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異世界湖畔、三日目

 異世界湖畔でのコテージ生活、3日目。


 私はカイトの部屋で目覚めたよ。

 うん、結局、またカイトと夜中まで話をしてた。

 カイトの部屋は狭いし、ベッドは一つしかないから仕方なく一緒のベッドで寝た。


 うん、仕方なくだよ。


 だってほら、コテージ広くて、二階に戻るの遠いし、途中は暗いし、ね?


 カイトを起こさないようにベッドを出て、キッチンでインスタントコーヒーを作る。

 そこへナタリーもやってきた。


「おはよう、都代。よく眠れた?」

「うん」

 ナタリーが微笑んで一緒にコーヒーをすする。

 静かな時間が流れていく。

「ねえ、ナタリー」

「なんですか?」

「異世界通路のことだけど・・・」

 私は、レナータの世界の通路も隠して維持出来ないかって尋ねてみる。

「そうですね、こちらには梨音とマウリツィオさんがいますからね。維持しておければいいのですけど・・・」

 ナタリーが言い淀む。

「レナータは破棄して欲しそうでしたね。梨音は日本に戻りたいと言ってました。でも、もう学校に戻ってくることは出来ません。それに自分の意思に反した魔法研究をするのも嫌だと言っていました。梨音の知識を活かすなら、レナータを頼ってスカファーティー領で生きていくことかもしれません」

「そんな・・・」

「私は、梨音の気持ちが決まるまで、通路は維持しておき、必要なら私の世界で梨音は身を隠すべきだと思っています。マウリツィオさんが協力してくれるというので、通路の隠蔽化は目途が立っていますし。私も都代の魔法のお陰で、使える魔法の種類が増えそうですし、通路維持もしやすくなるかもしれません」

「そっか・・・」

「それに・・・都代には話しておくべきですね・・・折湊市のEPGのことです。レナータの話では、魔法力感知もしているそうなので、規模の大きな魔法は探知されます。魔法が探知されればレナータと同じように連れていかれてしまうでしょう。都代は気を付けなくてはなりません」

「う、うん。でも既に魔法の練習とかしちゃったけど・・・」

「旅に出る前、都代の魔法は小さなものでした。心配はいらないでしょう。たぶん、こちらの世界に来た時に魔法力が解放されたのでしょうね。マウリツィオさんが内側からコントロールしたために急速な上達をしたようですから」

「たしかに・・・」

「それとレナータが言うには通路周辺は魔素が漏れ出ていますから魔法を使っても感知されないと言ってました。現状では、レナータが通路を乱造しているため、折湊市の魔法力感知は市街に限定されるそうです。折湊市北側に広がる山地には無数の異世界通路がありますから、精度の低いEPGのシステムでは分析不能になっているようです」

「そっか。通路の維持も魔法を使わなきゃいけないもんね。山の中は大丈夫なら少し安心だね」

「梨音とも話し合って、日本に帰ってからの事も決めておいた方がいいですね」

「そうだね・・・」


 ナタリーは今日の予定を立て始めた。

 私さえよければ、と言いおいてから、ハイキングに出掛けることを提案した。

「ここから10キロくらい行った所にブルークラインセージという名前の花が群生している場所があるのです。青い小さな花なのですが、そこの一帯だけ一面に生えていて綺麗なのですよ」

「お花畑?」

「ええ、自然の花畑です」

「いいね、素敵。見に行こう!」

「近くまで軽トラで移動して、お昼ご飯はそこで食べましょうか?」

「あ、いいね。そうしよう」

「じゃあ、決まりましたね。午後は、花を少し採取してきましょう。マウリツィオさんと分析したいことがありますし」

「分析?」

「ええ。さっきの話とも関係あるのですけど、魔力と魔素の関係性、それと魔素の濃い場所に生えるセージの一種に特殊な効果が認められる場合があるのです。文献によれば、その花の咲く一帯は、100年ほど前までは魔素の濃い場所だったのです。もちろん魔物もたくさん出た場所でした。ですが、今は魔物はほとんど出現していません。ひょっとしたらブルークラインセージは魔素を吸収しているのではないかと思いまして・・・」

「へええ・・・魔法研究もするんだ。ナタリー」

 ナタリーは曖昧に笑う。

「マウリツィオさんのお陰ですね。私の世界は魔法文明が低く活用方法は限定的です。言い伝えによる魔法術式が多いですし、魔法を使えるものも多くはありません。でもマウリツィオさんが言うには、小さい頃から魔法に親しんでいれば、もっと魔法を使える人は増えるだろうし、応用も出来るようになると。それと、魔導具の材料になりそうなものの研究次第で生活が豊かになると。ですから、私は魔法研究も始めることにしたのですよ」

「そっか。ナタリー、忙しくなるね」

「ええ。でも自分のためでもありますからね。ブルークラインセージは異世界通路を隠すための隠蔽魔法に使える可能性がありますから」

「それは大切なことだね。私も手伝うよ」

「ええ、ありがとう」


 梨音とカイトが起きてきて、朝ご飯を済ませる頃に、マウリツィオ師匠も広間に現れた。ハイキング出来そうな服装に着替え、みんなで軽トラに乗り込んで出発するよ。

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