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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
風の精霊編
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第86話 侵入者の運命は?

侵入者に対する荒っぽい尋問(拷問?)を期待されていた方にとっては期待はずれかも知れませんが・・・

その後、精霊に侵入者2人の見張りを任せた俺は長老宅へとジェニスと長老を迎えに行った。


「おはようございます。 おっと、すみません食事中でしたか」


軽く朝の挨拶をしながら家の中に足を踏み入れると、長老とジェニス、ニーナと食事しているところが目に入った。


「いえ、構いませんよ。 例の一件ですか?」


長老とジェニスは俺の一言で神妙な顔つきに変わり、ニーナに至っては何にも知らされていないのか首をコテンと傾けていた。


「ああ、悪いんだけど、食事が終わったら長老とジェニスは俺の家に来てくれないか?」

「お兄ちゃん、ニーナは~~~」

「ニーナ、お友達と一緒に遊んで来なさい」

「はぁ~い」


数分後、朝食を終えた長老とジェニスは俺と打ち合わせをしながら侵入者の待つ家へと向かっていた。


「俺があいつ等を尋問するから調子を合わせて欲しいんだ」


俺は長老達に此れから侵入者にする芝居の打ち合わせを始めると・・・ジェニスが堪えきれずに笑い出していた。


「しかし、そう簡単に口を割りますか?」

「なぁに、命の危機に陥れば口を割るものさ」

「こんな事を言っては貴方様に失礼になりますが、悪戯いたずらを考えている子供のような表情をなさってますよ?」

「そうか?表情に出てしまってるか」


その後、2人を連れて家に戻ったが侵入者は雷撃で気絶させた状態のまま微動だにしていなかった。

一瞬、雷魔法の威力が強すぎて殺してしまったかと考えたが、脈を取ってみると気絶しているだけのようだった。


「こやつ等が世界樹に悪さをしていた侵入者ですか」

「それにしても、どうやって森の結界を抜けてきたのでしょうか?」

「それなんだが『エルフの民を襲ってメダルを手に入れた』という会話をしていたようだが、何か心当たりはありますか?」


長老は腕を組んで考え始め、何かに思い当たったように話し始めた。


「ミコト殿が来られた時に少し話をしましたが、以前この家に住んでいた者が数ヶ月前、森に狩りへと出かけたまま行方知れずになってしまったのです。 その後、終了時間になっても帰ってこなかった事から皆で捜索にあたったのですが、地面におびただしい血痕があった事から魔物に襲われたと判断したのです。 数時間に渡り捜索しましたが何の手がかりも得られずに捜索を断念しましたが」

「たまたま森へと来ていた男達こいつらに襲われたとも考えられるな」

「確証は御座いませんが、その可能性はありますね」


色々と会話をしていると雁字搦めに縛られている男達から呻き声のような声が聞こえだしていた。


「う、う~ん・・・。 !?此処は何処だ?」

「相棒、無事か? 何故、身体が動かん!」


2人の男は縛られている事に意識が追いつかず、身体が動かない事に動揺しているようだった。


「ようやく目が醒めたか」

「て、てめえはあの時の!?」

「目覚めた早々で悪いが質問に答えてもらうぞ? まず、お前達は何者であの魔吸石と呼んでいた石はなんだ? それから、お前達が襲ったと言っていたエルフの民を如何した?」


俺は立て続けに身動きの取れない男達に質問を投げかけた。


「そんな簡単にペラペラと事情を話すとでも?」

「我等にもプライドがある。 そう簡単には口を割らんぞ」

「貴様、この期に及んで」

「ジェニス待て!この場は俺に任せろ」

「し、しかし・・・」

「ジェニス!」

「・・・分かりました」


男は此れからの事を予想できていないのか、口元を緩ませて笑っている。


「茶番は終わりか? なら、さっさと縄を解いて俺たちを解放し、魔吸石を返しな!」

「昨夜もお前達に言ったと思うが、俺は石を返す気も無ければお前達を森から帰す気もない」

「ど、どういう意味だ?」

「こういうことだ」


俺が縛られている2人を引き摺って家から出ると、森の中へと足を進め始めた。


「み、ミコト殿!? 今はダークラビットの繁殖期を迎えているため森の中は危険です。 集落の周りには魔物が入れない結界が張ってありますが、一度ひとたび森に足を踏み入れれば命の保障は出来ませんぞ」


侵入者らは散々俺に罵声を浴びせていたが、長老の言う言葉で顔色を真っ青に染め上げていた。


「なぁに、こいつ等を森の中に捨ててくるだけだ。 用が済んだら直ぐに戻ってくるさ」

「ま、待て!エルフは人間を殺すのは禁じられているのではなかったのか!?」

「何処で誰に聞いたのかは知らんが、俺がエルフに見えるか? それに手を下すのは俺ではなく、森に巣食う魔物だ。 お前達2人は仲良く魔物の腹の中という訳だな」


俺が話し終えた途端に図ったかのように魔物の遠吠えが森の中から聞えてきた。


「遺言はそれだけか?なら行くぞ」

「わ、分かった。 何でも話す、だから命だけは助けてくれ!」

「・・・プライドがあるのではなかったのか?」

「下らんプライドよりも命の方が何倍も何十倍も大切だ」


男は目に大量の涙を浮かばせながら何度も何度も「殺さないでくれ!」と懇願し謝罪してきた。


まぁ、手足を縛られて身動きできない状態で魔物に襲われれば、結果は火をみるより明らかだろうが。

俺は森に足を踏み入れる一歩手前で踵をかえし、2人を家の中へと連れ帰った。


実はジェニスとの物言いも、長老の『魔物の繁殖期』というのも全くの出鱈目で、事前に打ち合わせをしていたものだった。

魔物の遠吠えは全くの偶然であったが・・・・・・。

さて尋問を開始しようか!



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