それは楽しい愉しい夜会だった
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9人はまずそれぞれの部屋へ行き支度をすませた。
僕以外だれも気付いていないようだが皆には黙っておこう。
さてそろそろ夜食の時間だ。
食事を告げるその音は屋敷中を響いた。
階段の方から音がする。
さて9人をどう並べようか。
「あら、意外と広い食堂ね」
一人の少女が独り言にように言った。
その声も食堂に響く。
「お前一人でこんな量作ったのか?」
少年がそう呟くもんだからもっとも無口な僕は頷いた。
夜食は皆同じだが好き嫌いもあったりして共有して皆食べていた。
僕はそれを無言で見ていた。もっとも警戒心の強い僕は先に夜食を済ませておいたんだ。
皆は気にせず食べていた。美味しいだの言って盛り上げようとしている感じがひしひしと伝わった。
夜食終盤。僕は珈琲を持ってくることにした。
皆はたらふく食べて動こうとしない。僕は厨房へ向かった。
生温い感情が伝った。僕は操られように14番目の引き出しを開け
白い粉と珈琲の粉末を取り出した。
ここでもっとも発想力が豊かな僕は10カップの内、一つだけ白い粉を入れて、後は珈琲で誤魔化した。
その珈琲の味見をしたが何ら変わりはなかった。
それぞれ好きな珈琲をどうぞ、と机に置いた。
夜食のお陰で警戒すること無くみんなは適当に飲んでいた。
僕だって柔じゃない。
白い粉を入れた珈琲のカップには少し印を付けていた。
皿を提げると言う名目で皆のカップを見て回ったが印がない。
そこで冷や汗が出た。
自分の場所まで戻り珈琲カップを見てみたら印が付いていたんだ。
僕は皿を洗いながら厨房に伏した。
皆が駆け寄る。
まだ意識があるのだろうか。
「大丈夫か?」「水を飲ませろ」と少年少女は口ぐちに焦る。
僕はにやけがとまらなかったが水を運んでもらう時は苦しそうな顔を作った。
あらあらそのカップ、印が付いてないじゃない。
他の人と間接接吻は嫌よ。
冗談っぽいが本当だ。ただこいつらを騙すなら、しょうがないと水を啜った。
一人の勘の良い少女が気付いた。
「あら?このカップ印がついてるわよ」
「印が原因なのか?」
強ち間違ってはいない。
印が原因である。騙しの。
僕は早急に自室へ連れて行かされ、少年2人に看病された。
夜が明けてきた。
僕が目覚めたころには部屋には僕しかいなかった。
もっとも優雅な僕は昨日のことを忘れ朝飯を作りに降りたが先客がいた。
その少女は静かに会釈をし卵を焼いていた。
きっと僕より料理が上手いんだろうと思い僕は自室へ戻った。
朝飯を作り終えたのだろう。音が響く響く。
9人は階段を行列で降りた。朝見た一人の少女はもう席に着いており
今かと待っていた。
卵焼きと、パンという質素な料理なのになぜこんな時間がかかったのだろう?
もっとも柔軟な僕は考えたが次第にどうでも良くなっていた。
END




