day
私の身近な人の目線で書きました。
ノープランで書いたので、所々おかしいかもしれないですが、読んでいただけたら嬉しいです。
今日も朝を迎えた。また何もすることがなく一日を過ごすのだろうと考えながら大きく伸びをする。足もぴんと伸ばして体を徐々に起こしていく。コップ一杯分の水を飲み、昨日食べ残した肉をレンジに入れ、温まるのを椅子に腰かけて待つ。肉を取出し、ゆっくりと食べる。別に朝から重たくても平気だ。何だったら、毎日3食肉でも嬉しい。いや、たまには魚も食べたくなるだろうな。
家の前は駐車場だから人がよく出入りする。時折窓からその人々の様子を眺めて、また二度目の眠りにつく。いつも通りの日常だ。何の変わりもない。
「ただいま」と玄関から声がした。いつもより早い帰りだ。玄関の扉があく音がする。また大きく伸びと今度は大きな欠伸をしてから下に降りる。
昔一緒に暮らしていた人間だ。大きな荷物を持っている。おかえりと声をかけると、きみは嬉しそうに笑いかけてきた。「久しぶりやね、元気そうでよかったわ」と楽しげに荷物を片付けている。何をそんなに持ってきたのだろうと覗くと洋服と勉強用具がたくさん出てきた。
きみは5年前に突然姿を消した。突然だ。といっても1年のうち何回か大きな荷物をもってまた帰ってくる。だが、しばらくするとまた荷物を持ってどこかへ行ってしまう。泣きそうな顔で何か言ってきみはどこかへ行くが、いつもよく理解できなかった。
荷物をある程度片付け終えたきみは、「久々に一緒に外に出ようか」といい外へ連れだした。久しぶりに外の空気に触れて、気分がいい。夏だ。きみがいつも帰ってくるのは暑い季節か、雪が降ってくる季節だね。と言おうと思ったがなんとなくやめた。きみは楽しそうに町を眺めて、世間話をしながら歩いている。
家に着くと、他の住民たちも帰ってきていた。「帰ってきてたんやね、おかえり」「散歩に行ってたん?」ときみに聞いている。「せやねん、あっそういえば中村さんとこの子って高校どこ行ったっけ・・・・・」と、世間話が始まった。どうしてきみたちはよその話をそんなにするんやろうと思いながらまた眠りにつく。
昼間はほかの住民は出かけているようで、きみはソファで一人過ごしている。ソファより床に寝ころびタオルケットに包まる方が幸せだよと教えてあげるが、幸せの価値観は人それぞれらしい。
2階の寝床にピアノが1台あるのだが、ピアノの音をしばらく聴いていない。いつものソファの上できみは楽譜に色を付けて階段を駆け上がっていく。耳がいいからわかるんじゃなくて、これは誰にでもわかる不快音だ。これが30分くらい続いたころだろうか。「あっつー」といいながら汗をかいたきみが下りてきた。さっきのあの音は何、と聞くと、「いやー。久々に帰ってきたから楽譜こーて弾こうかな思ってんけどやっぱりあかんわ。もうちょっと練習せななぁ」とけらけら笑っていた。冗談はよしてくれ、上達するまでどれくらいの時間がかかるんだと気が遠くなりそうだった。
きみは朝、といっても10時過ぎくらいに目を覚まし、ピアノを弾く。昨日よりはまだましやん。と思いながらコーヒーを片手に本を読む。きみが勧めてきた今年の夏映画化した大人気の小説らしい。なかなか面白いが、音が気になって読むのをやめた。耳を澄ませると、8小節くらいだろうか。間違えずに弾けている。やるやん。と思いながら目を瞑る。気が付くと寝ていたらしい。きみが下に降りてきて、お昼ご飯の用意をしている。「今日はお素麺やでー」と台所から今日のメニューを教えてくれる。具材はハムと卵とキムチらしい。辛い物が苦手ということを覚えていてくれていたのかキムチが入っているのは一皿だけだった。二人で食事を終えた後、きみは熱心に携帯を見ている。何がそんなにおもしろいんや。と思うが、人の好みはそれぞれだろう。そんなことよりもまったく勉強道具を開けている姿が見られないが大丈夫だろうかと心配する。
きみの表情はころころと変わる。さっきまで「おいしいなぁ」とニコニコしながら素麺を食べていたのに、なんで今は泣いているんやろう。いつもは「マシンガンのように話す」という例えが、きみのために作られたかと思うくらいよく喋るのに今は何も話さない。ただ携帯を見つめながら泣いている。ぽろぽろと涙を流している姿をみてどうしたらいいのかわからなくなった。とりあえず、台所で椅子に座って本でも読むか。と思ったのだがまた寝てしまった。
「よー寝るなぁ」隣を見るときみはそういって笑った。笑っているきみをみて、夢を見てたんか、変な夢やったなぁ。と考えているときみが「夕方で涼しいしちょっと外でようや」と誘ってきた。夏の夕方は歩きやすいのと眠気覚ましに丁度いいから話に乗った。歩いている途中気付いたことがある。きみは時折目を潤ませているのだ。目が大きいからよくわかる。いつもより長い時間歩いた。きみは涙を流さずに家まで歩いた。「あ、めっちゃ星見えるやん!うわーよー見えるなー」と上を向いてけらけらと笑う。心配して損したわ!と思いながら内心なんや、元気そうやん。と思いながらほっとした。
