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勇者召喚
――王は業を煮やしていた。
それは神々から力を授かった者達が力を悪用し、世界を破滅するまでに悪逆非道を繰り広げていたからだ。
力に溺れた傍若無人の者共が――国を、人を、大地、星を汚す悪鬼羅刹に落ちていた。
全人類が根絶やしにされるのも時間の問題と考えていた王は一つの賭けに出ることにした。
「――勇者召喚の儀式を開始する」
過去、異世界から召喚した勇者によって歴代の魔王は幾度となく滅ぼされていった歴史がある。
――それを用いようというのだ。
「勇者に関する情報や知識がこのような場面で役に立つとは皮肉なものよ」
そう苦笑し呟いた王に従者たちは皆険しい顔をしつつも頭を上げられず、己の不甲斐無さに身を竦めるのであった。
国民と種族を超えた世界に生きる命の未来のために、王は藁にも縋る気持ちで儀式の詠唱を口にしていく――