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厄日

 一人の男が張り詰めていた雰囲気関係なしにずかずかと歩いてきていた。

「おい、にいちゃん」

 無粋と威嚇を交えたその声の主がアクアの前までやってくると立ち塞がった。


 種族は魔物系統だろう、見た目は凶悪そのもので強さの程度はわからないが普通なら関わりたいとは思えない見た目である。


 緑の瞳がぎょろりとこちらの動きを監視するように休みなく動く。


「あの受付とどうやって仲良くなったぁー?教えてくれてもいいよぉなぁー?」


 今日は厄日なのかとアクアは叫びたかった。ログインしてから30分ほどしか経っていないのにすでに二度目の揉め事の予感であった。


「わかりません、来たらあの人が話しかけてきたので」


 通常、門番に話しかけずに来ても街中の何かしらのクエスト依頼をされるだけである。

 男がアクアへ絡んで来るのは特殊な事情がなければありえないと考えるのは当たり前であった。


「そぉーんなわけ。ないだろぉー。隠してもいいこぉとないぞぉ」


 男の不快な声が耳に残りアクアは顔を顰める。


「そんなこと言われても…わからないものを伝えようがないです」


 アクアからしたら、本当に伝えられるようなことがないのでヒントもなにも出しようがなかった。

もちろんフブキというイレギュラーな存在はいたがそのせいかと言われてもアクアに判断はつかない。


「あーぁん?あんまり調子ぃこいてっと痛い目にあわせぇるぞぉ?」


 額と額がぶつかりそうなほど顔を近づけ威嚇をする。見た目からするばアクアが捕食される寸前に見えたに違いない。


「本当になんでかわからないんですけど、可能性でよければ」


 折れる形でイライラしながらアクアは適当なことを条件だといって誤魔化すことにした。


「まず種族がヒューマン以外でできるかは不明です。職業は僕は剣士ですがそこがさも影響するのかもわかりません。ゲームを始めて門番に話しかけずに街をウロついてこの協会にきました、それで僕は話しかけられたのでそれ以外の原因があるなら僕はわからないです」


 フブキのことを隠したが、どのみち目の前の魔物系統の男にはできない上にすでに手遅れなのだ。アクアの説明を聞いて顔を歪める男の表情にしてやった感があった。

 フブキがその悪いアクアに気づいたのか突き地味に痛みがあったがそれでも心の中で暴言を吐いてしまっていた。


「それはぁー、事実なんだろぅなー?」

「事実もなにも僕がしたのはそれだけですから。それ以外の条件があるならそれは僕の関与するところではないです。あとあなたのことはブロックしますから。マナー違反はやめたほうがいいですよ」


 流石にイライラしたアクアはメニューを開いてブロック機能を使う。

 これは1人20人までブロックできてブロックされたプレイヤーはそのプレイヤーを認識することができなくなる。

 制限付きなのでよっぽど悪質でない限りはしないものなのだが今回の件はアクア自身が喧嘩腰になってしまったので関わらないようにしておきたかった。


「まぁだ終わってねぇ……ぞ……あぁ?」


 すぐにブロックすると男の目の前からアクアが消えた、正確にはいるのだが見えなくなった。


「こいつブロックおススメするぞ」


 いなくなった男を素通りし、その光景を眺めていた人たちに注意を促した後アクアは協会から出る。


 ーーくそー!!!どこだぁー!!!


