閉幕術式
全く馬鹿げている。
あの二人は何がしたいのか。
あんだけ掌で踊らされたんだ。僕だって少しぐらい叛逆してやる。
僕はいつも通り寝室へ戻ろうとした。
只戻れたかどうかは想像に易い。
少年から貰った今回の計画書。
昨日に似た磔。ただ今回は釘で装飾するらしいのだ。
僕は眠かった。今にでも深い眠りにつけそうだ。
心配なんて要らない。
もうみんな寝てるさ。もう3時だ。
少しぐらい壁に寄り掛かっても...
あの窓を揺らす暴風が島全体を取り囲んでいた。
僕はそれに目を覚まされた。
壁の時計は10時を指している。朝飯でも食いに行こう。
質素な朝飯は変わらない。
別に嫌いではない。どうせだからだ。
そして食べ終わった後気付く。
あの計画書がない。
確かに右ポケットに入れた筈だ。左にもない。
僕は急いで寝てしまった廊下へ戻った。
やはりない。
僕は愚かだった。
浅墓だった。
注意力が無かったんだ。
でも誰に盗られたんだろう?
少年なら...って盗るはずないか。まぁ行ってみる価値はあるな。
「-------計画書をなくした?そりゃ大変だ。今すぐ館中の人を呼び集め糾弾しよう」
少年はこう言った。これじゃ逆効果だ。僕はいつも通り美しい案を出した。
「-------それはいい考えだ。そりゃそうだ。怪しまれる」
少年でも納得が出来た単純な案だ。
昼飯の時間。
僕は朝飯で充分、少年は先に済ませておいた。
犠牲者達が質素な飯を貪っている今だ。
僕らは手分けをしてそれぞれの部屋へ行った。
僕の計画書を盗るくらいだからどうせ持ってんだろうと思ったが3番目の部屋の6番目の引き出し、3枚連なった紙の1枚目にそれはあった。
僕は颯爽に部屋を出て少年のもとへ向かった。
今日の夜は打ち上げでもしようとの提案だが生憎そんな豪華なモノはない。
夕方。風は弱まるどころか次第に強くなっていく。
雨が降らない分怖いのだが。吹き荒ぶ風を見届けるように陽は没して行く。
さぁ磔刑の時間だ。
目標はあの青年。眼鏡をかけた学力の良さそうな奴だ。
クラス内学力は下から数えて13番目だが。
睡眠剤を混ぜておいたので今深い眠りについてるだろう。
昨日の僕と同じように警戒心など皆無だ。
計画書は此処から見つかったわけではないので心配は御無用だ。
僕は準備に行った。釘やら磔刑台やらを部屋に持ち込む。
青年は寝ている。睡眠とは最大の恐怖と癒しなのだ。
少年は照明の準備をしている。鬼火を模したニューモデルらしい。
僕は青年の首を斬ろうとした。
だが真っ赤な血が出てくるべきところを間違えている。
青年は微笑んでいる。まるで昨日眠りこけた僕を嘲笑うように。
僕は生命活動が終わるその瞬間まで青年を睨んだ。
青年はまだ笑っている。
彼が瞬きするよりも僕は先に目を閉じた。




