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甘えん坊少年と過保護な女神とお姉ちゃん  作者: 桜川 清太郎
第1章 理から外れた存在 コスティス編
13/20

第13話 呪われた村

アルたちが目指す村の話です。

???って思う表現があるかも知れません。

駄文で申し訳ありません。

尚、残酷な表現があります。ご注意ください。

 私はミミル。桃のようなピンク色の髪と、大きめな瞳をした私は、村一番の美人だって言われてた。

 十七歳になった私は、そろそろ結婚相手でも見つけて幸せになるはずだったのに。――でも、今は違う。


 あの女がやって来たのは半年前。

 コスティスを囲む村々の中でも、一番遠いシリンギ村は、余所者が来ればすぐに噂になるような、全部で百五十人程度の小さな村。

 そんな村に、漆黒の黒髪と燃えるような真紅の瞳を持った女が来れば、噂にならない訳がない。

 黒髪と同じワンピースを着た女は、自分は医者だと言った。


 旅のしながら、生活に必要な糧と引き換えに、病人や怪我人を見てるのだと言う。

 実際にお金など要求されることなく、その日の糧と引き換えに診療するその女は、すぐに村に溶け込んでいった。

 診療をする時は、腰まで伸びた漆黒の髪を束ねた姿見たさに、村の男共は、こぞって病気の振りをしていたの。

 

 そんな美しい容姿を持った女に、村人たちは感謝を込めて、日々の糧を分け与えていたわ。

 あの女を村で見かける度に、私もあんな綺麗な人になりたいって思ったもの。


 村の誰もが私でさえも心を許してしまった頃。

 あの女は、いつもお世話になっているからと言って、いろいろな獣を持ってたわ。

 その中には、見たこともないような珍しい白い鳥も混じっていた。

 頭に角を生やした小さな鳥。

 北の山にかかる雪のように綺麗な鱗を持った鳥は、もう生きていなかったけど、何か気になったのよね。


 でも、村人たちは有り難く、あの女の好意に甘えたわ。

 それが、これから起こる惨劇の材料とも知らずに。


 それは、あの女の本性を知らなかったから。

 あの女の燃えるような真紅の瞳の意味を知らなかったから。

 私たちは騙されていたの。


 * * *


 シリンギ村で、慎ましく暮らしていたはずなのに、私には記憶が無い。

 父さんや母さんの記憶も無い。言葉すら覚えていない。

 たぶん、お父さんだった者。たぶん、お母さんだった者。たぶん、近所のおじさんやおばさんだった者。

 言葉すらも忘れた私は、変わり果てた村と村人たちを、何も感じることなく生きている。


 何もかも忘れたはずの私が、絶望や怒りといった感情を持つ時がある。

 それは、自分の姿を映し出す鏡や、桶に溜まった水面みなもを見た時。

 変わり果てた私に、醜く生えた兎の耳。

 私は今日も鏡を見ながら、飾り物ではない兎の耳を引きちぎるようにするけれど。

 痛い。取れない――何故、そんなことをするのか自分でも分からない。

 でも、頭に生えた耳と、お尻に付いた丸い小さな尻尾が、何故か間違ったものであるような気がするの。

 そんな自分に怒りが込み上げてくると、ピンク色の瞳は、あの女と同じ真っ赤な瞳へと変貌していく。

 そうなった私は、誰かを傷つけたくてしょうがなくなる。


「やめろ! 助けてくれ!」

「ぎゃあーーーーーーーー!!」


 醜い村人たちに襲われるひとの絶叫は、何もない長閑な村に響く。

 村の真ん中にある広場で、並べられるように止められた馬車。

 積荷は撒き散らされて、粉々に破壊され、繋がれた馬の息は既にない。


「貴方。珍しいわね。私の造った存在なのに。おもしろいわ。どうして貴方は襲わないの?」

 

