異世界湖畔のカレーライス
夕飯はカレーだよ。
異世界だけど、鉄板キャンプ飯は全部するのだ。
さすがのナタリーの四次元ポ〇ット・・・じゃなかった、アイテムボックスにも飯盒は入っていなかった。
米は大量に入ってたけどね。
鍋が各種入っていたので、鍋でご飯を炊くことにした。
帰ってきてすぐに米をざっと洗って、水に浸してある。
水を吸わせることで炊き上がりがおいしくなるんだって。
「お米、バーベキューコンロでやらないの?」
カセットコンロを用意したナタリーに聞いてみる。
「火加減が難しいですからね。お米はガスでやりましょう。カレーの方はバーベキューコンロでやりましょうか?せっかくなので」
「うん。炭でやるよ!」
バーベキューコンロに炭を並べていく。
「カイト、着火剤は?」
「ん、使い切った」
どうやら置いてあった着火剤は初日に使い切ってしまったみたい。
「ナタリー、着火剤・・・」
「え?あ・・・在庫切れです」
どうしよう、火がつけられないよ。
「都代・・・」
梨音が呆れたように何かつぶやいた。
「なあに、梨音」
「いや、だからさ、ファイヤーボールで火を点ければいいじゃん、て」
・・・。あ、そうか。
「ファイヤーボール!」
テニスボール大のファイヤーボールを炭の中にゆっくりと下ろしていく。
長時間、ゆっくりと燃えることをイメージしたファイヤーボールだよ。メラメラと炭の真ん中で燃え続けている。
「都代・・・これ、ファイヤーボールだけでも調理出来そうだな・・・」
「え?ファイヤーボールカレー?」
「・・・なんか辛そう・・・」
梨音が笑い出した。つられて笑い出す。
無事に炭に火が移り、カレーの鍋もセットした。
ナタリーのお米も、ぐつぐつといい感じの音を立てている。
「火加減と中の様子さえわかれば、鍋でご飯を炊くのは難しくないんですよ」
そういうナタリーの鍋はガラス製の蓋つきだ。火加減のこつは、中火から強火で始める。水が無くなってきたら火を弱めて均一に火が通るように。
最初は蓋をとって、そっと混ぜてもいい。底をさらうくらいの感じ。
最後は火を止めて蒸らし。
焚くのが15分くらい、蒸らしが10分くらい。
カレーの方が時間が掛かってるくらいだよ。
日が暮れてきて、辺りが暗くなってくる。
LEDガーデンライトを何本か、それとキャンプ用ランタンが2本。
バーベキューコンロの炎も結構明るい。
「そろそろカレーもいいんじゃない?」
「そうだね。ルー入れるよ!」
カイトが鍋の蓋を取る。私は割ったルーを投入していく。
「ナタリー、辛口しかないよ?」
「あれ?そうでしたっけ?」
とぼけた声を出しているけど、ナタリー、絶対に知ってたよね?銘柄もジャワ〇レーしか無いし。
ナタリーが好きなカレールーしか買ってないだけだよね?
「都代、辛口食べられないの?」
梨音が楽しそうに聞いてくる。
「食べられるよ!でも、ちょっと中辛くらいが好みっていうか・・・」
「僕もあんまり辛すぎなのも・・・」
「え?カイ兄ちゃん、辛いの苦手?」
梨音が驚いている。ナタリーが仕方なさそうに何かを差し出してきた。
「私は辛口が好きですけど・・・。牛乳ならあります。少し味の調整をしてくださいな」
あ、これ、マウリツィオ師匠用のミルクじゃ・・・。
「大丈夫ですよ。マウリツィオさん、途中でファビオラになってましたから、牛乳の在庫が余ってるんですよ」
「あ、なるほど・・・」
出来上がり!
「わ、お焦げご飯だ」
皿に盛られた大盛のご飯。ちょっとお焦げがついてる。
「いい感じになったでしょ?」
ナタリーが得意そうにご飯を盛り付けてる。
ナタリーにご飯をもらって、自分でカレーの所へいって、好きなだけカレーをかけるよ。
たっぷりカレーをかけて、キャンプテーブルにつく。
みんなが揃ったところで、
「「「「「いただきまーす」」」」」
マウリツィオ師匠もミルクで薄めたカレーを食べているよ。
おいしい?
「にゃーあおお」
猫みたい・・・。喉を鳴らして返事をしたよ。
あつあつのキャンプカレーがおいしくないわけがない!
「おいしい!」
辛さもいい感じだし、お焦げの風味もいい。カレーのお肉はミノタウロスっていう魔物らしい。
え?ミノタウロス?
思わず聞き返したけど、頭が牛で、体が人っていう魔物じゃなくて、普通に牛の魔物化したやつだって。
ミノタウロスの伝承がこの世界にもあるらしく、牛の魔物のことを通称で「ミノタウロス」って呼んでいるだけらしい。
ナタリーも、初めてその名を聞いた時、ちょっと興奮したらしいのだけど、残念、普通に牛でした、と。聖魔法で浄化した後は、でかくて肉が堅めの牛、だって。
カレーの肉は少しくらい固めでも問題ないよ。
むしろ歯ごたえがあったほうがいいって私は思うよ。
「おいしいですね、都代」
「おいしいね、ナタリー」
ナタリーは、相変わらず上品にスプーンを使ってる。そして何故かナイフとフォークも用意してる。大きめに切られたジャガイモとかをナイフで切って食べてるよ・・・。
梨音はスプーンでパクパクと。
あ、ほっぺにカレーつけて・・・。
カイトは普通に食べていた。
意外と常識人だな。そしてコップの水の減りが早い。よく見ると、めちゃ汗をかいていた。
「カイト、辛い?」
「い、いや、平気だ」
「お水、いる?」
「お、もう無くなったのか。水、貰おうか・・・」
テーブルの上のピッチャーから水を注いでカイトに手渡す。
「アイスキューブ!」
小さな氷を作り出すと、ぽちゃん、とコップに入れた。
「ありがとう、都代。冷えてる方が助かるよ」
湧き水を引いているから、汲んだばかりの時は冷たいのだけど、テーブルの上でぬるくなってしまうから。
ごくごくと水を飲むカイト。
かわいい。辛いの苦手とか、ちょーかわいい。
後片付けが終わって、コテージに引き上げる。
広間のソファーで横になる。
ナタリーがやってきて髪を束ねながら「都代、お風呂、用意する?」と聞いてきた。
「そうだね」
バーベキューの炭の焼けた匂いが服に染みついてる。
「今日は、みんなでお風呂に入りましょうか?」
「え?みんなで?」
そう言ってマウリツィオ師匠とカイトを見渡す。
「ほら、水着があるでしょう?」
「あ、そうだったね」
梨音が振り向いた。
「わ、私は持ってないわよ!」
少し顔を赤らめて叫ぶ。
「ありますよ、梨音。レナータが買ったやつが」
「え?そうなの?じゃあ、いいけど・・・。でもどうやって?」
「それはですねえ・・・」
なにやらイタズラっ子みたいな顔でナタリーが笑ったよ。
終わる、終わると言いながら、のんびり平和なキャンプを書き続けています。
日本に戻る頃には、一度、完結とします。
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けもみみ転生~ もよろしくお願いいたします。