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社畜が送る異世界デスマーチのすすめ  作者: Maskwell
序章 転生の経緯を説明するよ!
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プロローグ 俺という人間を知ってね!

まずは言い訳からさせてほしい。ほんの出来心だったんだ。


俺はここ数日に及ぶ残業の連続で疲労困憊していた。


そんな俺が息抜きと現実逃避がてら1時間と25分に及ぶネットサーフィンの結果、エレベーターを使った異世界転生方法を試みるに至ったのは至極当然といえよう。


俺の思考がまるで理解できない人は、一種の呪いか運命の悪戯だと思って欲しい。




そう、これは呪いだ。


大学卒業と共に入った中堅企業。中小・零細企業相手にシステムを導入する会社で、俺は若手からようやく抜け出し四年目を迎えた。


システム会社にしてはブラックではないが、月に2回ほどは終電で帰り、運が悪ければその内一回は徹夜になる。


そう、運もわるかった。四半期締めのクソ忙しい時期に新人が発注ミスをした。


更に運の悪いことにそいつは俺が教育担当として受け持っていた奴だった。


専門学校卒の新人はまさに、絵に描いたような所謂「オタク」だった。


だらしなく脂ぎった顏に似合わないウエリントン型の眼鏡。普段はぼそぼそと覇気がないかと思えば、アニメやラノベの話になるとまるで別人のように熱を帯びる言葉と瞳。


まぁ、アニメやラノベは大学時代にそれなりに嗜んだので別に偏見はない。


しかし、俺は正直こいつが苦手だった。隣のチームに配属された顔面偏差値51くらいのテキパキと働く新人女子と見比べては、上司からの嫌がらせかと真剣に悩む日々だった。




そして俺の運命分岐点。一週間前のあの日である。


客からの発注の電話を件のオタク新人が取ったのが全ての始まりだった。


発注業務自体は何度もやらせており、もう大丈夫だと思っていた矢先の出来事だった。


俺が普段通りに出社するとチームが騒然となっていた。嫌な予感が脳裏をよぎると同時に、先輩社員が会議室で待機するよう俺とオタク新人に指示を出した。


そこで俺はことの経緯を聞かされた。


俺は上司から監督責任と後輩とのコミュニケーション不足を咎められた。


その後、朝からその日の予定を全てキャンセルし、納品先と仕入先へとオタク新人と共に謝罪に向かったのだった。


納品先の社長は冷静だった。


俺は正直に今回のミスが起きた経緯と、再発防止の策を説明した。


こまめに顔を出していた甲斐あってか、受注自体がキャンセルになることはなかった。


そのまま急ぎで仕入先へと車を走らせた。


仕入先の担当は年配の女性で、ミスについてのお小言と共に俺に彼女が長らくいないことを聞くとそれについて2時間程根掘り葉掘り聞かれた。


お昼の鐘と共に解放されるかと思いきや昼食を一緒に取ろうという提案をされ、俺が上手い言い訳を口にする前に隣に座っていたオタク新人が「はい!」と勢いよく答えていた。




結局、先方を出たのはそこから更に1時間後の13時半。


俺が運転する車の中で、オタ新人は所在無さげにしていた。気を効かせたつもりで最近のアニメの流行りが何なのかを聞いたのがいけなかった。


今一番熱いのは「異世界」ものですね!と鼻の穴を膨らませて言う新人の顏と共に、そのあとに続く言葉を思い出した。


「異世界ものっていうのはファンタジーでありながら、我々に残され唯一のリアリティなんですよ!」とのこと。


なんでも、ネット上では異世界に行った人物は意外と多く、近年の失踪事件の件数もその事実裏付けてるとか。


俺は新人の話を半分聞き流しながら、どうリスケを行うかを必死で考えていた。




そこからはもう地獄の毎日だった。


それでなくても発注ミスの立て直しに必死になっている俺にさらなる不幸が舞い降りる。


オタク新人が担当している物件全てを、俺がメインで受け持つことになったのだ。




そう、オタ新人は会社を辞めた。

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