 あの女が私に言った。

 言葉すら忘れた私には、分からないけれど。


 目の前では、私とは違う容姿をした人たちが襲われている。

 お父さんだった者に。お母さんだった者に。素朴な村人たちだった者に。


 人? 分からない。でも、あのひとたちには、醜い耳も邪魔な尻尾の生えていない。

 私は、あのひとたちのようになりたくて? ――分からない。何も。 

 

 だけど、私はまだ恵まれているかも知れない。

 お父さんだった者。お母さんだった者。村人たちだった者は、私よりも醜くて残忍だ。


 狼の耳と尾を付けた者――口からは涎を絶えず垂らし、不自然に伸びた鼻先は崩れ、牙が剥き出しになって醜い。

 熊の耳と尾を付けた者――大きな体躯。熊のように太く鋭い爪を持った左手。私と同じ五本の指を持った中途半端な右手。


 他の者も似たようなもの。

 アンバランスな容姿は醜くて、酷いものは、皮が剥がれ落ち、肉や骨が剥き出しになっている者もいる。

 

「それに、貴方はより・・完全に近いわ。どうしたら、そうなるのかしらね」


 あの女は言った。

 私はより・・完全に近いらしい――でも、言葉すら忘れた私は、あの女が何を言っているのか分からない。


 一人。また一人。私とは違うひとたちが息絶えていく。

 私と同じ腕や足をがれるひと

 そして、私とは少しだけ違う頭部をがれると、血飛沫と血溜まりで、広場が真っ赤に染まっていった。

 そして村人たちが息絶えたひとを喰らっていくんだ。

 

 私はそんな情景を見るのが嫌で、吐き気を催しながら両手で目を覆う。

 ただ、頭に生えた醜い大きな耳が、嫌でも敏感に辺りの状況を報せてくるの。

 醜いだけじゃなくて、嫌なことを報せてくるそんな耳が、私は大嫌い。


 そして十二個のひとだった者は、やがて最後の一個のひとになった時、


「たっ頼む。たっ助けてくれ……何でも言うこと聞くから……」


 最後のひとから、そんなことばが聞こえてくる。

 私は覆っていた手を退けると、隣で眺めていたあの女を見たの。


 あの女は、無表情な顔を少しだけ緩めて、ゆっくりと最後のひとの元へ歩み寄っていった。

 後ずさることもできず、震えながら地べたに腰を落とし、近づいてくるあの女を、瞬きすることもなく凝視するひと


「……助けてくれるなら、なんでも協力する。金なら、ほら……」

「そう。それなら、貴方も完全な存在になる為の協力をしてくれるかしら?」

「なっ、何をするつもりだ? 頼む。やめてくれ」

「別に殺してしまおうというわけじゃないわ。ただ、私に協力してくれればいいの。それに貴方は、何もしなくていいのよ? ただ黙ってそこに居ればいいの」


 あの女は言った。

 だらしなく地面に座るひとは、小さな袋を差し出しながら、そんなことばを発した。

 なんだろう? 私の心に激しく込み上げてくる嫌な気持ち。

 言葉すら忘れてしまった私だけど、見たもの。聞こえてくるもの。

 そういったものに、胸に渦巻くものがあるの。


「アァ……アアァ……」 


 それは、私が発した言葉。

 何故だか分からないけれど、これから起こることが、とても恐ろしいような気がして。

 でも、どう言えばいいのか分からないの。


 あの女は、一瞬だけ私を見たわ。

 でも、すぐに最後のひとに向き直ると言ったの。


「どうしようかしら。もう、試せるものが無いのよね」


 漆黒の髪を靡かせながら、真紅の瞳で辺りを見わたしてる。

 見わたしたって、辺りには元村人だった者たちしか居ないのに。

 ある者はだらしなく涎を垂らし、ある者は醜い腕についた赤い血を舐める。


「そうね。貴方。こっちへいらっしゃい」


 あの女は、そんな醜い者の中から、一体の醜い化物を選ぶと、雪のように白くて美しいかいなを上げて、手招きするようにしたわ。

 

