プロローグ
「どーも、皆さん初めまして。私、伊藤シンゲンと申します。」
そう挨拶するのは胡散臭い笑顔を浮かべながら、紳士風なお辞儀をするゴボウのような痩せ型の男だった。
顔つきはイケメンと言ってもいいのだが、男が靡かせる銀髪の髪とその身を包む白スーツの純白さが返って気持ち悪さを演出する。
「さて………私が何者なのか。まずはそこから始めましょうか。」
男がパチンと指を鳴らすと薄暗い部屋にモニターが設置される。
モニターには男がいると思われる建造物が映し出される。
「私は聖ラヴァフト魔術学園の理事長を務めさせて頂いている者です。以後お見知りおきを。」
男は再び深々とお辞儀をする。
「年は34歳、バツイチの独身です。趣味は魔導書を執筆する事で、得意魔法は錬金術。彼女募集中で〜〜す!!ってやめて!そんな物投げないで!!!ぼべらっ!!!!!」
と水晶のようなものを鳩尾に叩き込まれる。だが、其の場で藻掻きつつも笑顔を絶やさない男には少し感服する。
「ゴホッゴホッ………えーコホン。我が学園は私達の国の中でもトップクラスの育成機関です。生徒数は約一万五千人に上ります。」
男は一度咳払いをすると服を正し、学園の紹介を始めた。
モニターには学園の全体図が映し出される。
「学園では幼稚園、そして小中高一貫となっており、どの学年・どの時期でも入学・転校・転入が可能です。」
そして、と男は続け…………
「何よりの目玉は、学年ごとに教育施設が設けられていることです。」
モニターは切り替わり、次に巨大な施設が映し出せれた。
大きさを言えば、普通の育成機関の倍程度は確実にある。
「これは高等部1年生のための教育施設です。何分……学生数が多いものでね。校庭や武道場、錬金室に科学魔術実験室など、様々な部屋も用意されています。」
男は残念そうに語るがその実、儲けている事は言わないでおこう。要するにこの巨大な施設が学年ごとに配備されていることをアピールしたいのだ。
「高等部になれば、選択科目も出てきます。魔導師団や魔術警備隊、錬金術師に魔術医療師。生徒達には、自分の将来を見据えた選択を促していく方針です。」
男が言い切るとモニターが撤去され、日光を断絶していた布が取り払われ男に光が当たる。
男は椅子に座り、机に肘を置く。
そして両手を口元にあて、いかにも偉いですよ感を演出する。
後ろから当たる日光が、男を神々しく感じさせてしまう。
策士だ。
「さて……今回お話させて頂いた内容はほんの一部に過ぎません。詳しい事を知りたい方は是非我が学園まで足をお運びください。」
そして男は最後にこう言い残した。
「魔術はゼロの可能性をイチにするものです。我が学園には諦めるとい文字は存在しません。諦めない覚悟がある者………そして何かを掴みたいものがあるのなら………若人達よ我が学園に。」