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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
風の精霊編
98/230

第93話 新たな世界で魔王討伐?

この話から水の精霊の世界に入ります。

アクセスPVが600万に到達しました!

今後とも『異世界を渡りし者』をよろしくお願いいたします。



俺が次の世界に降り立つと、其処には俺に両膝をついて手を合わせて祈っている、豪華絢爛な衣装を身に纏った女性の姿があった。


「嗚呼、この日この時をどれだけ待ちわびていた事か・・・・・・。 お待ち申し上げておりました、勇者様」

「はぁっ!?」


なにやらデジャブのような物を感じるが、こうなった訳を話すにはエルフの集落を旅立つ、数分前に戻る必要がある。

いよいよ第4の世界へ足を踏み出そうとしていた時、ミラから次の世界の説明を聞かされた。


(主様、次は水の精霊が司る世界です。準備は完了していますか?)

(それは良いが、また地上数百メートルの場所に出さないでくれよ)

(流石に次で3度目ですから、大丈夫だと思います)

(だからと言って地面の中っていうのも勘弁してくれよ?)


俺が冗談半分に言った言葉でミラの表情(?)は曇った。


(善処します)

(・・・分かった。 信じているからな、ミラ)

(はい。 お任せ下さい) 


少し不安が残るが、長老との最後の挨拶も済み、次の世界へ飛ぶときにミラから再び念話が届いた。


(主様、次の世界から正体不明の魔力の波動が放出されています。 と言っても微弱な魔力の波動ですが)

(なに!? またもや精霊が弱体化しているのか?)

(いえ、水の精霊の魔力を測ってみたのですが、減っていると言う事はなさそうですね)

(そうか。 しかし気になるな・・・ミラ!魔力の波動が放出されている場所は分かるか?)

(はい、強力な魔力なので位置は簡単に特定する事が出来ました。如何しますか?)

(決まっているだろう? その場所に行くぞ!)


俺はそう言ってミラに転送座標調整を頼むと長老に再度別れを言い、今度こそ旅立った。


そして話しは文頭へと戻る。


「嗚呼、勇者様。 この日をどれだけ待ちわびた事か・・・」


俺を勇者と呼ぶ、目の前の女性は豪華なティアラとドレスに身を包み、俺の手を握って涙を流している。

女性の後方には重厚な鎧を身につけた男達が立っていたが、苦虫を噛み潰したような殺気だった表情で俺を睨みつけている。 俺が立っている場所はと言えば、何処かの地下室に描かれた魔方陣の中央だった。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺が勇者とは何か誤解してないか?」

「いえ断じて間違いではございません。 古文書の通りの呪文を唱えて、勇者様が現れたのですから」

「古文書?」

「はい、長年研究されてきた古文書の解読によると、こう書いてありました。

“この地に邪悪なる者が蔓延はびこる時、天界より黒髪黒目の勇者が光の門を潜りて現れ出で、邪悪なる者を打ち倒さん”と・・・」

「『邪悪なる者』とは?」

「この地、アルフェクダより遙か、北方に位置する大陸に最凶最悪なる魔王が蔓延っております。 幾人もの討伐隊を送り込んだのですが、誰一人として帰還したものはおらず、現状は不明となっております」

「魔王か・・・」

「そこで勇者様にお願いがございます。 此処に旅の支度金と致しまして1000GL(ガル)を御用意いたしました。 これで装備を整え、魔王討伐をお願いいたします」


女性が硬貨の入った袋を俺に差し出すのを見て、明らかに男達の表情が変化した。

今までは俺に対して殺気の篭った目を当てていたが、今は硬貨の詰まった袋に全員の視点が集中していた。


「なにか御座いましたか?」


女性は不穏な気配を探知したのか前後左右に視点を這わせていた。


「あ、申し遅れました。 私はアルフェクダ第3皇女、メルディンと申します。 誠に失礼ですが・・・差し支えなければ、勇者様の御名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」

「あ、ああ、そうだな。 俺の名前はミコトだ、宜しくなメルディン姫」

「ミコト様ですか。 あ、もうひとつ忘れていました、此れは先々の関を抜ける際に必要な通行証です」


俺はメルディン姫から通行証を受け取ると、姫の屈託のない笑顔と2人の門番の男達による殺気に見送られながら、魔王討伐の旅に出発した。

旅の支度金として1000GLという金を受け取ったはいいが、このアルフェクダという城下街には碌な武器や防具、道具類がなく、とても城下町とは思えないほど衰退していた。


(これが一国の城下町の姿なのか? まるでスラム街じゃないか・・・)

(マスター、城内はきらびやかな装飾品や豪華な絨毯が床一面に敷いてあったというのに、街の様子は天と地ほどの差がありますね)

(そうだな。 城下町といえば、華やかな街の外観や楽しそうな人々の姿を想像するものだが、実際に見たらどうだ! 街道には所々に血の痕がにじみ、建物は瓦礫同然、街の住民はボロボロな衣服を身に纏っている)

(これもメルディン姫が言うように邪悪な魔王が関係しているのでしょうか?)

