始動
「みんな起きたな!」
いつもみんなが起きるより早く、俺はリビングにて仁王立ちし、皆が集合するのをまっていた。
最初に起きてきたのがルナ、つぎにるん、そのつぎにリコルノ最後は案の定昨日夜更かしをしていたキュリアだった。
昨日はあれだけはりきって国をつくるとか大それたことを言い放ったが、ぶっちゃけ今の俺がそんな非現実なことができるほどカリスマ性や実力を持っているとは思えない。
というわけで、とりあえず上位種の住処に突撃して仲良くなればいいと考えたのだ。国なんて勢力がでかくなるまではつくれっこない。
ただ、ただでさえ人里を離れてひそかにくらしているところが多い上位種たちだ。簡単に見つかるわけないし、顔を合わせてくれるとは思えん。
とりあえずみんなに上位種を探したいということだけを伝えると、近くで一番温厚な種族から探そうということになった。るんるんに最初の情報集めを任せると、仲間の狼による探索が行われた。
みんなでの話し合いはすぐに終わり、キュリアはリコルノにとびつきなぞのじゃれあいをはじめる。るんるんは先ほど伝えた上位種捜索に集中しているのか、椅子に座ったままうぅーっと唸っていた。
るんるんの様子をしばらく見ていたが、思っていたより捜査は難航しているのかるんるんの表情はずっと険しいままだ。
「む、無理はしないでくださいね。上位種のことを第一に考えるのは立派ですけど、自分の体が一番ですから」
俺がやけに張り切っているのが伝わったのか、ルナは心底心配そうな表情をしたままお茶を渡してきた。俺は軽く頭を下げてそれを受け取ると、湯気が立っているのに気づき、やけどしないよう慎重に啜る。
だが思ったより熱く「あちっ!!」と声を上げて赤くなった舌を冷やそうと外に出した。
そんな様子をるんるんは情けないなと言いたげな目で俺のほうを見ていた。
俺だって別に猫舌というほど熱いのが苦手ってわけではないんだ、たぶん。これが思ったより熱かっただけ。それだけのはず。
「上位種の捜索をはじめるってことは、いずれキューちゃんの故郷にも顔をだす……、ということでしょうか」
「ああ、すぐにってわけにはいかないだろうけど、避けては通れない道だろうな。実際、上位種の中でも権力あるほうだろ、こいつんとこ」
まあこれに関しちゃ俺の何となくの予想でしかないんだけど、ドラゴンってさ、やっぱ強いじゃんね。
ルナが心配しているのはそんな強い弱いの問題じゃなく、キュリア自身の問題、それとドラゴンは人間に対し強い嫌悪感を抱いてるってとこにあるんだろうけど。
「上位種たちと関係がよくなっていけば、キューちゃんとこの考えもかわってくるかもしれない。まずは行動、やってみてだめだったら次を考えればいい、一発勝負ってわけでもないんだから」
「……そうですね」
ルナはまだ不安な気持ちの方が強いのか、肯定はするも乗り気ではないようだ。
とくに何か思ったわけではないが、二人してリコルノと戯れているキュリアの方へ目線を向ける。
リコルノの眼鏡をそーっと外すと、それを自分の耳にかけ、リコルノに「にあう?」と謎のドヤ顔で語りかけていた。だが、度が合わないせいかすぐに外し、気持ち悪そうな表情をしながらリコルノに眼鏡を返していた。
「キューにはまだはやい。これはリコくらいおとなになってから」
「単純に目が悪いだけだろ」
ドヤ顔でキュリアに勝ち誇った表情をするリコルノに居ても立っても居られず、ついツッコミを入れてしまった。
そんな俺に対し「ミズキも眼鏡かけてないからリコより子供!」とビシっと指を指してくるリコルノ。
眼鏡は年齢を測る道具ではない。
俺はそんなリコルノに苦笑しつつも、立ち上がり、旅の支度を始めようと準備を始めた。
長旅になるだろうから、とりあえず保存のきく食料がないか探しに行く。
そんな様子をルナは察したのか、保存の効きそうな食べ物をいくつか持ってきてそれを俺に差し出した。
「一人で……、いくんですか?」
「いや、行きたい奴ら全員連れてくけど。俺一人はちょっと……」
「一人で準備始めるから、そのまま黙って出て行くのかと思いましたよ」
一人で準備を始めたのは、キュリアやリコルノに手伝わせたら絶対荷物多くなるし、ルナに言うにもこっそり言わないと絶対あいつら参戦してくるし。
俺がリコルノとキュリアの方をじーっと見ながら準備を続けていると、何となく俺の思ってる事がわかったのか、ルナはふふっと笑みを浮かべそのまま俺の作業を手伝った。
今思えば、こんな近くで隣にいるのに、ルナに対して何も拒否反応をとらなくなった。いや、なんだか安心するようになった気がする。
まあ……、あれだけ色々あって一緒にいて、当たり前なんだろうけど。改めて考えると俺が恐怖症もちだってのも忘れてしまいそうというか、忘れられるならさっさと忘れろって感じだけども。
「まだ、心許せるのはルナだけなんだよなぁ」
「ッ……!?!?ふぇ!?!」
ルナが急に顔を真っ赤にして俺の方は振り返る。そんなルナの様子を見て今のが口に出ていたのに気がつき、俺の顔もだんだん真っ赤に染まっていった。
目があった瞬間、二人ともすぐにお互いの目線を外す。
まさか口に出ているとは思わなかった。いや、そもそもルナが近くにいるときにあんなこと考えてたのがバカだった。なんか意味深みたいに捉えられると気まずい。最悪だ……。
「今のは……忘れてくれ……」
「は、はい……」
お互い顔真っ赤な状態で会話を続ける。
あらかた旅の準備を整えると、リビングの方へ戻った。できるだけ近くからとるんるんには伝えてあるし、5日分くらいの用意をしとけばとりあえず大丈夫だろう。
帰ってすぐるんるんに「集中してるのわかんだろ。いやでもご主人様の声入ってくんだよバカ!」と顔真っ赤で言われ、全部聞かれてたのだと思うと、俺はまた耳の先まで真っ赤になった。




