八話 元社畜は異世界デスマーチの夢を見るか?
神は世界を六日で創り七日目に休んだ。
邪悪に唆された神の人形「土」と「生命」は、衣のみを与えられ楽園を追放される。
神はその後、楽園を人の踏み入ることのできない場所へと隠し、さらに新たな土地と生命、新たな法則を創った。
そして、楽園には天使たちと新たな生命が過ごす平和な世界となった。
しかし、人は塔を築き楽園を目指した。
神はその姿を見てこう言った。
「なるほど、彼らは一つの民で、一つの言葉を話している。これは彼らが自ずと始めたものだが、やり遂げられないこともあるまい。ならば、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」
神は人の言語をばらばらにし、再び楽園への入り口を閉じた。
だが人は、三度神へと歯向かう。
人は神の言葉を盗み、東の端に楽園への入り口を開いた。
楽園へと入った人は、楽園の生命を奪い合った。
楽園の生命の遺骸から武器を作り、さらに楽園の生命と人の命を奪った。
神は悲しみ新たな法則を創る。
「彼らには翼を与えぬ。彼らには選択と縛法を与える」
そして、楽園の生命は法を打ち破る「魔法」が与えられた。
人は今尚東の隙間からやってくる。
ピンクのツーサイドアップをふりふり揺らしながら姉のナナカが、俺に絵本を読んでくれる。
俺は前世で見た古事記の絵本を思い出す。
こちらにも同じような絵本があるようだ。
この絵本、題名を「創期世伝」という。
古事記や聖書と同じようにどこまで信憑性があるのかいささか疑問は残る。
それでも、前世とこの異世界を結ぶ記述に溢れている点は無視できない。
ふむ、興味深いな。
海外でアニメ化する時に色々問題になりますよ。
と、どこからか声がしような気がした。
でも、驚いたな。
この話を信用するなら、俺はおそらく天使や悪魔といったものに生まれ変わったらしい。
見た目から言って、前世の基準では悪魔だろうけど。
ぷるぷる、ぼくわるいアクマじゃないよう。
「ナナカねーさま、ありがとう!」
俺はピンク髪の姉に丁寧にお礼を言う。
そう、俺も普通に言葉がしゃべれる年齢になった。
どうやらこの世界の基準ではだいぶ早いようだが、そこはあくまで悪魔。
いろいろな個体がいるようだ。優秀程度にしか周りからは思われていない。
「はーい、ちゃんとお礼言えてえらいですねー」
ニコニコと頭を撫でてくれる。
こういったものはどの世界でも一緒のようだ。
まぁ、前世では俺の方が幾ばくか年上だった。
しかし、ずっと姉と弟という関係で付き合ってきたのでこういったものに違和感は感じない。
俺の言葉遣いもかなり幼さがあるが、まだまだ覚えている最中なのでこんなものだろう。
「もー、またナナカばかっかりオーカを一人占めしてる」
後ろからの声と共にジト目の姉 アルカが俺に抱きついてくる。
「アルカちゃんも一緒に絵本読む?」
俺は抱きつかれたまま体をアルカの方へと向けて、姉の顔を見上げる。
「それはとてもとても、魅力的なお誘いです。けれどオーカ、お父様が呼んでるので探しにきました」
うわー、マジかー。やだなー。
俺の気持ちが顔に出たのかアルカがそのまま俺を抱っこして持ち上げる。
「ダメですよ。お父様の仕事を見て学ぶのもあなたの大事な勉強です」
そういって部屋を連れ出され、廊下へと出る。
ここ一年ほどで、俺のこの世界に対する認識は少し変わった。
この世界は俺が思っていたよりもほんの少し優しくない部分があった。
アルカに抱えられ連れてこられたのは屋敷の地下。
そこには延々と続く牢獄。
その中にいるのは人間。人間。人間。
「よう、オーカ。ちゃんと見ていけよ」
そう言って父 レーベンは笑顔のままに近くにいた人間を新たに牢獄へとぶち込んだ。
そう、我がお父上は簡単に言えば奴隷商人だったのだ。
社畜が送る異世界奴隷行軍のすすめ
ここに開演します。
一章完結です。
次回から幼年期編を書いていこうと思います。
可能な限り書き進めますが、もしかしたら多少構想練る時間必要かもです。
詳しくはtwitterチェックしてください。
神の台詞は読みづらいですがご容赦を、原文に近づけたかったので。
CV諏訪部順一さんで脳内再生頂くと意外と味がでます。笑