終焉を招く舟-幻想-
あの情報通が居なければ僕たちは未だ殺人サーカスを繰り広げていただろう。
しかしその情報通もそれまでだ。
三人は何を想ったか島の端へ行き舟を待とうとしている。
まだあいつ等は人間だったのか。
その舟がお前らを助けるとは確定してないだろうに。
僕らは食堂へ降りた。
案の定銃はなかった。
これではどちらかが奪おうにも相手は三人だ。1人の犠牲を出すことになる。
それは最悪の事態のことだ。余り使いたくないが運が味方するならってものだ。
陽は少しずつ傾き始めている。
時間はないだろう。あいつ等は戻ってこない。
食料を持って出ている。
盲点だ。あいつ等は未だ警戒心を忘れて無かった。
あれが人だ。
見せつけられた。
日が経つことが死へのカウントダウンを悟っていたのだ。
誰が銃を持っているか分からない。
三人の内1人であることはまず確定していいだろう。
そもそも今回何故このような事を開いたのか。
理由はない。
答えろと言われても無理だ。答えが無い。
無理矢理模索されても何一つ納得しないだろう。
適当に返事すれば開放される、そうでもなさそうだし。
そもそも僕はこの楽園で終えるつもりだ。
考えている内に空が紅く染まっている。
もう時間はない。
このまま星々が輝き始めあの三人は本土へ。
僕らは取り残されるだろう。
もし三人に僕の生を告げたら祝福されるだろうか?
僕は考えても無駄だと悟り少年の部屋へ向かった。
しかしそこで待っていたのはいつもの少年ではなかった。
生気を失った眼。
身体には全くの力が入っておらず重く頭を垂れている。
両端には燭台が置かれ、薄暗い部屋を仄かに照らす。
最後の頼みの綱である少年すらもう息をしていない。
そうなるともう、本当の最後の手段を選ぶしかない。
空には望月が浮かび星々が煌めいている。
望月に照らされた海は儚く小波を立てていた。
僕はここに墓標を立てた。
これまで殺した人の名前を淡々と書き連ねた。
そして僕はこの“殺人サーカス”の全貌を事細かく書いた紙を封に閉じそっと置いた。
さあ後片付けの時間だ。
あの三人を殺す。
そして僕は地から離れる。
実は銃は予備が一つある。
ああ!なんて僕は用意周到なんだろう!
こんな愚か者たちを裁ける僕はなんて素晴らしいんだろう!
この時間が永遠に続けば僕だって飽きること無いのに!
ああ!この引き金を引けばもう終わりだ!
1人倒れまた1人!血を地に刻みながら伏すんだろうな!
何故此処まで来て予備を察知しないのだ!
最後の最後で抜かすお前らは本当の愚か者ではないか!
終わりだ!何もかも!
僕は狙いを定め一発。
1人の額を貫いた。
彼らは僕らに銃口を向けたがすぐに降ろした。
僕にとってはこんなのごっこ遊びにしか過ぎない!
レプリカにしては流石に再現率が高い!
大金を叩いて買った分だけある。
僕は大胆に近寄り二人を刺した。
そして三人を串刺しにし島の端へ立てた。
旗みたいじゃないか。これで舟も来やすくなるだろうな。
僕は部屋戻り追記した。
そして今から起こることを書き僕はまた封を閉じた。
椅子の下に画鋲を散りばめ燭台に火をつける。
椅子の上に立ち首にロープを巻く。
天井にあるその窪みはひっかけるのに最適だ。
そして僕は椅子を蹴る。
これでもうここには“人間”は居ない。
そして誰もいなくなった。