 協会内では醜い男の声がしばらく止むことなく響いていた。



 やっちまった。逃げるように協会から離れてきたアクアは自分の行動を反省していた。


 目立つ行動は避けたかったはずがイラついたからという理由で口調を悪くした挙句ブロック。

 しばらくはあれを検証する人間が出てくるだろう、がなにか起きるわけがないとアクアはなんとなくわかっていた。


 リポップタイプのクエストならば可能性はあるのだろうが特殊イベントなのだ。一度限りのイベントだったと考えるのは間違いではないといえる。


 自分のやったことに落ち込むアクアは広場のベンチに座りため息を吐く。


「静かに友達とプレイしたいだけなのにな」


 フブキの身体をもふもふっと触るとどうしたの?っと可愛らしい声で尋ねるように鳴くのだった。


「お、あれじゃね?」

「あれ…ですか?なんか落ち込んでません?」


 遠くから男女の声が聞こえる。探し人でもいたのだろう、しかしアクアはその声の先を見る気もなくフブキに癒されるためスキンシップを過激にしていた。

 そんなアクアの元へゆっくりと足音が近づいてきた。


「あの…アクアさん…ですか??」


 恐る恐る尋ねてきた人を見るとそこには屈強な竜人と小柄な幼女が並んで座るアクアに話しかけてきていた。


「そうだけど…なに?」

「私たちですよ!タカくん!」

「ちょ、ユキやめとけ、本名出すの禁止!!」


 幼女がアクアの横にちょこん降りるとそのまま座ってアクアの腕にしがみつく。


 竜人の男はその見た目とは裏腹に幼女の行動にあたふたし、その強そうな身体を細々と動かしていた。


「え、もしかしてユキシロとヨシか?」

「ああ。ってお前もかよ。本名禁止!!」


 ちゃんとハンドルネーム見ろと見せられた竜人の名前はウシワカと表示されていて経義をひっくり返し義経から取ってきた名前だとすぐにわかる。


「悪い悪い。ヨシのHNがウシワカで、ユキシロは…ユキってまんまか」

「タカくんはアクアって名前なんですね!アクアくんって呼びます!」

「おう、ユキ頼む」


 先ほどまでの気落ちしていたアクアの気分はコロリと変わりユキとウシワカに会えたことでフブキの強制撫でタイムは終わりフブキも一安心とアクアの膝で2人を交互に見つめていた。


「とりあえず合流できてよかったよ。その子のことも聞きたいが、とりあえず2人がどの程度進めてるか確認から始めようか」


 アクア、ユキ、ウシワカの並びでベンチに腰掛けそれぞれの状況確認を始めた。

 ウシワカはすでに冒険者登録を済ませ街の外へ魔物と戦闘も経験済み、それに対してユキは冒険者登録もまだできていなく始めたばかりと言った感じだ。

 アクアも自分が先程冒険者登録を済ませたことを伝えると、じゃあまず。とウシワカの今からやることを提案する。


 門番のとこへ行きユキの冒険者登録をできるようにして協会へ移動、登録が終わり次第、街の外に出て戦闘の練習。という流れはどうかと2人に尋ねた。


「登録まではいいんだが、外に出る前に俺のイベント一緒に行ってくれないか?」

「イベント?そんなもんあるのか?」

「あぁ、多分俺だけだと思う。まず説明が長くなるんだけど…」


 アクアは自分の特殊な状況を説明した。


 種族、フブキの存在、協会での出来事、マイの封印、新たなイベント以来…。


 最初はウシワカもすごいな程度で聞いていたのがマイの登場辺りから目を輝かせて興味津々と言わんばかりに食いついてきていた。


「ずりー!めちゃめちゃ楽しんでんじゃん!」

「フブキくんか。よしよし可愛いね」


 ゲーマーとして羨むウシワカとフブキより少し大きいユキがフブキを撫でていた。満更でもないようでアクアの膝の上で緊張感なく寝そべっている。


「だから2人にも一緒に参加してって言ってるんだろ、一緒に周りから恨まれようぜ」

「くっ、断る理由がない。特殊なイベントなんてどこのサイトにも書いてなかったのに」

「私は2人に付いていくのでお任せしますよ」


 よっぽどフブキが気に入ったようでユキはじっとフブキを撫でながら見つめて言った。


「じゃあ決定だな。イベント一緒に頼む」

「おう、俺に任せとけ!じゃあさっさとユキの登録をと行きたいところだが……」


 おもむろにウシワカがメニューを触り始めプライベートモードの使用をし、それに許可するかというメッセージが現れた。

 拒否する理由もないのでアクアもユキも、はいのボタンをタップする。


「種族とか能力を先に聞いておこうと思ってな、周りに聞き耳立ててるのがいると厄介だから」

「お互いの能力を知るってやつだな」

「あぁ、いろいろ作戦も練らないとだしな」


 プライベートモードでは使用を申請した主と許可したゲストのみの空間になり外からの干渉や監視が一切不可能になるものである。

 ただセーフティゾーンのみで使用可能で時間も10分間のみなので話したくない話などする際に使われることが多い。

 ユキは理解したようで、誰から言います?と少し楽しげに尋ねる


「じゃあ俺からーー」


 アクアはイベントのこともあるので真っ先に自分のステータスを2人に見せることにした。

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