E 苦痛の道 共通①
大陸ミーゲンヴェルドには5つの国がある。
白、黒、青、赤、黄――その頂点にして、4つの国を総合的に管理する白国は天属と呼ばれている。
文字通り天界から人間の世界へ使わされた者であり、神の声を聞く。
そして人間と関わる事を神に赦された天使は白国にて人間の伴侶を迎え、王に即位する。
「我等が神ミグーよ――先月の始め、赤国と青国の政略婚により紫国が作られました。ミーゲンヴェルドにふりかかる災厄を祓い我々をお導き下さい」
天使プリンディアは祭壇にて祈りを捧げた。
“紫国を廃除なさい”
「は、直ちに」
ミグー神らしからぬ判断に違和感を覚えたが、神言に逆らうことなど私には考えられない。
■
「というわけなの」
神からの命に私は配下であるディードルベドを呼び出した。
「いくらなんでも必然的に出来た国を消せなんて横暴じゃないか?」
私が来る数年前に緑国は赤国に焼かれたと聞いたが、神命とは関係ないだろう。
先任の天使タウヤルは復興せよとも関わるなとも言われず捨て置いたそうだ。
「プリンディア~!」
「……プレスデュート」
彼は私の夫となる男で、先々代の天使との間に出来た子だ。
天使が人間界にいるのは大体10年だが先代タウヤルは先代時の候補である王女とは結ばれなかった。
子孫を残すと天使は死を与えられるのでタウヤルを好いた女神エレクティエは彼をミグー神から奪い取った。
このままでは天使と人間の子が絶えてしまう。故に私はこの国へ遣わされやってきた。
「今日はプリンディアにあげるものを持ってきたんだ」
「……」
人と天使の子なので顔は悪くないが、個人的には子供のように無駄な行動が多い。
「クッキーの形をした潰すと反発して元の形に戻るやつ」
「ふーん、ありがとう」
「じゃあオレは新品のクルクル回るやつをやるよ」
子供の頃は虫の脱け殻とか本当にくだらないものだが、反発するのや、特にクルクル回るのは悪くない。
「あ、ありがとう!」
普段ケチなディードルベドはいつもプレスデュートに対抗してより良いアイテムをくれる。
「あーまたディードくんのほうが良いもの上げた~ずるっ」
「プリンディアのほしいものはいつも背後にいるオレがよくわかってるさ」