(もしそうなら、城の中も街と同じくらい汚れていないと説明がつかないだろう?)

(確かに、その通りですね)

(これは魔王以外にも懸念する必要があるようだな。 フレイ、シルフ、悪いが2人は此処に残って何かあったら逐一、ミラに念話で報告してくれないか?)

(わかりました~~~)

(了解いたしました。 旅の御無事を願っております)


俺は風の精霊であるシルフと火の精霊であるフレイを城内と城下町に放ち、情報収集を頼んだ。


(それでは主様、此処は2人に任せて私達は魔王城に急ぐとしましょうか)

(ああ、そうだな。 後から殺気を向けてくる奴等の相手をしてやらないといけないからな)

(あの方達、気配の消し方が下手糞ですね)

(所詮、チンピラ、ゴロツキの集まりさ)


俺は複数の気配に気づかないフリをしながら、街の門へと歩いていく。

門の外は左右を深い森が生い茂り、地平線の彼方まで森に囲まれた一本道が延々と繋がっていた。


(人通りのない鬱蒼とした、森の街道か。 そろそろ、あいつ等(・・・・)が襲ってくる頃だな)

(マスター、後方に20、左右の森の中に各5人ずつ潜んでいるようです)

(合わせて30か、楽勝だな。)


俺が態とつまづくような足取りで隙を見せると、前後左右から一斉に飛び掛ってきた。

ルゥの言ったとおり、後方と左右の林の中から思い思いのナイフや棍棒といった武器を手に必死な表情で襲い掛かってきた。


『キィン! バズッ! カキィィィン!!』


咄嗟に剣を振りながら前方に避けた事で左右から襲い掛かってきた奴らは避けきれずに自爆し、後方から襲い掛かってきた奴等も反応が遅れたのか、数人はドミノ倒しとなって地に伏せていた。


「やるな。 見事な体捌きだ」

「お前らは一体何者だ? 恨みを抱かれる憶えはないんだがな」

「アンタには無くとも俺達にはあるんだ。 情報どおり、黒髪の剣士だな、覚悟してもらうぞ!」

「『情報どおり』? どういう意味だ!?」

「アンタにゃ悪いが、こちとら生活が掛かってるんだ。 大人しく殺されてくれよ!」


巻き添えにならなかった襲撃者たちは剣を振りかぶって襲い掛かってきた。

切り捨てるだけなら容易なことだが、誰に言われて俺に襲いかかってきたのか聞き出すために右手の剣で相手の武器を打ち払い、残った左手で力任せに相手の肘や膝をへし折った。


「グアァァァァァァァ!!!」

「ギャァァァァァァァ!!」


俺に関節を砕かれた襲撃者達は手に持っていた剣や槍といった武器類を地面に落とし、無事な方の手で粉砕骨折した場所を押さえていた。

俺は瞬時に剣を抜き、リーダー格の男の喉元に突きつけると軽く脅しをかけた。


「さっきも言ったが、お前等は一体何者だ? 答えろ!!」

「・・・・言えない」

「命が惜しくは無いのか?」


俺は襲撃者に脅すような口調で言いながら、実際に命を奪う気はないが、剣を持つ手に力を入れた。


「俺が口を割れば、街に残された家族は殺される。 俺1人の命で家族が助かるなら、思い残す事は無い」


男は自殺するかのように、喉元に突きつけている剣に倒れていく。

逸早く其れに気づき、剣を収めたが首の皮一枚を切って男は気絶した。

倒れている奴等を見ると自分の剣を腹に刺そうとする者、舌を噛み切ろうとしている者がひしめいていた。

襲撃者とはいえ、目の前で死なれては後味が悪いので全員に当身を食らわし、1人残らず気絶させた。


(こいつらは一体なんなんだ・・・。 自ら死を選ぶとは)

(主様、先を急ぎましょう。 フレイとシルフもかなり入り組んだ場所まで探しているようですし)

(何か2人から連絡はあったのか?)

(主様が召喚された地下室に居た2人の男が、黒尽くめの衣装を身に纏った複数の者に何かを話していたという事しか)

(そうか、こいつ等のことも心配だが、まずは他の都市の現状を知る事が大事だな)


俺に魔王退治を依頼してきた理由、荒んでいる城下町、命がけで俺を狙ってきた男達、その襲撃者の家族など、考える事は山ほど在るが、アルフェクダ以外の街を見るべく旅を急いだ。




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