異世界湖畔で星空露天風呂
ナタリーの露天風呂は、船を使うんだって。
「まずは、船を回収します」
アイテムボックスへ船を回収。
昨日、湖巡りをしたボートだよ。4人分のスペースがあって、舳先の方に舟をこぐ人用のスペースがある。
「そして、このあたりに舟を置きます」
ナタリーが湖が見える浜に舟を置いた。
「そして水を入れます」
うん。水・・・。
「都代、水、入れてください」
え?あ、私、魔法ね。
「ウォーターボール!」
ドバドバッと水を入れていく。船に水を入れるって変な感じだけど。
「あれ、まだ全然浅いね。梨音、手伝って!」
「あ、うん。ウォーターボール!」
バチャン!と勢いよく水が降ってきた。
「きゃ!冷たい!」
「あ、ごめん。多過ぎた」
小舟だと思っていたけど、こうやって見ると結構深い。地面に置かれていると7,80センチくらいはある。確かにお風呂としてはちょうどいいかもしれない。
梨音と二人でウォーターボールで水を張った。
「ファイヤーボール!」
お湯を沸かしていくよ。ソフトボールくらいのウォーターボールを沈めていく。さっきバーベキューで炭に火をつける時にイメージした、長持ちタイプのファイヤーボール。
ジュワジュワといいながら、水の中で燃え続けている。
「手伝おうか?都代」
「う、大丈夫だよ」
レナータもそうだったけど、梨音も攻撃魔法は得意だけど、パワーの抑え方は下手だったりするからね。木造の船にファイヤーボールで穴を開けそうだし。
「都代、私にファイヤーボールのイメージを教えて貰えませんか?」
ナタリーが隣にやってきた。
「え?ナタリーもやってみるの?」
「ええ。せっかくレナータの世界の魔法を教えて貰ったのですから。使えるようになりたいのですよ」
「そうだったね。じゃあ、手を繋いで。私がファイヤーボールを作るイメージを送るから、ナタリーは感じたままに、もう一方の手の上でファイヤーボールを作ってみて」
「はい。こうですか?」
ナタリーの左手を、両手で挟むように。そしてファイヤーボールのイメージを送り込んでいく。
魔法はイメージなのだ。
体の中の魔法力、魔法を行使するための力の流れを感じ取り、それを変化させていく。
レナータの世界の魔法、つまり私が使う魔法は、周囲のエネルギーを集め、凝縮して事象を作り出している。
ファイヤーボールは、周囲の空気から熱を少しづつ奪って凝縮させて作り出している。威力が強いファイヤーボールを作るには、一気に熱を奪うか、広範囲から熱を奪う必要がある。そのこともイメージする必要があるのだよ。
「ナタリー、魔法力を感じる?」
「ええ、都代の手から流れ込んできます。これが・・・ファイヤーボールのイメージなんですね・・・」
「じゃあ、ナタリーの右手の上に熱を集めてきて・・・そう、そんな感じだよ」
ナタリーが開いた右手の上に、黄色っぽい熱の塊が浮かび上がってきた。
「いい感じ。そのまま凝縮していって・・・」
ぱっと、一際明るく輝いて、小さなファイヤーボールが出来上がった。
「ナタリー、成功だよ!ファイヤーボールだ」
小さなファイヤーボール。ビー玉くらいのファイヤーボールがナタリーの右手の上にあった。
「ファイヤーボール・・・」
ナタリーが自分の右手の上に出現した小さな火の塊に見惚れている。
「ナタリー、そのファイヤーボールを少しづつ上の方へ持ち上げていって」
「はい・・・」
ビー玉くらいのファイヤーボールが少しづつ上の方へ動き始めた。
「いいね、うまいよ、ナタリー」
しばらくナタリーのファイヤーボールを上下左右に動かす練習をして、最後に小舟のお風呂に沈めた。
「さすがナタリーだね。すぐに出来るようになったね」
「いえいえ、都代のお陰です。ありがとう」
「えへへ」
照れるよ。私も最初はレナータと師匠に教えてもらいながら、ファイヤーボールの練習したっけ・・・。
水が多くて、結局ファイヤーボールを3つくらい沈めることになった。
ナタリーもビー玉ファイヤーボールで手伝ってくれたけどね。
「さあ、お風呂も沸きました。一度、部屋に戻って着替えましょう」
「はーい」
「じゃあ、また後で」
「ナタリー、私の水着は?」
「出しますよ、梨音。レナータから預かったいる予備の着替えに入っているはずですから」
二階の部屋に戻り、着替えから水着を取り出した。
うん。
スクール水着だね。
前回の温泉でも使ったけど。
前回も言い訳した気がするけど、夏休みの宿題を終わらせるのにいっぱいいっぱいで、水着を買いに行く暇なんか無かったのだよ!
