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(閑話)梨音の2か月間

都代の話が長くなりそうなので、梨音の現状を少し挟むことにしました。少し説明が多い文章になってしまいますけど、よろしくお願いいたします。

 事故で入院した、ということになってから2ヶ月。

 

 EPGメンバーとして活動し始めてすぐに、梨音は魔力効率の良さで実験の中心となっていた。

 EPGは、異世界から転生、転移した人達の集まりのことだ。ドイツ語でErsatz Persönlichkeit Gemeinschaft、直訳すると「交換人格共同体」となる。

 しかし、組織か、というとそうではない。ただの集まり、共同体に過ぎない。

 それはつまり独自には何の権限もないし、予算も無いということだ。


 予算を持っている組織は「折湊監視制御システム室」という名で活動している。非常に曖昧な名前は、もちろん隠れ蓑としての組織だからだ。そのバックには財界、政界の重鎮の名があると言われていた。

 その目的は、任意の転生による不死の研究である。


 記憶を保持したままの転生というのは、いわば老化した肉体から新品の肉体への移動である。偶発的に起きる転生ではあるが、複数事例があるということは、そこには何らかのメカニズムがあるはずだ。


 初期の段階では、転生したと思われる人物の割り出し、確保、調査であった。

 この初期の頃に行われた調査は、非人道的で人権を無視したものも含まれた。それゆえ新たにEPGメンバーになった梨音には、あまり詳細を話してくれないようだ。

 昔と今は違うから、と。


 そういった非合法の調査から、魔力を探知する方法が見つかる。

 どういう実験が行われたのかは不明だ。

 おそらく魔法が使えるものに散々実験をさせたのだろうといういことは想像出来る。ほぼ拉致同然で連れ去られた転生人達の扱いは、ほとんど実験動物であった。

 その結果、魔法力行使の痕跡を物理センサーで拾えるようになり、異世界転生の発生はネットワークで監視されるようになる。


 そこでわかってきたのが、偶発的転生と、人為的転生の違いである。


 偶発的転生は、文字通り、なんらかの事故で日本で命が失われ、神と称するものの采配によって異世界で別の生を受けることである。これはコントロールすることも出来ないし、予測も不可能だ。メカニズムを解明しようにも、転生後に何処へ行ったのかさえわからない。

 文字通り、神のみぞ知る、だ。


 一方で人為的転生は、異世界で、もしくはこちらの世界で、大規模な魔法を行使して、物理的、もしくは精神的に世界を「繋ぐ」ことになる。

 結果として、異世界転移する、異世界からこちらへ転移する、異世界間で人格を入れ替える、という結果をもたらす。


 わかりやすく言うと「勇者召喚の儀式」だ。



---------------------



「じゃあ、とりあえず異世界への入り口を作ってしまいましょう」

 梨音は、勇者召喚の儀式、という話を聞いたところで、そう答えた。説明をしていたのはEPGメンバーの一人、カルステンだった。カルステンは異世界から転移でやってきた人物で、魔法行使も可能だけれど、元々は冒険者で剣士だった男だ。20歳を少し超えたところで、だがしかし白人系であるのに童顔だった。少年のような顔だち、金髪のサラサラの髪、そう、都代が異世界通路で見たのは、カルステンである。

「そうじゃない。お偉いさんたちの目標は転移じゃないんだよ。欲しいのは永遠の命、転生なんだ」

「そう?でも、だからこそ異世界への入り口は必要なのですわ」

「いや、意味わかんねえ」

「今まで、皆さんは一足飛びに転生することを目指して研究されてきたのですわね。でも、目標は転生することではないはずですから」

「いや、転生が目標だって言ってるだろ?わかんねえ嬢ちゃんだな」

 カルステンは、元々冒険者だ。教養は高くない。言葉遣いも乱暴である。梨音はそのあたりは理解したうえで順番に説明していった。

「そのお偉方というのは、任意に、新しい体へ乗り換えられれば良いのでしょう?」

「あ、うん?だからそれが転生っていうんじゃ・・・」

「いえ、それは、転生じゃありませんね。それはただの心の入れ関わり、いや魂の交換と言うべきですか?それとも、他者の肉体の強奪と言うべきですか?」

 カルステンは口をあんぐりと開けて梨音を見た。

「いや、お前、恐ろしいことを簡単に言いやがったな」

「恐ろしいですか?けれど、そういうことでしょう?誰かの魂の代わりに入ろうというのですから」

「そりゃあそうだけど、それだって簡単じゃあねえぞ」

「ええ。けれどもそういう魔法、魔術はありますから。そもそも私は魔法でこの体に入りましたし。異世界の住人と記憶を共有し、そして体を入れ替えるという魔法です」

「・・・つまり・・・梨音、あんたは既に実践済だと、そう言うんだな」

「ええ。方法は知っています。足りないのは魔法を行使するための材料だけです」

「だから異世界への入り口が必要ってわけか・・・」

「それだけではありません。私の知っている魔法は、異世界から日本にいる誰かと意識を入れ替える魔法です。それにおそらくは私のいた世界から日本へ、繋がる魔法でしょう。魔法の改良が必要です。改良して、要素を分割出来れば、意識の入れ替えだけで抽出することも出来るはずです。それについては、思考実験は既に実施済で、おそらく可能だと思います。それをしようとする者に魔力があるならば、ですけれど」

「いや、それじゃダメだろう?」

「ええ。ですから、改良が必要だと言ったはずです。そのために、異世界へ行って、材料を集めなくては。それから、さらに多くの魔術書を集めなければ。いろいろな世界の魔法を集めなくてはいけないのですよ」

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