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迷惑

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ご指摘ありがとうございます!

 フブキに関しての項目が一通り処理でき、アクアは今後何をするのかヘルプなどを読み下調べをすることにした。


 膝の上に乗ってきたフブキと共にメニュー画面の項目は一通り開いては見るが初期なので特別代わり映えすることなく、アイテムに至っては何も入っていない、なけなしの1000イェンという通貨があるくらいであった。

 ヘルプも基本的には単語の説明であったりで詳しくこの世界について書いてあるということはなかった。


 お知らせを開き、先ほど見たメンテナンスの予定などの下に初心者向け進行チャートと書かれたバナーを見つけタップし開く。

 そこには最序盤の進め方が載っていた。


 アクアのいるこの部屋は一番最初にプレイヤーに割り当てられる仮部屋で1日1000イェンで借りれる最安値の部屋である。ただ立地などはランダムなので気に入らなければ買わなくても問題はない。


 しかし寝床は睡眠ボーナスに関係してくるのでなるべくいい場所であったり特定の場所を構えておく方が良いと書かれていた。

 3日ほどはこの部屋を無料で拠点として使えるようでまずは街中を巡るというのがこの進行チャートの薦めであった。


 その先にはダンジョン攻略やギルド創設などやれることは自由なようでそれぞれの手順なりが載っていた。

 何にせよ探索はまずやるべきことの一つなのでアクアは無難に町の散策から始めることにした、内心ではRPGの基本通りにいけばイベントが起きて何かしらのクエストを受けるだたろうという甘い考えもあったからだ。


「よし、フブキ。外へ行こうか。外の騒がしさも落ち着いたようだし」


 フブキの放った光によって集まっていたことをアクアは露ほどにも知らず周りの迷惑さを棚に上げて文句をつぶやいた。

 そんなアクアの発言に膝上にいたフブキは一度体を小刻みに震わせ降りるとアクアの方を向き直し敬礼をする。

 従順な態度にフブキの頭をくしゃくしゃと撫でそれをフブキは受け入れるのだった。


 錆びついた蝶番がギィギィと音を鳴らしアクアはフブキを抱きかかえ部屋からでた。

 扉の先は木板の敷かれた廊下が広がっている、アクアのいた部屋以外にも数部屋設けられており各それぞれに新しく始めたプレイヤーが割り当てられるようでアパートやマンションのような作りになっていた。

 1階の1室に割り当てられていたアクアは廊下を抜けエントランスのような広い空間のあと外へ出る。


 アクアの眼前には見慣れた見慣れない風景が広がる。


 建物はまさしく剣と魔法の世界らしい中世ヨーロッパ、異世界といえばこれだろうという作りなのだが元が日本なのだからだろう、それに似つかわしくない見慣れたごちゃごちゃと統一感のない様が街路樹など日本らしさを醸し出していた。

 自然の風景もあるにはあるのだがヨーロッパのような壮大さというよりは馴染みある自然といった感じで田畑や水路など田舎風景がそこにはあった。

 道路も舗装はされていてコンクリートではないが石畳が綺麗に敷き詰められていた。


「すっげーな。一応ここ日本なんだよな」


 初回ログイン時はログインした場所から一番近い始まりの街へ移動させられるため日本の3箇所に設置された始まりの街の中で中心地の名古屋に作られた街の中にいることは間違いなかった。

