あれは勝てる戦いだったのに
再び、ファンタジー物に挑戦です。
気軽に読んでいただければと思います。
俺は、負けてしまった。
この世界のラスボスである魔王を討伐するため果敢に挑んだのだが、不覚にも敗北を喫してしまったのだ。
現実世界から異世界転移されて早一カ月。
凶悪なまでのチートボーナスを授かった俺は、破竹の勢いでこの世界を攻略していった。
あっという間に勇者の称号を得た俺は、調子に乗って魔王と対決することになる。
「俺の名は勇者ケンゾウ。その首、いただきにきたぜ!」
魔王との壮絶な死闘を覚悟して挑んでのだが、対決してみて驚いた。
俺の方が遥かに強かったことに。
しかし、そこは百戦錬磨の魔王だけの事はある。簡単には勝たせてくれない。
幾つもの姑息な手段を講じて、負けじと粘りの意地を見せている。
俺も伝説の勝負になるよう、力加減も調整しながら頑張った。
はっきり言って全開の火力ではない。
全ての攻撃において少しだけ魔王より上回る魔力を見せつけて、徐々に心を折る作戦。
自分でもいやらしいとさえ思えたが。
死闘の末、魔王が息も絶え絶えになった時。
「もうこれは間違いないよ。俺、伝説になっちゃうんじゃね」などと勝利を確信していたのだ。
今思えば、それがいけなかった。
まさか、あんな罠があったとは……
実戦不足、経験不足の俺に仕組まれた巧妙な罠だった。
「……くッ! どうしてこんな事になっちまったんだ!」
悔やんでも、悔やみきれない。
魔王から命からがら逃げ出せた俺は、ただ運が良かっただけなのかもしれない。
そして、魔王に負けた俺への代償はあまりにも大きすぎた。
俺に備わった破格の魔力が、一切使えないように呪いが掛けられてしまう。
おまけに、付き纏う小汚い幼女が俺の命を奪おうとしている。
「畜生! こんな筈じゃなかったのに!」
やり切れない気持ちを抱えた俺は、ひたすら安息の地を求め町を転々としていく事に。
そして辿り着いた場所は、誰もが一度は訪れる町『ハジマリーノ町』。
その一角にある小さな武器屋だった。