とある建物のとある研究室
折湊市は、監視されています。
誰によって、何を、何のために・・・といったことは少しづつ・・・
監視者には目的がありますが、監視者自身も動かされる駒の一つに過ぎません。
駒を動かすものには、究極的な目標があります。
それは、ずっと後にならないと語られない・・・かもしれません。
(折湊監視制御システム室)
「主任、魔法力を感知しました」
モニターから目を離さないまま、その男はスマホで通話していた。
金曜に大きな魔法力感知があり、その規模から異世界と転生干渉があったことが推察されていた。
「はい、複数の箇所で確認出来ています。今は数値レベルの解析から場所の特定を計算しています」
男は30歳前後のようだ。
整髪料を使っていない少し伸びた髪。
有体に言ってボサボサ。
無精ヒゲ、グレーのパーカーは1週間くらい洗濯していないように見える。
「ええ、規模は大きいですよ。これは期待していいかもしれません。転生干渉の形跡の後で発生していることからも主任の推測は当たりですね。なんらかのエンチャンターが出現してますね」
折湊市にある7ヶ所のセンサーは駅ビルの屋上を始め、高い建物に取り付けられていた。
その機械はコンパクトで、ありふれた通信機器の一つに見えるようになっている。
監視しているのは魔法や魔術の痕跡である。
その機械の中身はモニター、センサー、演算装置、通信機器であり、あくまで特定の事象を検知し、それが魔法による現象なのか、そうではない自然現象や事件、事故によるものなのかを見分けることで、折湊市の80パーセントの地域で発生する魔法行使を監視することが出来た。
「主任、そんなに焦らないで下さいよぉ。頑張ったって計算結果が早く出てくるわけじゃないんですから」
それにしても、と男は思った。
装置の完成度はいまひとつ、だ。
魔法力そのものを感知することは出来ない。
装置が感知しているのは派生的に発生する空間の歪み、磁気の揺れなのだ。
それを捉える拠点が、たったの7ヶ所では少な過ぎだ。
それに効率良く事象を捉えることも出来ない。
センサーの精度が悪いからだ。
結局、それが起きた現場がわかった頃には、魔法力を行使した人物は移動している場合がほとんどだ。
「僕の理論を装置に導入すべきなんですよ。そうしたらもっと早く場所の特定が出来るはずなんです。ほんと、なんで予算を付けてくれなかったんですかね」
これでもセンサーからの情報を自動的に計算し余計なノイズを取り除いて結果を地図上に特定するのを自動化しただけでも凄いことなのだ。
去年までは、この作業は人がやっていたのだから。
そんなんじゃ、1週間はかかる。
役に立たないと思われるのも当たり前だ。
今なら数時間でアウトプットされる。これも、もっと観測地点を増やし、コンピューターの処理速度を上げれば、もっと時間短縮出来るのに。
自動化のシステムを作ったのは、この僕なんだぞ、と心の中だけで男は叫んだ。
「ええ、わかってます。大丈夫です。主任は実働部隊に連絡をお願いします。対象を確保出来たら4か月ぶりの手柄ですよ」
そう言うと通話終了する。
スマホをデスクの上に放り投げると左手で雑誌の上のコンビニ袋に手を伸ばした。
菓子パンを取り出して、見ないでビニールを破く。
そうしてため息をついた。
「ぶっちゃけ、もう一発、魔法、撃ってくれないかな。そうなりゃ計算結果よりも先に大まかな場所がわかるのに」




