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失態

 建物内は、いたって普通の間取りに思えた。玄関から入って目の前には廊下と二階へ上がる階段。左右に部屋が別れておりリビングと何かしらの部屋だろう。

「お邪魔しまーす」

 家主がいても聞こえないような音量でアクアは家の中へ入っていった。


 ピーピーピー


 玄関から先へ踏み入れた途端、突如の警告音とともに目の前にメッセージが現れる。


 ***警告***

 モンスター接近

 装備がありません

 ********


 はっとアクアは腰に手をやった。

 初期装備には木刀や木の棒が付き物と勝手に決めこんでいたせいで自分には攻撃する武器がないことに今更気づいた。


 慌てているところにモンスターが現れた。


 アクアはその姿に一瞬身構えるがすぐに警戒を解く。

 目の前に現れたのは小さな人形だった。サイズは10センチ前後で見た目は普通のぬいぐるみに近い人形だ。


 その人形はよちよちと歩いてアクアの足元へやってきた。そして短い手でアクアを殴る。


「ははっ、可愛いな………痛っで!!!」


 足の小指辺りを殴られたアクアは突然のダメージに声を荒げた。

 痛さのあまり怒りで足元の人形を蹴り飛ばして踏みつけると人形は消滅し、経験値が入ったメッセージが視野の右下の方に表示された。案の定経験値1のみの取得で割にはあっていない。


 そしてもう一つ左上に突如現れたHPゲージは100から95に減っていた。


 リトルドール。今倒したモンスターの名前だ。

 どうやらこの建物内にいるのはこの一種類のようで一度倒したモンスターがうようよといるのが室内マップで把握できた。


 ただアクアは気落ちしていた。たった5のダメージでタンスの角に小指をぶつける痛さなのだ。攻撃される前に倒すことは出来るだろうが不意に受けるダメージが怖くなり進む速度が随分と遅くなった。


 一階をぐるりと周り、リトルドールも多くて三体ほどしか固まっておらず装備なしでも順調にモンスター退治ができていた。


 リトルドールはどういうわけなのか、足の小指辺りをピンポイントで狙ってくるようでタイミングよく蹴られるところまできてから蹴り飛ばしその先で踏んで退治するという流れになっていた。


 この調子で上の階もサクッと終わらせようとHPは95のまま二階へと上がって行った。


 階段を登った先には先ほどとサイズは一緒だが人型から動物型に変わったリトルドールがいた。


 目の前にいるのは犬のぬいぐるみだ。


 よちよち歩きだった下の階のリトルドールとは違い四足歩行でこちらへ向かってきていた。速度としてはよちよち歩きよりも気持ち早いくらいなのだが蹴りつけるには余裕すぎるくらいの遅さではあった。


 しかしアクアは何を思ったか蹴るのをやめその犬の人形が近づいてくるのを待った。

 どうせ足元で止まってくると予想していたアクアは攻撃モーションに入ったら避けて蹴り飛ばせばいいとシミュレーションしてあと数歩というところまで待っていた。


 そのまま犬の人形は懸命に近づき足元で止まった。ということはなくそのまま足へタックルをかました。


「うぇ?」


 アクアの喉の奥の方から変な声がでた。

 ダメージはないのだが体が後ろへ飛んでいたのはとっさに理解した。

 がすでに身動きが取れるはずもなく階段の前だったこともありそのままゴロゴロと一階まで落ちていくことになった。


「キ、キューーーーーー!」


 もちろん抱いていたフブキも同様に飛ばされ胸から飛び出して宙へ投げ飛ばされていた。

 ズドンと音を立てて落ちる。アクアの頭の上の方でフブキも大きな音を立てて落ちた。


「いてててて。」


 HPは80まで下がっていた、これは階段から落ちた時の受けたダメージであの犬の人形からのダメージはゼロだった。


「フブキ大丈夫か?」

「キュー」


 なんとか。と言っているようなジェスチャーで無事を確認する。


「舐めてかかると痛い目みるもんだな、やっぱり」


 つくづく自分が嫌になるとアクアはため息を吐き出しフブキの側へ近づいた。


「怪我はないか?擦りむいたりとかして「キュ!キュキュ!!キュキュキュ!!!」」


 突然フブキがアクアの背後を指差すように羽を前に向けた。

 慌てた様子のフブキの示す方をみると階段にどこから湧いてきたのかリトルドールが重装備で整列してこちらを見ていた。


 処刑シーン。磔にされ四方から銃で撃たれるという昔の映画のシーンをアクアは思い浮かべていた。


 目の前のリトルドール達は軍服にそれぞれの体サイズにあった銃をこちらへ構えていた。


 ーーー死んだ。


 そんな考えが瞬時によぎってしまうほど絶望的な状況であるには違いなかった。

 乾いた破裂音が建物内に響く。


「痛っ、痛て!痛ててて」


 銃弾は本物のそれとは違って節分の豆のように地味に痛いものだった。


 しかし一発が1のダメージのようでHPはあっという間に赤ゲージ残り10になっていた。

 あと1秒後には0になるだろう、ヒビキをお腹の中へ隠しダメージを受けないように庇ってアクアは静かに目を閉じた。


 フブキの叫び声にアクアは心の中で謝り、フブキの感触が手元から消え背中に当たっていた銃弾の痛みが消えた。


 ーーーーゲームオーバー。やり直しか


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