真司と恋愛の彼女
午後の話しになるが、真司と俺で一緒にいると、例のあの子がやってくるのだ。
「和孝君は真司君と幼なじみですよね?」
「そうだけど。もしかして、どういう子だったかって知りたいという感じかな?」
「なぜ、わかったのですか?」
「顔に出てるよ」
睦美はかわいげな顔を横に振り、大丈夫と言う顔でこちらを見ている。
「あら、どうしてでしょうね。私ったら、そこまで真司君のことが好きなんて、恥ずかしい」
と言いつつも、言葉に出している時点で恥ずかしくはないのだろう。ただの芝居に過ぎない。俺はそんなことなどわかっている。それでも突っ込みたくなってしまうのである。
「何で恥ずかしいとか言っているんだ? 普通に考えて、言葉に出さなんだろう」
「そうかもしれないけど、あくまでも芝居よ」
「それ、人に行っても大丈夫なせりふなのかよ。どうみても、マジックでタネを明かしているのと同じことじゃないのか?」
「そんなことないもん。私は別に真司君のことが好きと言うわけではなく、男性として好きなの」
「それはどう見ても、愛してるってことだろうがァ――――」
あまりにも頭の働きが鈍い睦美は、普通の人では言わないことを言い放った。俺はそれを見ても、頭を抱えるほどひどいものであった。それを見ていた真司は俺に一言言い放つ。
「あいつ、俺のことが好きなのかよ。まさか、俺なんかに好きと言う人がいるなんて」
「まあ、そうかもしれないけど。あいつは正真正銘、お前のことが好きだぞ。だって、自分で本音を言っているみたいなもので、ただ、ツンデレみたいなところがあるだけだと思うぞ」
俺が行った言葉に同意した真司だが、乗るきではないらしい。もしかしたら、タイプではないのかもしれない。雰囲気からして……。
放課後になったというのに、近づきたくってしょうがない睦美。チラチラとこちらを見てきている。
「なんだろうな? あいつは俺らを見てるぞ」
真司は気になって仕方がないようだ。遠くからとはいえ、ジロジロ見られれば、変な気分にもなるだろう。
「しょうがないだろ。あのような性格なんだから。内気なんだよ。素直じゃないだけ」
どう見ても、ストーカーのように隠れて、ストーキングをしている時点で、素直じゃないくらいわかる。恥ずかしくって、自分の言葉で伝えることができない奴だということだ。まあ、女子だからわかることだけど。
それでも、周りの目が痛い。俺らを見ている睦美に目線が行き、恥ずかしそうに隠れている。あまりにも哀れとしか言いようがない。
「もうそろそろ、出てきたら?」
真司が優しい口調で睦美を目の前へと誘き出すことにした。このままつけられても迷惑だと感じたのだろう。
「別に、ストーキングなんかしてないけど……」
睦美は自分から真実を述べてしまった。確実におかしい人にしか見えなくなってきた。やったことを白状しているみたいなものなのに。それを気にしないのがあまりにも天然なのか、ただのバカなのかはわからない。
「どう見たって、していたよね? この目で、はっきりと見てるんだけど」
「…………」
「どうした? 俺の質問に答えてくれると助かるんだけど―― 。それにいきなりテンションが上がる和孝がいるしな」
「どういう意味だ」
「なんか、照れてるのかなって」
「いや、そんなことはないけど。こいつがいるから突っ込みどころが多いからだよ」
なぜか、俺がいつもと違うように見える真司だ。
「別に上がってないけど……。それより、どこか行こうか?」
「こいつ、話を変えやがった。根性がねぇ――な」
「いいじゃないか。俺はこういう話に興味がないんだ」
「嘘だろ? 本当は気になって仕方がないくせに、意地をはるなって」
真司には俺が考えていることなんかわかってしまうみたいだ。本当に狂的なのである。こいつを敵に周った時点で終わりになるだろう。
何もしないまま、学校帰りにワクワクナルドに寄った。自動ドアを通り、カウンターへと向かうと、学校帰りの学生で店内はいっぱいだった。
「この量はすごいな。やっぱり、うちの学校のほかに高校がいくつかあるからだな。駅も近いし」
このワクワクナルドは荒川都市駅の駅前にあるドライブスルーがあるもので、たまに通るときに思うのが、制服を着た高校生が多いということだ。この辺には、センタッキがなく、ワックしかない関係もあるだろう。近くにコンビニがあっても、飲食できる場所や話をする場所とかがないという理由からだろう。
人が多い場所を通りながら、並んでいた。
「ここって、カップル通しも多いし、女子だけも結構いる」
「男子はあまりたまらないんじゃない。すぐに帰りたいやつとかもいるし」
「なるほどな。そういう理由か! それより、睦美とかもこんな感じで学校帰りにワックに寄ったりするの?」
「比較的にはね。今までも女子とかと一緒に行くね。男子とは行きづらい。彼氏といるという感じでみられるから」
「なるほど、女子はそういうのが大変なんか。付き合っていないのに、そんな風に言われるのか。きついな」
睦美はうなずいていた。だとすると、俺と真司の二人と睦美一人だと、二股に見えたりするんじゃないかなって、おせっかいを焼こうか考えていた。
「それじゃあ、三人で行くことにしようかっ!」
「で……でも、その――――」
睦美は何かを言いたそうであったが、内容までは行くことはなかった。テンションが高くないまま、ワックへと行くことになった。
睦美にはあまりにもよくない環境の中であった。