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エピローグ・・・

ナタリーの世界から帰還した後の話は、別タイトルで書いていく予定です。


主にナタリー視点になるかな?


今日、明日の2回をもって、完結とします。


 異世界を旅した、あの夏から4ヶ月。

 季節は冬。


 2学期も終わる。


 折湊市は3学期制。終業式はクリスマスイブ。


 コートを着て手袋を着けると、私は校舎を後にした。


 クラスメートにカラオケ行こうって誘われたけど、私は用事あるからって断ってきた。

「えー?都代ちゃん、用事って何?まさか彼氏?ねえ、彼氏なの?」

「あー、いやー、彼氏っていうわけじゃないけど・・・」

 言葉を濁して、教室から逃げ出してきたんだ。


 うん、カイトに会うよ。


 駅の方に向かって自転車のペダルを踏み込む。

 風が冷たい。

 信号待ちでコートのボタンを留め直す。


 カイトは12時半に駅に着く。


 駐輪場に自転車を停める。

 カイトのグリーンのロードバイク「ビアンキ」を見つけた。いつも同じ場所に停めてある。

 駅の出口に着いた。

 12時25分。間に合った。


 12時35分、駅からカイトが出てきた。

「都代、久しぶり。2週間ぶりだっけ?」

「うん、2週間ぶりだよ。カイト」

 カイトは、いつも通り。駐輪場まで一緒に歩き、自転車に乗る。そばに停めた私の自転車。近くのファミレスまで移動する。


 カイトはバイトをしていない。

 リサイクルショップは1ヶ月無断欠勤してたしね。

 でも、レナータがくれた金貨を換金したお金が残っている。


 私達は、それをクエスト報酬と呼んでいる。


 レナータのクエスト報酬は、ナタリーに支払われた必要経費を除いて、一人当たり金貨6枚。それは地球では1オンス金貨に相当する大きさだった。

 とはいえ、異世界の金貨なので、地金価格での買い取りとなり、1枚当たり18万円弱。換金してくれた人への謝礼とか、まあ、そういうのを差し引いたりはあったのだけど、一人100万円くらいのお金を貰えることになった。

 なので、とりあえずはカイトもアルバイトをしないまま。

 私にとっても、今までに持ったことのない金額だった。


 まあ、そういうことなので、ファミレスに来るくらいのお小遣いはあるのだ。


 暖房の効いたファミレスで、私はランチセットを注文した。

 カイトも同じものを注文し、ドリンクバーに移動する。

 飲み物を用意したら、しばらくはカイトと二人だけのランチだよ。


「さてと。カイト、上谷駅の通路はどんな感じだった?」

 現在までにレナータの異世界通路は4つ発見していた。

 その一つ一つを区別するために、最寄り駅の名前を付けているんだ。上谷駅は無人駅で、折湊鉄道の駅の中でも、かなり寂れた駅だよ。


あ、それと、ナタリーの世界、レナータの世界へ繋がる通路は隠蔽工作済だよ。

上谷駅の通路は、12月になってから発見した通路だよ。もうそろそろレナータの異世界通路魔法の効果が無くなりかけているので、未発見のものは、このまま消滅していくのだろう、と諦めかけていた時に見つけた。

カイトには、梨音が転移の部屋を設置している間の護衛と、通路の先での魔物の調査をしてもらっていたのだ。


ところで、新しく発見した他の3つの通路にも隠避工作を施してある。

この隠蔽工作魔法には、ブルークラインセージの花が、かなり役立った。

あの花には、魔素を吸収する作用があり、通路からあふれ出る魔素を吸収してくれる。近くを通っても魔法力のある私でさえ通路の存在を感じないくらいに。

 

「そうだな。出口付近の魔物の感じだと、魔法世界なのは間違いないよ。確実に魔石をドロップするからな」

「そっか。梨音の様子は?」

「相変わらずだよ。梨音は異世界にいる方が安全だからさ。転移の部屋を作った後は、けっこう派手にやってたよ。あれは梨音の性格というより、レナータの影響だな。魔法の研究大好きっ子になっているよ」

「そっか」

 私は、わくわくしながら魔法実験をする梨音の姿が目に浮かんで、思わず笑ってしまった。


 カイトとは、異世界通路のこと、EPGのこと、梨音の事なんかを良く話してる。


 うん、私はね、カイトの事とかも聞きたいよ。

 でも、なんかそれを聞くのは照れ臭いっていうか・・・。


 そんな感じだから、私とカイトの間は、あんまり変わっていないかも。


「ねえカイト」

「どうした、都代」

「私達、付き合ってるのかなあ・・・」

「え?なに?都代、聞こえない」

 カイトは聞き返すけれど、めっさ小さくつぶやいた私の声は聞こえていないはず。


 ランチを食べ、ドリンクバーのお代わりをして、再び席に着く。


 ナタリーとの待ち合わせは2時だ。

 それまではカイトと二人きりだよ。


「上谷駅の通路は、探索した方がいいかな?」

「そうだな。でも数時間歩いた感じだと、周囲には人里は無さそうだった。森の中には、冒険者の落とした装備品とか、キャンプの跡とか、そういうものも一切見つからなかったから」

 そういう人の気配の無い世界っていうのもあるんだ。

 その世界に人がいないのか、近くにはいないだけなのかはわからないけど。幸いにも、今まで見つけた3つは、捜索の結果、人も住んでいることが確認出来た。


 でも、交流はしないつもりだけどね。


 だって、言葉通じないんだもん。


 ナタリーは、いずれ異世界人ともコミュニケーションを取りたいって思っているみたいだけど。何時になるやら。言語を一から研究するなんて想像も出来ない。


 席から見える窓の外は凄く寒そう。

 少し薄暗くなってきたよ。

 

 カイトに視線を戻す。

 ドリンクバーのコーラを飲みながら、カイトも窓の外を見ていた。

「雪、降りそうだな」

「そうだね」

「ホワイトクリスマスになるかもなあ」

 ホワイトクリスマスかあ・・・。カイトが一緒にいてくれるなら・・・それも悪くないなあ・・・。

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