ナタリーは隣の部屋で梨音に予備の着替えの入った荷物を渡しているはず。
『ちょっと!なにこの水着!』
隣の部屋から梨音の悲鳴にも似た声が響いてきた。
『レナータの選んだ水着です。似合ってましたよ?』
『似合ってたって・・・え?いつ着てたの?っていうか、カイ兄ちゃんに見られた?え?』
確か、レナータの水着ってビキニだったね。
けっこう覆う部分が少なめの・・・。
結局、梨音は水着の上にTシャツを着て現れた。
ナタリーはキャミ+ミニスカ風のヒラヒラした水着。うん、前回と同じ。
梨音が私の水着に目を止めてた。
「都代・・・それはそれでどうかと思うわよ?」
「だって、私、夏休みの宿題終わらせるのに必死だったんだよう!レナータとナタリーみたいに水着を買いに行く暇なんか無かったんだよう!」
「う、ごめん。スクール水着も悪くないよ。このえっちいビキニよりはマシ」
「そう?けっこう似合ってるよ、梨音。カイトも・・・目を逸らしてたっけ、確か」
「う、いやあ!恥ずかしい!ていうか、レナータ、何してくれてるのよ!」
梨音は、走り出した。
そのまま勢いよく小舟に飛び乗り、ザパーンとお風呂の中へ・・・。
「待って!私も!」
船によじ登り、お風呂にゆっくりと浸かっていく。
「あー、いいお湯だ」
ちょうどいい湯加減。ナタリーも反対側からお風呂に入ってきたよ。
結構広いね、小舟風呂。
「前回と同じ水着ですな、皆さん」
舳先の上には丸まったマウリツィオ師匠がいたよ。お風呂入らないくせに。
「先に寝てて良かったですよ、マウリツィオさん」
「いえいえ、私は皆さんと一緒にお風呂を楽しみたく・・・」
「楽しみ方が!」
梨音が胸元を押さえながら、お湯を師匠に掛けた。
「ちょ、何するんです、梨音ちゃん!」
少し飛び退く。けど舳先からは下りない。
まあ、いいけどね。水着だし。
カイトもやってきた。
短パンタイプの水着。カイトは・・・前はあんまり意識してなかったけど、割と筋肉あるんだね。
「カイト、上がってきて」
お風呂の中からカイトを呼ぶよ。
「お、おおう・・・」
少し躊躇いながら、端っこの方へ足を突っ込んでくるカイト。
梨音が反対側へ寄って行く。
「梨音ちゃん、いらっしゃーい」
うん、そっちは舳先だ。
「う、このエロネコ!」
再びお湯をかけられる師匠。
「エロネコちゃうわ!雌猫だし!」
急に関西弁っぽくなったよ。まあ、余計にエロオヤジっぽいけどね。
私はカイトのそばへ。
「気持ちいいね、露天風呂」
「お、うん。星も綺麗だ」
見上げると、空一面の星空だった。天の川も見える。でも・・・知った星座は無いな・・・。
「都代、あそこに見える三角と二つの明るい星、あれが英雄バルドゥイーンの弓とユリの花という星座です」
「え?そんな星座あったっけ?」
「ありますよ。こちらの世界には、ね」
あ、そうか。異世界だったね。ここはナタリーの世界だった。
それにしても凄い数の星だ。
周囲に街の明かりが無いから星空がこんなにも綺麗に見えるんだね。
「ね、カイト。星、綺麗だね・・・ん?」
カイトが私の胸のあたりを見ていた。
「何処見てるの?」
「ん・・・あ!いや、そういう意味じゃなくて!」
慌ててカイトが目を逸らした。
「えー?カイト、都代の何処を見てたんですか?」
ナタリーまで!
「ち、違う違う!そんな目で見てたんじゃないってば!」
えー、どうせ胸無いですよ、私。
でも、なんとなくわかってしまった。
たぶん、怪我の跡を探していたんだと思う。
私が、死んだときの怪我が残っていたりしないかって・・・。
「カイト、心配してくれてありがとう」
小さな声で言ってみた。
「え?なに?都代」
「ううん、なんでもない」
「なんかのぼせてきた・・・」
肩まで浸かっていた梨音が、ざばっとお湯から上がった。どすん、横板に腰かけた。本来の船の横木だよ。ちょうど船に乗るときに腰を掛ける場所。
「梨音ちゃん、Tシャツが色っぽいですな」
「うるさいよ、エロネコ」
「な、エロネコちゃうって」
確かに、白いTシャツが透けて、かえってなんか・・・。カイトも目を逸らしていたよ。
うん、梨音は育ちいいからね・・・。
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けもみみ転生~ もよろしくでございます。