表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜が送る異世界デスマーチのすすめ  作者: Maskwell
二章 小さき心に意思を!
18/40

十五話 かけっこだよ!

一斉に駆け出した俺たちは校舎に沿って走っていく。


メロウとか言った女悪魔には負けないが、他の3人からは引き離された。


まぁ、所詮はお子ちゃまボディ。鍛えているとはいってもこの時期の身体能力なんてほとんどイコール年齢だ。


多少引き離されるのは仕方あるまい。


だが社畜ってのは不思議なもんで、なんでも半分より上にいないと凄く不安になる生き物なのだ。


だから残業もするし、成績もそこそこいい。


まぁ、いい言い方をすれば責任感が強いんだな。


「さて、どうしたものかな……」


俺は少しずつ差が開いていく3人の背中を見つめながら呟く。


曲がり角を曲がる。


「ん?なんだあれ?」


曲がった先で3人が止まっていた。


その原因は彼らのすぐ目の前にあった。


「壁……というよりは、もう砦だな」


目の前には高さ5メートルほどの石で作られた壁。


しかし、ところどころに付いている覗きのようなものからも砦の印象を受ける。


「おいガキども!俺の後についてきてもいいぜ!」


そう声を上げたのは青い肌の悪魔。


名前は忘れた。


「穿て!【デデド】」


俺は目の前で唱えられた魔法を注意深く見る。


青い悪魔の周りの地面から握りこぶしサイズの土塊が宙に浮く。


そして、その土塊が捩じれていき錐状になったかと思えば一瞬で壁へと向かう。


響き渡る音と砂煙。


「ふん!どうだ!」


青い悪魔が自らの魔法の成果を確かめる。


「っな!」


砂煙が晴れるとそこには先ほどまでと変わらぬ壁がそこにはあった。


「っち!ならば!火球よ。【ファルガ】」


今度は高温のヒトの頭くらいのサイズ火の玉を壁へとぶつける。


なるほど。火球で壁自体を溶かしてしまおうというわけか。


火球がぶつかると壁には火球と同じサイズの穴があいている。


「やったか?」


青い悪魔が壁へと近づく。


あーあ。そんなこと言っちゃうと……。


「なに?!」


青い悪魔の驚きの表情は仕方あるまい。


ジンともう一人の悪魔も壁に視線が釘付けになっていた。


壁の穴はゆっくりとふさがっていっている。


一度目の魔法もこの修復機能で破壊できなかったのだろう。


「どいて」


後ろか聞こえるハスキーヴォイス。


俺は振り返ることなく、それがメロウの声だと分かる。


ほいほい。言われなくてもどいてやるよ。


左へと半歩ずれると、すぐ傍を白い翼を広げたメロウが駆ける。


そのまま羽ばたき、地から飛び立つ。


すげー。あの翼ってやっぱ飾りじゃないんだな。


メロウはそのままゆっくりと壁を越えていこうと上昇する。


さて、俺もそろそろ行きますか。


俺は勢いをつけて壁に向かって走る。


「おい、スフェール家の!考えなしでは……」


俺が走りだすとジンが声をかけてきてくれる。


おお、意外と面倒見がいい奴なのかもしれない。


しかし、そんなジンの言葉を無視して俺はそのまま壁へと加速していく。


「そい!」


掛け声と共に俺は壁と平行に飛び上がる。


風を切る浮遊感と共に、壁の中ほどまで一気に来る。


「思ったよりも、高いな……」


俺は頂上を見上げながらつぶやくと共に、壁のふくらみを蹴り上げる。


さらに上へと上昇する。


ホントは、覗き窓に足をかけたかったそう上手くはいかないものだな。


これでようやくあと1mってところか。


俺は重力に従って失速していく感覚がくると、すぐに再度壁を蹴る。


「もぉーう、いっちょ!って、あれ?」


壁を蹴ったところまでは良かった。


しかし垂直にそそり立つ壁に対して、壁と平行に上るというのは意外と難しい。


つまり何が起きたかと言えば……。


壁を普通に蹴ってしまったことで地面と平行に、壁から離れるように俺は飛んでしまった。


「ちょっとあんた!どいてよ!」


そしてすぐ耳元で聞こえるハスキーヴォイス。メロウだ。


俺はとっさに彼女の体にしがみつく。


もちろん、やましい気持ちなんてこれっぽちない。


これっぽちもない。


「ちょ!なにすんのよ、エッチ!」


碧眼が怒りの色に濡れて俺を睨みつける。


「いやぁ、ホント申し訳ないんだが、空の旅をご一緒しませんかお嬢さん?」


俺にしがみつかれたことでバランスを崩しつつもメロウは頂上を目指してくれる。


メロウは意外と押しに弱いのかな。


単純に、俺を引き剥がすだけの余裕がないのかもな。


ルール的には問題ないだろう。どんなものを利用してもいいって大女さんも言ってたし。


「変なとこ触ったらマジで叩き落すからね」


そうは言うものの色々としがみついてるおかげでダイレクトな感触は伝わってきている。


もちろん、やましい意味ではない。


やましい意味ではない。


「ちょっと早く降りてよ!」


気付くと頂上についていた。


「ありがとう。助かったよ」


俺はメロウに笑顔で答える。


「次邪魔したら、ぶっ飛ばすからね」


そう言ってメロウはそのままコースの先へと飛んでいった。


これは世に言うあれか、「ツンデレ」なというやつか。




壁の頂上はとてもいい景色だった。


さて、俺も行くとするか。




って、あれ?


「……どうやって降りたもんか」





これは世に言うあれか、「詰ん」だ「出れ」ないというやつか。

第一パートまだ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