早々
南の門はやけに閑散としていた。中心地から少し離れていることからプレイヤーもわざわざこちらまで来ることはなかった。
プレイヤーも門番に話しかけるものはおらず、皆外へ出るためにここへきていたりと初めたばかりらしき動きをするものはいなかった。
「門番は…あそこだな」
城門は降ろし格子で左右には鎖が伸びおり、その先にはレバーと手動でも動かせる巻上げ機のようなものが付いていた。
それを守るように門番が左右で仁王立ちして待ち構えていた。
「あの…」
片方の門番にウシワカが話しかけると武装した男はこちらをギロリと睨む。その表情にユキは一瞬ビクッと体を強張らせた。
「なんだ」
「外へ行きたいんですけどこのメンバーで通ってもいいですか?」
「冒険者の登録証はあるか?」
「いや、彼女だけまだ」
「であれば彼女だけはここを通すことができん。もし全員で外へ行くつもりなら協会で冒険者登録証をもらってくるといい」
ウシワカがわかりましたとお礼を告げて門番から離れる。それに続くようにアクアもユキも後ろを歩く。
「これで協会に行けばユキも外へいけるな。特殊イベントまであと少しだ!」
ウシワカはよほど楽しみなのだろう軽やかな歩みで2人を引き連れる。
寄り道をしなければ協会までは10分もかからない。
先ほどのアクセサリー店を通り過ぎ雑談を交わしながら協会へ向かった。
アクア1人の時に比べて視線がこちらへ来ないことに疑問はあったがフブキがウシワカやユキに紛れ込んでいるせいで特に注目をされなくなったのだろう。
喋っているとあっという間に協会へ着いた。早々にウシワカがユキを急かして登録証の発行へ連れていき、アクアとフブキは待っていてくれと放置された。
アクアはフブキとともに一階の空いているテーブルへと座るがその周りの視線はいつも通り好奇なものを見るような目であった。
アクア自身原因がわかっていたためそれに対してなにか反応はしなかったが気持ちがいいものではなかった。
「フブキ、そういえばお前はどうやって刀になったんだ?」
「キュ?」
テーブルの上に乗りアクアの方を向いて座っているフブキはアクアの問いになに?と首をかしげる。
その姿がまた可愛らしく周りの声が一際大きくなる。
「わからないか。お前なら知ってるかと思ったんだが」
「キュー………キュ!キュキュ!」
おもむろにアクアの腕を掴んでメニューを開くようジェスチャーをする。
アクアはフブキの言う通りにメニューを開くとアクアの指差す装備をタップする。
そこには今着ている装備が出ていてどれもまともな装備としての機能はなかったが服の装備の他にフブキが相棒として装備品扱いで載っていた。
指定してみると最初に見た説明書きがしてあるさらに下に新たな文面が書かれていた。
〈皇帝ペンギン(雛) 特殊
生まれたばかりのペンギン。
秘めた能力があるがまだ開花していないようでその力は未知数。
マスコット的魅力で人から注目を浴びやすいのでしばらくは注意が必要だ
装備へ変化することが可能である。
主人のHPが30%を切ると『幼刀薄氷』へ変化する。〉
リトルドールの時を思い出して自分のHPがギリギリまで削られた時のことをアクアは思い出した。がここでアクアに一つの疑問が浮かんだ。
「普段は武器化はできないのか?」
生死の間際で変化してくれることはありがたいがそうじゃない時はフブキを守るために新しく武器が必要になる。
アクアはそれを考えできる限りフブキのことを知っておきたかった。
「キュ!」
お馴染みの敬礼をすると小さく光ってフブキが薄氷よりも短い刀へと変化した。
「短刀?名前は…」
装備画面のフブキの項目が変化していた。
☆★☆★☆
短刀 氷柱
フブキの仮の姿。氷の短刀。
元の姿には契約者の許可、もしくは戦闘終了で戻る
★☆★☆★
特殊効果なしの短刀であった。薄氷と同様に刀身からは冷気が出ているため氷の刃を飛ばしたりということができる可能性はある。
アクアはとりあえずフブキに戻るよう伝えると同じように光りペンギンの姿になった。
変化すること自体に特に疲労はないようで戻るとテーブルで寝そべってアクアに撫でてくれと背中を向けるのだった。
その光景を見ていたプレイヤー達はそんな2人に興味津々であった。
変化する武器などまだ聞いたこともなく、それを目の前で見せられたことで好奇心を持つなと言う方が到底無理な話であった。
しかし、周りは指を咥えて見ているしかなかった。
特殊なものであるということはそれだけアクアには何かあり、それを簡単に教えてもらえるほど彼らは情報を持ち合わせていなかった。
そのため結局目の前の1人と一匹に話しかけてくるものは1人もいなかった。
「えらい注目されてっけどアクア何かした?」
しばらくして戻ってきたウシワカの第一声はそれだった。
ユキもなにか落ち着かない様子で周りを見てい流。
「まぁちょっと。でも今更だから」
「そっか。ならまぁいいか」
「いいんですか!?」
ユキはなぜかすんなりと理解してしまうウシワカに思わず声をあげた。それに対して散り始めていた視線を再び集めることになった。
「うぅ。ごめんなさい」
「ははっ!ユキも注目を浴びたな」
「やめてくださいー!」
顔を赤らめるユキをからかうウシワカもまたユキ同様に注目を浴びたのだった。
「登録証は?」
「あぁ、それは無事に」
そう言ってユキは登録証を取り出してアクアへ見せつけた。
アクアの登録証は現在黒なのに対してユキの登録証は黄緑色だった。
「へぇー!それが通常の登録証なのか」
「ええ、多分…ですよね?」
「最初はな。次のランクに行くと青色になる。俺みたいに」
そう言ってウシワカが見せたのは青色のプレートであった。
車の免許みたいだなとアクアは思ったが特殊な免許が黒はないので最初だけかと胸にしまい込んだ。
「これで全員登録証持ちになった。アクアとっとと特殊イベント始めるぞ!」
ウシワカはよっぽどテンションが上がっているのだろう。その発言でアクア達の注目は一層強まった。
プレイヤー達の視線を感じながらも彼らはミリクの待つ受付へ向かうのであった。




