閑話:神の独り言
私は輪廻を司る神の一角です。
最近我々の問題が一つ消えました。
消してくれたのはエルというまだ十五歳の若者でした。
彼は文字通り、命と引き換えに『魔王』もといデボルグロードを打倒してくれました。
ここで少しデボルグロードの話をしましょう。
デボルグロードは輪廻の神の間では知らぬ者のない神術の使い手でした。
ですが奴は次第に力を求めるようになっていきました。
そして元は我々の同士でもあった奴は、元々持っていた神気に加え、邪神の持つ邪神気をも得んとしたのです。
邪神気を得るには、神を殺し、その死体を用いて儀式を行う必要があります。
しかし、あろうことか奴は躊躇いもせず同族を手にかけたのです。
結果奴は神気、邪神気を併せ持つ『魔王』となったのです。
ただでさえ我々の中で頭一つ抜きんでていたデボルグロードは、もはや手の付けようがなくなっていました。
苦肉の策として地上に堕としたのだが、奴は『魔王』となり君臨したのです。
そうして手を拱いていた我々に朗報……とは言い切れない知らせが届きました。
それがエルとデボルグロードの相打ちというものでした。
彼には感謝しています。
そこで彼には新しい人生をおくってもらうことにしました。
彼を天界へ呼び出し、提案してみたところ喜んでいたようで良かったです。
ですが彼が転生した先の『地球』という星には……彼も難儀な、いえ数奇な運命に導かれているようです。
それにこの『地球』には次元の穴が開いていますね。
事が大きくなるのは彼が生まれて十数年後……どうなるのでしょうか?
フフフッ暫く眺めていても罰は当たらないでしょう。
なにせ私たちにとっては瞬きをするよりも短いのですから。