第11話 ユマニチュードの原則 その④ 「立つ」
長らく更新間隔があいてしまいました。すみませぬ……
さて、ユマニチュードの原則の最後、4番目「立つ」でございます。
まず最初に皆さんに質問です。
あなたは、どの姿勢が一番楽ですか?
寝る 座る 立つ
私も含め多くの方は、寝るを選ばれるのではないでしょうか。
ほんとに寝るのは楽ですよね。
さて、寝ている状態というのは、全身の筋肉をあまり使っていないということであります。
筋肉を使わない、ということはエネルギーを消費しないということ。
だから楽なのであります。
しかし、こう言われたらどうでしょうか?
「君、しばらくベッドで寝てていいよ。トイレ? 食事? いやいやそれも起きなくていいから」
ベッドに縛り付けられる入院生活を余儀なくされた方は、この辛さがよく分かるのではないのでしょうか?
そうですよね、寝たままというのは苦痛になります。
ユマニチュード考案者のイブ・ジネスト氏は、「自分の足で立つことで人の尊厳を自覚する」と述べています。
よく寝たきりによる弊害の中で、身体機能の低下に焦点が行きがちです。
しかし同氏は、「人の尊厳」に目を向けるようにと言っているのではないのでしょうか?
身体機能の落ちた認知症の方を「寝たきり」にすることは、一種の人権侵害または虐待なのかもしれませんね。
もちろん無理やり立たせるのは、それはそれで問題ある行為なのではありますが。
では、認知症の方が「立つ」にはどうしたら良いのでしょうか?
「一日20分を目標に、優しく手をとって立ってもらうとよ!!」
ユマニチュードでは、一日20分間「立つ」ことが推奨されています。
心臓病や足の骨折など、何らかの運動が制限されている状態でない限り、立つことを促しましょう。
まずは、周りの安全を確保しましょう。
立たせたは良いものの、転んでしまった……ではいけませんからね。
今まで勉強してきた原則を踏まえて、認知症の方の手をとります。
そして、優しく声掛けしながらゆっくりと立ち上がってもらいましょう。
やがて、あなたの愛情ある関わりによって、その方は徐々に歩けるようになるかもしれません。
「立つ」ことで、人間らしさを取り戻す。
いかがでしょうか?
補足)
医療の現場でも、なるべく早期に「立つ」ことが早期回復において必須とされています。
「寝たきり」になるのに長い時間は必要ありません。
3日ベッドに寝ているだけで一生起き上がれなくなる、なんてのは決して珍しい話ではないのです。
以前私が勤めていたリハビリテーション病院でも、入院初日から立位訓練を取り入れていました。
意識のない重篤な脳疾患の患者でも、特殊なベッドを使って立った状態を維持する訓練を行っていたほどです。
それほどまでに「立つ」ということは医療的側面から見ても重要なのであります。
重症な認知症の方の「立つ」練習は、医師や看護師、リハビリスタッフとご相談の上されたほうがより効果的と思われます。




