以上離れている兄妹か。まあ、アリっちゃあアリなんだろうけど。
意を決して、今度はタオルのような布に石鹸を泡立てて、ミミの体を洗っていく。
そうは言っても女の子だから、肌が荒れにはきをつけないと。力任せにゴシゴシしないように気を付ける。
「せなかぁー、みぎうでぇー、ひだりうでぇー。はい立って」
ミミはスクっと立ち上がる。
「お、おしりー、みぎあしー、ひだりあしー。はいこっち向いて」
やべ! すげえ恥ずかしくなってきた。顔が火照っているのはきっと湯気が熱いせいさ。ふぃー。
ミミはクルリとこっちを向いた。
「お、お、おむねー、おなかー、お、お、お、お、お、ぉまたー。うし! 洗い流すぞー!」
じゃばー、じゃばー、と全身の泡を流せば、綺麗に生まれ変わったミミの出来上がり。
いやー、まだ湯に浸かっていないのに、のぼせている俺って一体……
洗い残しが無いか、まじまじと見てしまう俺。汚れが気になっちゃうからしょうがない。
決していやらしい考えは無いからな。決してロリコンじゃ無いからな。
そんな事を考えていると、目の前のミミが一瞬ピカっと光る。
「え? 何、ミミどうした? 今、全身光ったよな」
俺は心配してミミの顔を見ると、淀んでいた瞳が、綺麗な赤色の瞳に変わっていた。キラキラしている。
「おい、マジか。どうしちゃったんだよ」
他に変化は無いかとミミの体をあちこち確認するも、特に変わった所は無いようだった。
だが、
「…………ィ」
「え?」
ミミの口から、ぼそりと何か発したようだが。
「ミミお前、喋れるのか? 喋れるようになったのか?」
ミミは小さく頷く。
おおおおー、何か知らんがミミが成長したぞ。滅茶苦茶嬉しい。
「なあ、ミミ。何か喋ってくれ、俺にその声を聞かせてくれよ」
俺はミミの肩を掴み、必死に訴えた。
嬉しさのあまり、目からは涙が零れ落ちていたかもしれない。
そしてミミは口を開いた。
「ヘンタイ」
幼女の衝撃発言に、俺はその場に跪いてしまった。
何故だろう、俺のガラスのハートがひび割れた気がする。
とはいえ湯船に浸かれば、その気持ち良さに旅の疲れが一気に吹き飛ぶ。極楽極楽!
ミミも肩まで浸かって、目がとろりとなっていた。
おいおい、気持ちいいからって寝ちゃうなよ。
俺は夜空を見上げ、ひと時の休息を堪能していた。
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