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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
風の精霊編
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第87話 尋問開始

魔物が繁殖期により、活性化しているという森へ侵入者を捨てに行くという、長老との芝居(というか脅し?)が終了した後、再び場所を俺の家へと移し、事情聴取を再開する事にした。


「それで?お前達が世界樹に設置した、この石は一体なんなんだ?」


手に持ってしまうと魔力が吸収されるため、カゴの中にいれて男達の目の前へと差し出す。


「それは魔吸石といって、魔力を蓄える代物だ」

「お前達が作ったのか? 魔力を吸い込んで何に使うつもりだったんだ!?」


顔を真っ赤にして、今にも殴りかかろうとしているジェニスを長老が何とか押さえ込み、男への尋問を続けた。


「作ったのは俺たちじゃない、俺達は其れを満タンにする様、依頼を受けただけだ」

「依頼? 何処の誰に!?」

「此処から6時間ほど歩いた場所にあるメグレスの街に住む、ドゥールという男から魔力を限界まで注ぎ込むように命令されたんだ。 魔吸石をどう使うかは知らねえが、魔力が満タンになった石と引き換えに、大量の金が貰えるからな。 良い小遣い稼ぎって事だ」


男達にとっては小遣い稼ぎでもエルフの森にとっては精霊の命の危機だったので、男達とは裏腹にジェニスは勿論の事、長老からも目に見えるほどの殺気が滲み出ていた。


「それじゃあ次の質問だが、森の結界をすり抜ける事ができるメダルを何処で手に入れた?」

「メダル? ああ、赤褐色のアレの事か・・・。アレなら森で道に迷っていた時に偶然通りがかった、出口まで道案内してくれた親切なエルフの兄ちゃんを殴り倒して奪ったんだが?」


『エルフの青年』という単語を聞き、長老は思い当たる節があるのか手を顎に当てて考えているようだ。


「あのエルフのおかげで大分儲けさせて貰ったからな、感謝してるぜ。 名も知らないエルフさんよ」

「き、貴様! そのエルフの男を如何した!?」


長老が考え事で場を離れてからジェニスを押さえつける者は居なくなり、怒りが今にも爆発しそうなジェニスは剣を抜き、男達に詰め寄った。


「何をしたかと聞いているんだ、答えろ!」

「ジェニス、落ち着け」

「し、しかし・・・・」

「二度は言わんぞ」

「分かりました」


ジェニスは渋々ながらも剣を鞘に収め、壁に寄り掛かりながら視線だけで人を殺せそうな目で男達を睨みつけている。


「それで? 質問の続きだが、エルフの青年を如何したと?」

「さあな殴り倒して道具を奪ったあと、その場に置き去りにしたからな今頃は魔物の腹の中で消化されてるんじゃねえか?」

「この道具の事を誰かに話したり、複製したりしたことは?」

「はんっ! 大切な商売道具を誰かに教えたり、見せたりしたとでも? そんな馬鹿な真似はしねえよ」

「一時期はドゥールに見せようかとも考えたが、奪われると厄介な事になるからな、黙っていた」


あまりにも簡単に事情を話すので途中からミラに探らせていたのだが、嘘をついているような息遣いや動悸は感じられなかったとの念話が届いた。


「俺が質問は以上だ。 長老、何か考えているようでしたが、こいつ等に聞きたい事はありますか?」

「一つだけ宜しいですかな? メダルを奪ったというエルフの青年じゃが、右目の下に火傷のような跡がありませんでしたかのぅ?」

「火傷? そんな物あったか?良く憶えてねえな。 お前は何か知ってるか?」

「そういえば、頬に蚯蚓みみず腫れのような跡が薄っすらとあったような・・・其れがどうかしたのか?」

「やはり・・・」

「長老?」

「私の質問は以上です」

「さて此れで尋問は終了なんだが、こいつ等を如何しようか?」

「何でえ、解放してくれるんじゃないのかよ?」


『何で!?』とか『人でなし』だのと五月蠅かったため、軽い雷撃で眠ってもらう事にした。

「解放か・・・それは難しいだろうな、だが殺すのもな」


俺が縛られ気絶している男達を見ながら考えていると、長老が近寄ってきた。


「それではこうしましょう。 結界のメダルを没収した上で縄を解き、森へ放置します。運が良ければ森を抜けられるでしょう」

「そんな長老様、ミコト様! 私にこの者たちの処分を命じてください」

「それは駄目だ。 下手をすると人間対エルフの戦争が勃発してしまう」

「ジェニス! 我等エルフ族には如何なる事情があろうとも、人間に危害を加えることまかりならんという掟があることを忘れたか!?」

「それじゃあ皆が寝静まった頃に俺が森の外に捨ててくるよ。 ちょっとドゥールという男の事も気になるからついでに街も見てくるさ」

「それですと貴方様が危険ではありませんか?」

「忘れたんですか? 俺は不死身ですよ」


俺がそう言うと長老は黙って引き下がり、ジェニスは連れて行って貰いそうな目で訴えかけてきた。


「あの~お邪魔でなければ私も連れて行ってもらえませんか?」

「すまないが、ジェニスはこいつ等に顔を見られているからな危険だ。 大人しく森で待っていてくれ」

「・・・分かりました。 申し訳ありません」

「ところで長老、さっき聞いていた火傷の事は如何いうことだ?」

「先程お話した、行方不明になった者の顔に火傷があった為、もしやと思ったのですが」

「予想が的中したという訳か」

「はい。 この者達が持っていたメダルに少なからず見覚えがあったものですから」

「そうだったのか」


途端に暗い話しになってしまい、長老とジェニスは顔を俯かせたまま自分の家へと戻っていった。

それから数時間が経過し、皆が寝静まった頃2人を担いで森の外へと足を進めた。

その間に一旦、侵入者たちは目を醒ましたが、再度電撃により気絶させた。


侵入者も捕らえ、結界を無効にするメダルをも取り上げた事で、もう世界樹に危機が迫る事は無いと思うが念のためにフレイを監視につけることにする。


何かあればフレイからミラに連絡が届き、ミラから俺へと報告が来るだろう。



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