朝起きるのが遅い分きみはとても夜更かしだ。というか、夜更かしをしているから朝起きるのが遅いんちゃうか、と考える。他の住民は日付が変わるまでに寝床についているというのに、きみは日付が変わったころに台所に立ちいい匂いをさせてくるのだ。匂いにつられて台所に行くと、「新作やで、食べる?」といい、よくわからない茶色に染まった米とのりを渡してきた。スプーンでご飯をすくってのりに巻いて食べている。真似して同じようにすると、これがおいしい。何を入れてるんやろ。と思って聞こうとしたら、「お醤油と砂糖と隠しポイントでごま油いれてんおいしいやろー」と幸せそうな顔でこちらをみてくる。めっちゃごま油の香りがしてるから全然隠しポイントになってないで。と言おうと思ったが君の食べるスピードが速くなったのときみが得意げな顔をして言ってきたことを思い出して、黙って食べることに専念した。洗い物をしてきみは「1時間くらい勉強してから寝るから先寝とっていいよ」と言ったが夜食を作ってもらったのだから付き合おうと、昼間読もうと思っていた本に手をとった。
気が付くとまたうとうとしていたらしい。きみの「もう寝るでー。上行こー」という声で目が覚めた。どれだけうとうとしたらええねんと自分の睡眠について考えながら体を起こす。
こんな生活をしばらく過ごしていた。夜食を他の住民が寝てから2人でこっそり食べるのも、外に一緒に出掛けるのも、きみのピアノが上達するのを下で聞くのも、きみが時折泣いている姿を見るのも、当たり前になっていた。
時々きみは一人でどこかに行くのだが、今日は髪の毛を切ってきたらしい。写真を一緒に撮ろうと携帯を持って追いかけてくる。恥ずかしいが、昔からカメラのレンズが何故か怖くて苦手なのだ。そんなことを気にしないきみはいつまでも追いかけてくる。何枚か撮れば気が済むと思って努力したが、きみは調子に乗って何枚も撮ってくる。今時の人間は何故こんなに写真を撮りたがるのか永遠の謎だ。携帯を見て嬉しそうにきみは写真を整理していた。こんな嬉しそうな顔をしている人間をみると、不思議とまぁいいかという気持ちになるものだ。
きみは夜食を2日に一回のペースで食べていたから太ったらしく、動画を再生しながら何やら奇妙な動きをしている。動画は途中で止められた。普段ソファの上で過ごしているきみにはかなりハードだったらしい。きみが必死になっている姿を見ておかしくて笑ってしまった。倒れているきみの横に座るときみは笑いながらくすぐってきた。たまらずまた声を出して笑った。最近毎日が楽しい。
ピアノの方は調子がいいみたいで、新しい楽譜を買ってきたんやと意気込んでいた。次は昨年大ブレイクしたアニメ映画の中で使われていた曲らしい。前の曲は恋愛バラードという感じの曲らしいが、今回はテンポが速く、爽やかで走りたくなる感じの曲らしい。弾き始めは毎回こうなのだろうか、爽やかさも疾走感のかけらもない。後3曲あるらしいが、聞いているとずっこけてしまいそうだ。イメージとは違うらしく、「もっと軽やかなつもりやねんけど録音して聞いたら笑えるわ」とがははときみが笑って録音を再生している。まぁ疾走感もないが、ここ最近、毎日ピアノの音が聞けるのも悪くない。
きみがたい焼きを買って帰ってきた。おいしいものを本当によく知っているなぁと感心しながら有難く頂戴した。きみはずっとけらけら笑っていた。
きみが帰ってきて、この日常がまた続くと思っていた。安心しきっていた。
目を覚ますときみがいなくなっていた。荷物も残っていない。最近おかしなことはなかったか必死で考えた。そういえば、昨日きみは荷物を整理し、ぼくの頭をなでながら何か言っていた。その時のきみの顔は、どこか寂しそうだった。
きみは何も言わずにまたどこかにいってしまった。きみがもしかしたらぼくを驚かそうとかくれんぼしているんじゃないか、そう思って部屋中を探した。ピアノの椅子にもいない、いつも座っていたソファにもいない、一緒に寝ていた布団にもいない、皆が寝静まっても台所からいい匂いもしない。どこにいってしまったのだろうか。住民に聞いてみるが、僕の頭をなでるだけでよくわからない。
ああ、きみはまたどこかに行ってしまった。
きみの匂いが部屋に残っている。
きみの優しさに包まれながらもう少し一緒に眠りたかった。
きみの姿を探している。
きみがいない生活がまた当たり前になってしまった。
今日も朝を迎えた。また何もすることがなく一日を過ごすのだろうと考えながら大きく伸びをする。足もぴんと伸ばして体を徐々に起こしていく。今日は、きみの定位置だったソファに腰かけ、きみが忘れていった本をもう一度読み直すことにしよう。
「いやオチ!!!!」と思われた方が多い気がします。書いている本人の私もそのうちの一人です。
最後に主人公がどんな人物かわかるようにしたかったんですが、設定が甘くてわかりにくいわ!!!と反省中です。
今回は、私と愛犬目線で書きました。ホームシックすごすぎる!!!小説書いてこの寂しさを綴るぜ!!!記録しちゃうぜ!!!みたいな勢いで書きました。
ちなみにですが、次は私本人の目線で書きたいと思っています。
↑ほんまはこのオチも言うか迷ったけど設定甘々で伝わる気がしなかったので後書きに頼ってしまいました、次の作品で頑張ります。
読んでいただきありがとうございました。