平凡な日々
僕が部室に入って、見渡してもう皆集まっていた。ちなみに僕は手芸部に所属しているよ。といっても、手芸部は僕を合わせて2人しかいないけどね。それでも、手芸とかは昔から好きだし、得意だったから、僕にはピッタリだと思うんだよね。
「ん、やっと来たか」
「少し遅れました、すみません」
僕は遅れたことに謝罪し、席に着いた。手芸部は依頼されて作ることあるけど、だいたいは自由に作って、飾っている。先輩方の作品はどれもすごく可愛かったり、かっこ良かったりするから、僕もそれを目標にしているんだ。
それじゃあ、部員の紹介をしていこうかな。スタイルが良く美人で、あきれたような表情をしている女性は熊野美月先輩。2年生で、去年からずっと手芸部をしているらしい。アニメに例えるなら、武道を嗜むお嬢様な感じかな。
「まあいい。どうせ私と君の二人だけなのだしな」
「そうですね。先輩がいなくなると寂しくなりますね」
「そ、そうか」
僕がそういうと先輩はそっぽを向いてしまった。顔が赤い気がするけど、気のせいかな?もしかして怒っているのだろうか。先輩とはかれこれ中学生からの付き合いだ。だからお互いにそれなりに親しい。最初は良く先輩に手芸を教わったなぁ。
「ま、まあいい。始めようか」
「はい、そうしましょう」
僕はカバンから裁縫道具と作りかけのぬいぐるみを取りだし、作業を始める。もう少しで完成する。うん、可愛いと思う。今回は同級生の依頼を受けて作成している。いつも依頼自体は少ないから、自分の作りたいものを作ってる。
作業を始めれば先輩はすごい集中力で、周りの声なんて一切届かなくなる。あれほどの集中力は僕には無理だと思う。大抵は体を揺するとか、大きく手をならすとかしないと気付かない。
「お邪魔するよ~」
「………流々花、いい加減ノックをしろ」
「ごめんごめん。おひさー有ヶ谷くん」
「お久しぶりです。流々花先輩」
ん?誰かと思ったら流々花先輩だった。弓継流々花、青く長い髪をポニーテールにしている先輩。初めて合ったのはこの部活に入部してから。どうやら美月先輩のクラスメートらしく、よく部室に来ている。
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『みっちゃ~ん、お邪魔するよー』
『はぁ、ノックしろと言っているだろうが』
『あーごめんねー!』
『お前なぁ』
『およ?君は新入部員かな?私、弓継流々花。よろしくー』
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流々花先輩はなんというか、軽い。すぐに誘いに乗るような雰囲気がある。尻軽ではないみたいなんだけど、流々花先輩のことを知らないならそう思ってしまうだろう。僕も最初はそうなのかと思っていた。
『私、そんなに軽そうに見える…………?』
つい口からこぼれてしまった「なんか、軽そうな先輩だなぁ」に反応した流々花先輩は、悲しげな表情をしていた。すぐに謝って、許してもらえたし、流々花先輩を知る良い機会になったからよかった。見た目だけで判断するのは良くないよね。
「よし。完成だ」
美月先輩を見ると立派なカメレオン?ができていた。いや、あれはカメレオンなんだろうか?可愛いけど、犬みたくなっている。マスコットキャラクターにいそうな見た目をしている。
「僕も完成です」
うん、我ながら可愛いと思う。くりっとした目がキュートな猫ちゃんだ。そう、今回の依頼は猫だった。どんな猫でも良いから実物大の大きさにしてほしいと、材料代まで出してくれた。僕の最高傑作になったと思う。
「かわいい!ネコちゃんだー!」
流々花先輩はぬいぐるみにみいっている。いつの間にか美月先輩もみいっていた。2人とも可愛いものが好きらしい。初めは美月先輩が可愛い物好きと聞いておどろいたんだよね。そうは見えなかったし。
それからほどなくして6時になり、部活は終了した。そろそろ下校時間だし、ぬいぐるみは明日渡すことにする。ぬいぐるみをケースに入れ、僕は家に向かった。