出会い
僕の名前は有ヶ谷光一。
高校生になった春、僕の、今までとは違う新しい日常の始まりなんだ!自己紹介も何事もなく終わったし、良かったよ。
ただ、一人を除いて。
『皆さんと必要以上に仲良くする気はありません。以上です』
彼女は三好奏さん。銀色の長い髪が特徴で、整った顔立ちと水色の瞳が彼女を引き立たせている。落ち着いた雰囲気なんだけど、近寄りがたいオーラを放っていた。自己紹介の一言もとげとげしく、先生も唖然としていた。
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「にしてもよ、あの三好っての?相当キツそうだぜ」
「え、何が?」
「性格がだよ。あのリア王西条が諦めたからな」
そう言う赤髪で少しつり目の彼は那須賀亮太くん。僕の最初の友人だ。彼はどうやらオタク趣味があるらしくて、オタクな僕とも仲良くしてくれた。同じアニメやラノベについて語り合うのが楽しい。
それで那須賀くんの言うリア王西条っていうのは西条悠二くん。西条くんはかなりイケメンで既にモテモテ。行動力はあるし、人をまとめることもできる凄い人。まるでアニメの主人公だね。ちょっとだけ、西条くんは苦手かな。明るすぎるんだよね、西条くんは。
「そうなんだ?」
「そうなんだよ。ま、始めっから仲良くしないって宣言したやつとすぐに友達になれると思う方が変わってるよな」
「そうかもね」
本当に、そうかもしれない。僕だって、そういう人とはあんまり関わってこなかったから。ただ、気になりはする。三好さんは何でそんなに人と関わりたくないのか。ただ、無闇に首を突っ込みはしない。前に、それで痛い目を見たから。
既に何人かが挑戦したけど失敗に終わっているみたいだから、アレは相当だと思う。女子にさえ、話しかけられてもあまり相手にしていないみたいだ。大抵は無難に返されて終わっているみたい。
「本当に、誰とも仲良くしないみたいだね」
「やっぱ篠原もそう思うよな」
黒髪のセミロングでストレート、学級委員を勤める彼女は篠原花火さん。密かに人気のある頼れる委員長だ。僕とは中学からの同級生で、昔からリーダーシップを取っていたんだ。中々できないことだよね。
「今はどうしようもねぇな。そろそろ俺は部活に行くぜ。また明日な、2人とも」
「うん、また明日」
「またあした~」
西蓮寺くんは荷物をもって教室を出ていった。篠原さんも「それじゃあ私も部活行くね、またあした~」と言って部活に向かった。2人を見送り、改めて僕も部活に行くことにした。
教室を出て文化部棟に向かう途中、偶然にも三好さんとバッタリ会ってしまった。とりあえずクラスメイトだし、無視も良くないなと思ったから、話しかけることにしよう。教室での態度から相手にされないだろうとは思うけどね。
「あ、三好さんも部活?」
「ええ」
彼女はそのまま歩いていくわけでもなく、僕の方に身体を向けた。彼女はごく普通の、おかしなところなんてない少女に見えた。だからこそ余計に気にはなるけど。
「そっか。何部に入ってるの?」
「ゲーム部よ。それが何か?」
「ううん。それだけだよ」
「そう。それじゃ、失礼するわね」
僕は普通に会話出来たことを驚いたけど、何故か疑問には思わなかった。こんな些細な会話から、僕の平凡な日常がちょっとずつ変わっていくなんて、思いもしなかった。