「ギィ……ギィィ……」


 あれだけ獰猛にひとを襲っていた醜い者は、借りてきた猫のように大人しく従っているの。

 二階建ての家ほどもある大きな醜い者――白い鱗のような肌を持ち、背中に生えた片方だけの翼。そして、頭に生えた鋭い角と真紅の瞳と、所々、鱗は剥がれ落ち醜い肉を曝け出した姿は、この世の者とは思えない。

 その四肢は太く、そして三つに割れた指には、鳥のような鋭い爪が付いている。

 あの女に呼ばれた醜い者は、一歩ずつ歩く度に、地面を大きな足形を残して、竦みあがっているひとを見下ろすところまで近づいていった。


「いい子ね。それじゃ、始めましょうか」


 嗚呼。ダメ。何となくそう思った私。

 気がつけば、さっき起きたばかりの惨劇よりも恐ろしいことが――私に似ているけど少しだけ違うひとが喰われることよりも、恐ろしいことが起きそうな気がする。

 この姿を鏡で見て、絶望する以前の記憶や言葉すら覚えていない私だけど、あの女がこれからするだろうことを、どうしても止めなきゃいけないと思った。


「アア……アアァ……」


『我は命を司る神ロディアの寵愛を受け、その力を行使するもの。我が意思は、理を超えて完全な生命いのちを創りだす。【生命の融合ライフ・フュージョン】!』


 私は、あの女がしようとしてることを止めようと走ったけれど。

 あの女の美しいピンク色をした唇から発せられたことばのほうが先に終わってしまう。


 目の前で起きていることが信じられない。

 あの女の美しいかいなの先から、幾何学模様が現れると、夕焼けのような茜色の光が小さなひとと大きくて醜い化物を包む。

 茜色の光に染められた一個のひとと一個の化物の影が、次第に合わさっていく。

 やがて、それらの影が完全に合わさると一つになって、茜色の光は静かに消えていった。


 あまりの眩しさに、薄目を開けて見ていた私だったけど、光の中から現れた者を見て、全てを悟ったの。

 二階ほどあった身体は、小さくなってより・・私や、さっきまであったはずのひとに近くなった。

 所々剥げ落ちて、肉を曝け出していた肌は、ひとに近くなったと思う。

 それでも、醜いことには変わりない。


「あら。前よりは見れるようになったけど。でも、こののようにはいかなかったわね」


 真紅の瞳で私を見るあの女。

 瞳の色は燃えるような赤なのに、見られると背中に寒いものが流れる。

 

 でも、何も知らない私でも分かったわ。

 この女が私を造った。私の周りにいる化物たちも、全てこの女が造ったんだ。

 きっと、この醜い化物たちも、さっきのひとのようなものだったはず。


 私の心の中で、湧き上がる黒い感情と、絶対に抗えないという感情が渦巻いていく。

 こんな醜い耳を私に付けたこの女を、私は絶対に許せない。

 

「どうしようかしらね。もうこの村は捨てたほうがいいかしら。貴方。一緒に来る?」


 あの女は言った。

 真紅の瞳を細めて頬を緩めた面差しは、見惚れてしまうほど美しい。

 でも、言葉を忘れてしまった私には、何のことだか分からない。


「まあ。いいわ。貴方を連れて行っても、足手まといになりそうだもの。貴方は上手に出来たほうだから、勿体無いとは思うけど。また造ればいいわね」

 

 そう言って、あの女は姿を消した。

 そして私は、醜い化物たちに囲まれながら、何も感じることなく村に残った。

新しいヒロインです。

うさ耳の彼女は、御業によって造られた存在です。

そして、獣人となる過程で、記憶や言葉を失っています。

作中でどのように表現するか悩んだんですが、うまく書けてるか不安です。

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