高校生活
春休みも終わり、新学期へとなった。
高校はまだ慣れない。制服を着るのは慣れているが、少し緊張をしている。
毎日、肩が凝ってしまいしょうがない。でも、頑張るのが俺の精神。というわけで、学校に向かう。
いつも通りに正門を通り抜けていく。いつもの駐輪場に止めては、玄関へと向かうときにいつものメンバーである真司と会うわけだ。
「おはよう」
「おはよう。いつも通りの登校だな。自転車で大変じゃないのか?」
「いや、もう慣れたよ。あまり遠くはないからね」
あまりにも平和な会話だ。何も面白みがない。これが日常の会話と言うもの。何かを目的で話すことが少ない。どうしよう。
いつも悩む俺であったのだ。
ホームルームが始まると、いつも通りに席に着く。
「それじゃあ、ホームルームを始めるぞ。だけど、特に連絡はないので、解散」
いつも通りに終わる。最初のことは『はやい』と思っていたのだが、今じゃ当たり前になってしまっている。さすがに怖いと思った。
俺はホームルームが終わると、真司がやってきた。
「そういえば、もうそろそろで一ヶ月になるな。この学校に来て」
「そういえば」
確かに一ヶ月になる。と言っても、仲良くなれたのはごく一部のようにも感じる。クラスみんなと仲良くなるのは用ではない。
そして、そこまでの人とかかわる必要もない。少しずつ仲良くなればいいと思っている。
俺はとりあえず真司と仲が良ければいいと思っているからだ。
そして、真司は周りに人に「少し椅子を借りるよ」と言って、使わせてもらった。
「それにしても、よくすんなり貸してもらおうと思うよな」
「それはね、普通に言えば貸してくれるからさ」
「そうなんだ」
どう見ても、真司がすごいとしか言いようがない。誰とでも仲良くなれるとかうらやましい。
「それよりも、授業とかついていける?」
「うん。そんなには難しくはないと思うけど」
「そうか。おれには少しむずいかも」
意外だった。真司が高校に来て、授業が分からなくなり始めているのが。中学の時は『楽勝だよ。こんなにも簡単なんだぞ』と言っていた人が。
何かあったのかと思った。
「そういえば何かあったのか? 真司がむずいとかいうのは珍しいというか、不思議」
真司は少し頭をかしげながら、
「もしかして、俺って頭がよかったみたいな感じの印象がついていたりする?」
俺は欠かさずうなずく。中学の時は、俺よりも上だった記憶がある。だが、中三の時は俺が頑張って、学年トップを取り続けるようになった。真司には負けたくないと思いながら、勉強をしていたときはすぐに時間が過ぎてしまったように感じるくらいだった。
今もそうだ。絶対に大学に行くことを前提で勉強しているのだから。
それよりも、何で真司よりもできるようになったのかはわからない。自分的にはそんなには勉強していないように感じるのだが。まあ、どうしようというわけでもないが。
そして、俺が考え事をしているときに、一人でしゃべっていた。
「俺って、そんなにも頭がいい印象があったなんてね。意外だと思う。そこまでやっていたような記憶がないから。でも、中学三年の時に手を抜いた記憶があるけど」
独り言のようなことを言っている最後の部分だけが、俺の耳がキャッチした。
「それってマジかよ。じゃあ、本気出していなかっただけってこと?」
「まあ、そうなるな」
真司は笑いながら言うから、少し腹が立った。俺は一生懸命勉強して合格した場所を、手を抜いて合格と言うのだから、世界は不公平だと思う。それよりも、どこを基準に決めている
のかなんてわからない。公表されるところではないから。
俺は少し嫌になってしまった。本気で勝ち取っていない実力なんか無意味だと思ってしまったから。誰もが思ってしまうだろう。
そして、俺は、「本当に本気出さないであれだけの実力を出していたのか?」ときいてみたのだが、本当だったらしく、「そうだよ」と即答されてしまった。
