Let's play tag Execution ground!
無駄無駄。
逃げようとしても追うんだから。
ほーら。そっちは行き止まりよ?
僕は青年の前にふっと姿を現した。
青年は勿論きょとんとしている。
状況の把握が間に合わないんだろう。
僕は少年と話をつけておいた。
「今回は鬼ごっこ...といっても一方通行だけどね。逃げる方も殺す方も。そして逃げる道も」
僕は緑玉髄のナイフを持って青年の出方を窺う。
青年はやっと状況を把握した。
まず殺したはずの僕が目の前に居る事。
そしてその僕が今、復讐に来ている事。
どうやって逃げようか錯綜している事。
青年自身も計画があったのだろう。
それは僕も一緒だ。
青年は口が震えて声が出せてない。
しかし表情からして命乞いをしていることが良く解る。
僕は今か今かと待ち望んでいる。
その時だ。
紅い絨毯を蹴り上げ青年は長い永い廊下を走った。
僕は歩いていた。出来るだけ歩幅は狭く。
数分後後ろから足音が聞こえてくる。
そう、此処は無限回廊なのだ。
階段に目を着けない限り、扉に乞いしない限り、あるいは。
足音が止まる。
背後には青年が息を切らせている。
今にでも殺せる。
だが殺さずにいた。
最期の命乞いを聞いてやろう、というわけではない。
息が戻ったのか青年はまた走りだそうとする。
無駄なのに。
しかし数十分経っても足音がすることはなかった。
僕は三階へと上がった。
それぞれの部屋を見たが居ない。
四階にも居ない。
一階にも居ない。
聡明さは此処で発揮するのか。
しかし外を見ればそんなのは無意味だ。
逃がしはしない。
僕は扉に鍵を掛けた。
もう青年は死への道しかない。
逃げ切れると思っているのか。
そこは莫迦だ。正直ともいう。
広い草原を駆けまわる小柄な犠牲者。
それを追いかける僕。
いつの間にか日は傾いていた。
夕陽に照らされ緑玉髄のナイフは輝いている。
島ギリギリを周る青年。
踏み外しを狙っているのだろうか。
残念だがそれは無駄な計画と相成った。
大体20週したくらいか。
青年に疲労が見えてきた。
同時に僕も疲れてきた。
もう星の輝きが綺麗な時間だ。
波の無い海に何か音がしたような気がしたが気にすることはなかった。
青年は疲れ切り扉の前に座っている。
最も視力が高い僕にはそれが見える。
開いていない。
僕は静かに歩みを始める。
一歩。
二歩。
三歩。
四歩。
五歩。
六歩。
僕は緑玉髄のナイフで青年を刺した。
もう息はない。
そして僕は気付く。
鍵が無い。
あのときだったか?落としたのは。
しかし合鍵ならある。
やはり僕は用意周到だ。




