囚人楽園
感情を失うことこんなに気楽だったのか?
美しさという感情だけで生きていけるではないか。
僕は生きてるとしても生きているかは分からないのだが...。
まだ僕は14だっていうのに幼いんだな。
感情に縋り生きていこう。
そして...
僕は転寝をしていた。
折角の夜なのに勿体無い。
そして思い出したかのように外を見る。
美しかった穹には黒い雲が覆っている。
これまた美しい。あの雲に入れば冷ややかな結晶に包まれるんだろう。
そのまま堕ちて...。
僕は粉々に血を撒き散らして、ね?
もしかしたら海かもしれない。粉々になって魚の餌だ。
自然に戻るのかもしれない。
そんな想像をしている内に時計の針は6をさした。
しかしそれは長針である。短針は未だ3だ。
暇だから僕はまた寝ようとした。
なんて美しいんだろう。頭上には首を吊れるように仕組まれたかのようにアーチ状の棒があるじゃないか。
一階の倉庫に行けばロープなんて...。
僕は目覚めた。長針は3、短針は9だ。
目覚めたのも強い風の所為だ。
波は荒れ草は棚引く。
しかし窓は揺れない。音もしない。
それより嫌なのは魚を釣れないことだ。
折角の名案も考えればすぐ無に帰される。
朝飯でも食べに降りるか。
それより少年の部屋へ行きたい。
僕は外へ出た。もうどこにも棺はない。
あったらあったで可笑しいが。
少年なら「奇術だ」と言うだろうな。
館へ戻り食堂へ行くと皆の姿はなかった。
大体8時に済ますもの。今は10時。
ラップに包まれた皿を開放するとやはり質素なご飯と卵焼きがあった。
醤油ならあるし充分だろう。
いつも通りなんだけどいつも通りではない日常は楽しいものだ。
そして僕は少年の部屋へ向かう。
また「奇術」でも見せてくれるんだろう。あれは素直に素晴らしいと思える。
とて、今日はお嬢様風情の少女か。
9回ノックし扉を開ける。
少年は待ってましたばかりに頷き今回の演出を教えてくれた。
僕は言われたとおりに少女の部屋へ行く。
2回ノックし声をかける。
少女は間もなく扉を開けた。
全く警戒心のない奴だ。
そしてまんまと引っ掛かる。
罠という言葉を知らないのか?厳しいという名の甘えに頼り過ぎた結果だ。
程々にしとかなければね。
少女を「見せたいものがある」といい少年の部屋の前に立たせて僕は少年の部屋に入る。
少年はもう準備出来ていた。
「あの人は紅茶が好きだ、これを飲ませて差し上げろ。くれぐれも緊張しないようにね」
そう言って紅茶を渡された。これまた美しい。
僕は早速少女に渡そうとした。
全くだ。豪華な家庭は高級茶葉と嘘をつけば騙されるのか。
そしてまた僕は少年の部屋戻る。
廊下で音がした。何か倒れるような。
少年は支柱みたいなものを用意した。
吊るせるタイプだ。
それを持って廊下へ出る。
彼女は倒れており、息はない。
少年はロープで首の部分を吊り下げ支柱みたいなものに括りつける。
お嬢様風情故外見はひとっつも穢れてない。
これで残りは6人か。
風が鳴りやまないし、退屈することはないだろう。
少女の屍は倉庫へ納められた。
豪華過ぎた故哀しくもある。
後はどうでも良い日常だ。
昼飯を食べ夜飯を食べ風呂へ浸かり寝る。
わざわざ記さなくても良いだろう。