俺は少し悔しくなってきた。今はそこそこだという感じなのだが。
中学の時の真司は、今以上に勉強熱心だったんじゃないかと思う。俺がふざけていても、スルーされるし、芸人みたいにネタをやってみたら、船が沈没したようになってしまったし。
それに、中学三年の時はこいつは学年で三位くらいに上り詰めていた。だから、本気を出していると認識していたのだろう。でも、本音は違うとなると今までの努力が無駄に感じてしょうがない。でも、頑張るのだと思ってやっていたのだから、無駄とは言えないかもしれないが、本人に勝つことはできていなかったということ。
今頃になって後悔している俺。存している気分だ。
すると、チャイムが鳴り始めて、席に着くクラスの連中らはまじめだと思う。真面目が集まった学校だから。
授業が終わり、昼のこと。教室でくつろいでいると、
「和孝君と言う人いますか」
と女子に呼ばれた。始めてみる顔であった。あったこともない人に名前で呼ばれるのは新鮮味があった。その時は、華音は同じクラスにいて、女子で呼ばれた瞬間に視線を感じたのを覚えている。このときの華音は積極的ではなかった。あまり、高校に入ってからと言うと話さなくなったし、いつもジロジロとみてくるが俺が振り向けば、目線をずらすし。
初めて会う女子がいきなり自己紹介してきた。
「初めまして、酒井睦美と言います。少し和孝君と話がしたくって」
「それよりも、何で俺の名を?」
「それは、和孝君のことを君の小学校の時の友達に聞いたからです」
相手の丁寧語で堅苦しく聞こえる。
「そうなんだ。それで、俺の友達って?」
「それは、坂本愛美ちゃんに聞いたのです」
――そういえば、愛美と言えば小学校の時に転校したんだっけ。
その時の記憶が戻ってきたように感じる。愛美と言えば、誰よりも胸の成長が早かったように感じる。顔は童顔だし、髪はとてもきれいなピンク色していたしとその時の姿が頭に浮かんできた。
――それにしても、この子もきれいな姿をしている。
きれいなものを見ているときの言葉だ。睦美は顔は完璧な美女でもっこりと張っている胸とほっそりとした足などがあり、それを見たときに思ってしまうことは、
「とてもきれいだ」
と口をあけながら言ってしまうそうだ。
考えていることが変態並みになってしまい、顔がに開けてしまうのを見ていた睦美は問いかける。
「どうしたんですか? 少し変な風に笑っていますよ」
――それは君がきれいだからだよ。
男性ホルモンのせいで少し頭がおかしくなった俺は、中学校一年の時の状態へと戻っていた。
「君って、彼氏とかいるのかな?」
優しく聞くのがよかったのか、睦美は顔を真っ赤にして下を向いている。
「どうしたの?」
問いかけて見るが、反応がない。だが、いきなり顔を上げて、
「本当はあった時じゃなくて、写真を見せてもらったときに一目ぼれしました」
俺は期待をしていた。
――これはもしかして、こ・く・は・く! じゃあ、俺を好きって。
テンションが上がり始める俺である。そのあとの言葉が聞きたくってしょうがない。でも、睦美はあまりにも恥ずかしいのか。噛みまくりだ、
「あにょ、わ……わたしゅの……す……好きなひゅとは……和孝君」
そこで切れたので予想は当たったかと思っていたら、
「の一緒にいるし……真司君なんだよ」
今の言葉ですべてが終わったと思ってしまった。期待をしていた分の裏切りはでかい。
――神様。あまりにもひどすぎます。ライバルを好きに設定するとか。
完全に今の和孝ではありえないことを言っているのだと、今頃になり自覚し始めた。
――やばい、何で告白の期待なんかしているんだ? 俺は勉強一筋だと決めたはずだ。
心の中に呼びかけるように言う。自分でも悲しくなってきた。勉強よりも恋愛に燃えてしまったのかと。
そして、これが災難の始まりへとなる。