 当の本人は知らないため自分の現在の居場所は不明と言った感じであった。


「キュキュー」


 見惚れているアクアを余所にフブキが早く行こうと適当な道を羽で指差す。


「そうだな、見てるだけじゃつまんないもんな。そっちから周ってみようか」


 キューっと甲高い鳴き声をあげフブキも賛同する、若干視線を感じながらもアクアは適当に街の中を歩き始めるのだった。


 街の中はハリボテの建物もあればお店をやっている家があったりと様々で、そんななかでも一際目立つのは街の中心地あたりにある大きな建物であった。

 ビルではないが、この世界観的にいえば教会であったり、なにかギルド的なものを経営している建物であると想像できる。


「あれ、でけぇな。あそこ目指すか」

「キュ!」


「あの〜……」


 そんなアクアとフブキに話しかけてきたのは1人の女性で、NPCではなくプレイヤーだと装備品が告げていた。


「はい?僕たちですか?」

「そうです!お聞きしたいんですけど」


 人ではないが人系統の種族である彼女は怪しげな雰囲気満載で話を進める。


「お部屋、光りましたよね?めちゃくちゃ眩く光ってましたよね?それにその子…可愛い!!あなたテイマーかサモナーなの??ちょっとわたしにも抱っこさせて!!」


 食い気味に来る女はどうやらアクアとフブキの部屋の出来事を外から見ていた1人のようで後をつけていたようだった。

 痺れを切らして話しかけてきたのだろうがゲームをしないアクアでもこれはマナー違反、常識の範囲外のことをされていると理解できた。


「いや、ちょっと。流石に職とかは言えないですし、光も僕が出てきた部屋ではないですよ」


 アクアはとりあえずすっとぼけこの場をやり過ごすことにした。が、突然話しかけてくる女性が諦めるわけはなかった。


「嘘よ!それにそんな子連れてるプレイヤーなんていないのよ!あなたには何かしら特別ななにかがあるに違いないわ!」


 ヒステリックな彼女の声で周りのプレイヤーがゾロゾロと注目をし始める。時折フブキに対して可愛い、抱っこしたいなど聞こえてくるあたりフブキの注目を浴びる能力が発揮されているのかもしれない。

 一度注目を浴びて仕舞えばそのあとは噂が噂を呼ぶのと同様に人集りができるのだ。

 そのせいでアクアは逃げるという選択ができなくなった。


「あの、申し訳ないですけど仮にその光が僕の部屋で僕が原因だとして。あなたに教えなきゃいけない理由が見当たりません」


 避けたかった注目をいの一番に受けアクアは少し怒りがこみ上げていた。


「うっ…たしかに。でも!これだけみなさん注目してるんですよ?そのペンギンちゃんのことだって!ゲームの情報は共有するべきです!」


 顔をグッと近づける女性は威圧的に密着してくる。街中でのプレイヤー同士の喧嘩は基本的にできないようで無理に接触しようものなら警告の末、一時強制停止され最悪の場合はアカウント削除だ。

 故にアクアも怒りに任せて手を出そうものなら自分が痛い目を見ることになる。


「ゲーム情報の共有には賛同します」

「!!じゃあ…」

「ただこの子や光に関しては僕の個人的な能力なので攻略には関係ありませんし、共有できるものはないので言えません」


 ゲーム内容の共有としてはダンジョンの攻略や出現するモンスターの種類などあくまで補助的役割としての共有が一般的である。

 アクアの個人的な職や、種族に関してはステータスの上がり具合など新たに始める人の参考にするために公表することはあってもその他の情報をわざわざこの場で言う必要はなかった。

 DWではPvPもあるからこそなおさらなのだが…。


「……でも。でもそれはズルイじゃない!あなただけ特別なイベントなんて!」

「そんなの僕に言われても知らないですよ。運営に言ってください。あとこんな無理矢理な聞き方は脅しと一緒ですよ。それに貴方達もこの女性と同罪ですからね?一人を囲んで聞き出そうとするのはただの私刑です。通報されても文句は言えませんよ?」


 それを聞いた周囲の人間はそそくさと散り散りに去っていく、遠巻きで見る者もいるが声を大きくしない限りは聞こえる距離ではなかった。


「もういいですか?」

「なによ、あんたなんかネットで晒してすぐに痛い目みさせてやる!」


 負け惜しみに似た言葉の後女性はアクアの前からそそくさと逃げるように去っていった。

 まるで嵐のような女性であったと今更ながらアクアは身を震わせる。

 もう絡まれませんように、そう願うアクアであった。


「出て早々これか、フブキはどこか隠れておいたほうがいいのかもな」


 光に関しては見てた人間が追ってきていなければ先ほどのように問い詰められることもない。が、フブキに関しては、連れて歩けば目につくのでまた同じように囲まれて出所を聞かれることもあるだろう。と判断したアクアは抱えているフブキをどうにか目につかないようできないものか考えた。


「鞄なんか持ち歩かなくてもいいからな…。まぁ、何かされてもこっちから手を出すことは無いだろうしこのままでいいのか?」

「キューキュー」


 フブキも特別隠れたりはしたくないようでアクアの発言に賛同するように頷いた。

 それをみたアクアも隠そうとしていた自分の考えを180度変えフブキをそのままにすることにした。


「お前が嫌がるならやめとこう。じゃ、予定通りあの大きい建物目指すか!」

「キュー!!!」


 周りの目がなくなったわけではないがアクアは気にせず歩みを進め始めた。


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