獄楽円舞
少年の言うとおりにしてたら気が狂ってしまいそうだ。
少年は緻密な風貌を持ってるけど単純なのだ。
単純な殺害、ねぇ。
彼が死んだことはすぐさま皆に伝わらなかった。
草原にぽつり置かれた棺には誰も気付かない、いや気付けないのかもしれない。
コントラストが美しいのになぜ気付かないのか?
皆引き籠もってるのか。
まぁ気付けずに居るなら、そうだろう。
それこそ面白い。
さて昼飯の時間だ。
引き籠もってばっかりな奴らにはとっておきの料理を出そう。
僕と少年は同じことを思っていた。
いやはや7人分には少な過ぎるか。
棺を一瞥し踵を返した。
昼食は7人には艶やかな緋色をした料理を、僕たちはもう済ましたと嘘をつき
部屋に戻った。
乾パンで我慢しよう。
次はどうするか?
誰を狙おう。
少年は賽を振った。
それぞれの部屋を記した紙の上に賽が投げられた。
次はあの少女だ。お嬢様っぽい傲慢な人だ。
少年はまた賽を振った。
今度は演出の仕方だ。僕にはそれを伝えることはなかった。
ただ少年は少し笑みを浮かべていた。十八番なのかもしれない。
またまた暇な時間だ。
何かして暇潰しをしたい。
そうだ、あの坊やの部屋へ行こう。
坊やは寝ていた。
今にでも殺せそう...って僕はいつの間にこんな感性になってしまったのか。
途中で違えてしまったのか?少し自由だったし。
そして暇潰しすら機能をしてないみたいなので僕は部屋へ戻った。
それから3時間くらいか。
ずっと窓際で立っていた。快晴の空が徐々に赤みを帯び蒼と赤の境界を作る。
やがて空は赤に染まり、そして冥く、輝いてゆく。
夜飯の時間か?もう20時だ。
昼飯は特別だったんだけど夜飯は質素に食パンでも焼いておこう。
そういえば此処は島だ。
絶海の孤島だし助けは来ない。
釣りでもして魚が釣れれば質素な飯からおさらばだ。
暇つぶしにもなる。
一竿二嬉だ。
余りにも嬉しくて僕はついついコンビーフの缶を開けてしまった。
夜飯に出すか。
トーストに苺ジャムに卵焼き、なけなしのコンビーフ。
悪くはないかな。
ただ優雅に味わえる。
僕はお嬢様気取りの少女を見た。
偶然か必然か少女も同時にこっちを見た。
僕はすぐさま視線を降ろしたが少女からの視線を感じる。
皿を片づけ、僕は珈琲を用意する。
折角だからここであの彼の話でもしてやろうか。
なんて。
僕は断然無糖派だ。少年は微糖派らしいが。
あの苦味がそそるんだが。
それぞれ部屋に戻った。
僕は皿の片づけがあると独りで皿洗いをしていた。
親の見える場所ですればこれで100円なり稼げたっけな。
もう金すらどうでもよくなったが。
皿を洗った後、僕は夜歩きをした。
あれ?此処にある棺は何処へいったのだろうか?
血もない...って少し草に着いてるから誰かが持って行ったか?
少年の部屋に行ってみよう。
ノックを3回程度。そして一言断わって入る。
声がしない。音がしない。少年がいない。
そしてあの日のように少年は後ろへ居た。
奇術と言うらしいが僕にはそっちには詳しくない。
明日は嵐とのこと。
唐突すぎないか?流石に。
偶発的にしては仕組まれている。
僕がそう思ったのは少年のノートを見てしまったからだと思う。
そして僕はこれまでの感情を捨てた。
唯一、美しさを残し。




