九話 この素晴らしき異世界に!
お休みいただきました。
構想練ったのでまた書き出します。
次回で設定臭い文章もほぼほぼ終わりにしようかなー。って感じです。
その世界の名はかつての名を残し、エイディンと呼ばれている。
神がヒトから隠したもうた世界。
その世界に住んでいたのは天使と悪魔と魔を司る生き物たち。
安寧の彼方へと続くと思われたその世界を脅かしたのはやはりヒトだった。
天使と悪魔、魔を司る生き物たちは神から新たな法を授かりヒトの脅威を退けた。
その中心となった者たちを四戒門と呼び称えた。
四戒門の四柱は「火」、「光」、「創造と破壊」、「智」をもってヒトを退けた。
そして、エイディンには再び平和が訪れた。
平和な世を続けていくために天使は一つの国を作り、悪魔は三つに別れた。魔を司る生き物の中で知ある魔獣は森に集い、互いを支え合い生きてきた。
これが、この世界の常識だ。
「どー思う?」
俺は隣に佇むヒト型にんげんメイド ハルに問いかける。
「それはどういった意味での質問でしょうか?」
ハルは窓のそとをなんとなく眺めている。
「もー、ハルは意地悪だなぁ。ヒトとしてこの歴史をどう思っているのかって話」
俺はすっかり自分で文字の読み書きができるレベルになった。
そして、ハルは俺専属のメイドとなっている。
「お答えしかねます。」
窓から射す光で黒い髪が少し茶色がかる。
ハルはヒトだ。
この世界ではその歴史からヒトは好まれてはいない。
しかし、神器と呼ばれる武器の元に人々は集い、三つの国家を作り上げた。
その一国のお姫様がハルだ。
ついでに、我がスフェール家は四戒門が一柱「智のサルマージ」の末裔の分家だ。
分家。ここ割りと重要。
まぁ、俺の家の話は今はいいだろう。
「それはカグヤ皇国第三皇女としてだよね?ハル個人としては?」
俺の質問にハルは少し困った顔を作る。
「過去の禍根を現代に引き継ぐのは仕方のないことかもしれません。しかし、お互いためにも、歩み寄る時代がくることを願います」
どこの外交文章だよ!
前世ではただの平民だった俺には、この答えが何点なのかはわからない。
しかし、すんげー気を遣われてるのだけは分かる。
普通にただの質問なんだけどなー。
「オーカ!またハルを困らせて!」
ふと声のする方を見るとそこにはピンクの髪が見えた。
「ナナカねーさま。別に俺はそんなつもりじゃなかったんだけどなぁ」
気づいてはいたが、姉のナナカが部屋に入ってきていた。
「ほら、お勉強もいいけど、もうお昼だよ。早くお父様のとこに行かないと」
もうそんな時間か。いやなものの訪れとはかくも早きものか。
「ごめんハル、ほんとにそんなつもりじゃなかったんだ。夕方にまたお勉強付き合ってね」
俺はハルに謝りつつ部屋を出ようとする。
「オーカ様」
後ろからハルの声が聞こえる。その必要はないが、俺は振り返りハルと目を合わす。
「いつもお気遣い頂きありがとうございます。いってらっしゃいませ」
気を遣ってるのはそっちだろ?とは言えなかった。
だってそれがハルの本心からの言葉だと俺には分かったからである。
「うん。行ってくるよ」
そして俺は屋敷の地下へと向かった。
「おう、オーカ!やっと来たか!」
地下牢獄。ここには最大で120名の奴隷を収納できる。
そして、その通路で父 レーベンが悠然と立っている。
その隣には副官 ミグルラ。四つの腕を持つ男。
「父上、おそくなりました」
俺は父に向かって頭を下げる。このあたりも全世界共通なのか。
いや、前世でも海外ではお辞儀はしなかった気がする。
今となっては調べようもないが。
「んじゃ、さっそく頼むわ」
父は全く気にすることなく俺に一振りの刀を手渡してくる。
父の仕事は簡単に言うと奴隷商人のようなものだ。
「ねぇ、父上。何度も聞くけど、この職業って必要なの?」
俺はこれで何度目か分からない同じ質問を父にする。
「オーカ、またかよ。こいつらは野良のヒュルムだぞ?!放っておいたらそのうち国を脅かす。ほら、ささっとやっちまえ」
いつもと同じ答え。まぁ、仕方ない。
俺は渡された刀を持って牢獄の一つへと足を踏み入れる。
中には5人のヒト。一人はまだ幼い少女だ。
その十の瞳は怯えきった眼差しで俺を見る。
俺は意を決して刀を正眼に構える。
「我が意思に従え。【パニクテ】」
振りかざした刀の先から光が放たれ、5人の前ではじける。
そのまま5人はバタリと地に伏せた。
あ、もちろん死んだわけじゃないよ。
彼らは皆眠っているだけだ。そして、目覚めたときにはこの刀を持っている人物に従う。
そういう魔法をかけたのだ。
神がエイディンの民「エデム」に与えた新たな法。それは魔法。
そして、ヒト「ヒュルム」はこの世界の理として魔法適性・魔法耐性が生身ではごく一部を除いてゼロである。
父の仕事は国に属さないヒトを探し捕らえ、主従魔法をかけて出荷するというものだ。
あぁ、せめて悪の魔王とかのほうがよっぽどよかった。
何が悲しくて会社の奴隷だった俺が、悪魔の奴隷を作る作業に加担しなくちゃならないんだ。
しかし残念ながら、俺は父との勝負に敗れた。だから従うしかないのだ。
せいぜい俺にできることといえば、彼らの「品質向上」という名目でお腹のすかない程度の食料を与えることを提案することぐらいだった。
正直一時の突発的な衝動でこの世界に来てしまったことを、若干後悔しかけている。
ああぁ、今は亡きオタク新人に言ってやりたい。
異世界にチートもハーレムもねーよ!