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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
穏やかな出会い
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第9話 討伐依頼③ 完了

自分自身も鬼畜なキャラは嫌いなんですが物語の面白さを出すためにあえて登場させました。


自分で書いときながら、腹立たしい気分になったことは言うまでもありません・・・

セリアの前で非人間的な身体能力を晒しだすわけにはいかず、人並みの歩行速度で町に帰った頃には既に空は真っ暗闇になり、ギルドの窓口は閉まっていた。

ちなみにお姫様抱っこしていたセリアは町に着く2時間ほど前に降りて自分の足で町の門を潜った。

町に到着後、先行していた筈のセリアの仲間であるリンドとイラウの姿が何処にも見当たらなかった。

ギルドは閉まっているため、此処にいるのではと酒場に入ると既に出来上がっている2人の姿が。


「お?セリア、やっと到着したのか。報酬で飲み食いしていたが、もう料理も金も残ってないぞ。」

「遅れてくる奴が悪いんだ。気にするな!」


セリアを仲間とも思わない奴等の行動に俺はキレかかっていたが、横にいるセリアを見るとプルプルと身体を震わせていた。

次の瞬間、酒場に居る他の客の鼓膜が破れそうな大声でセリアが叫んでいた。


「もう我慢できない!私、このパーティー辞めさせてもらうわ!!」


突然の訴えられた表明に2人はしばし呆然となったが、直ぐに切り替えしていた。


「おぅ、お前の代わりなんて幾らでも居るんだよ!不満があるなら辞めてしまえ!!」


それを聞いたセリアは両目に涙を浮かばせながら宿屋の奥へと走り去っていった。

冒険者3人による盛大な口喧嘩により、その場で食事をしていた他の冒険者たちもセリアが走っていった方向を声も発せずに見守っていた。


「くそ!あの屑のせいで酒が不味くなったぜ!!」

「飲みなおそうにも金がねえしな・・・くそッ!!」


周りの客から発せられる、見下した視線に気が付かないのか平然とした態度で悪態をついていた。

その平然とした様子に我慢できなくなった俺はとうとう口を出してしまっていた。


「おい!お前ら、仮にもセリアは仲間だろうが!もうちょっと優しく出来ねえのか!?」

「なんだ、さっきの冒険者か・・・此れは俺達の問題だ、関係ない奴が口出ししてんじゃねえよ!」

「なんだと!?この野郎!」


あやうく手を出してしまうところで、俺よりも先に宿屋の女将のレインが手に持っていたお玉で2人の頭を続けさまに殴り飛ばしていた。

しかも殴った音は『パコーン』という軽めの音ではなく何かお玉とは別のもので殴ったかのような『バキッ』という音だった。見るとお玉の先にある半円形の物が折れて床に転がっている。


「いーってえな!何しやがるこの野郎!!」


一人は殴られたところを手で押さえながらレインに文句を言い、もう一人は頭を手で押さえながら床にうずくまっていた。


「お前達みたいな仲間を仲間とも思わない奴らは虫唾がはしるんだよ!!金はいらないから、さっさと此処から出て行きな!!」

「客に向かって何だその態度は!?こっちは金を払っているんだ!!」


その瞬間、男は女将に掴みかかろうとするが、他の食事をしていた冒険者からの殺気を含んだ視線を感じ取ると早足で逃げて行き、先程まで頭を押さえてうずくまっていた男も動物のような4本足で酒場の外へと逃げていった。


「へぇ~、レインって見かけによらず強いんですね。」

「私がやらないと、此処にいたミコトを含む冒険者の誰かが剣を抜いてただろ?私は此処を殺人現場にはしたくないだけだよ。」

「分かりました。そういう事にしておきますよ」

「違うって言ってんのに・・・。」


レインは照れ隠しのためか後ろ手で後頭部を掻きながら厨房へと消えていった。

そして夜が更け翌朝、朝食時にレインにセリアがどうなったのか聞いてみると・・・。


「あの娘なら朝一番に昨日の事の礼を言った後、ギルドに寄って依頼を受けに行くって威勢よく出かけて行ったよ。名前を聞いていなかったミコトに“ありがとう”って伝えてくれって言ってたね。」

「そうか、元気になって良かった。」


その後、朝食を終えた俺はギルドへワイルドウルフ討伐の報酬を貰いに窓口を訪れた。


「ローラ、ワイルドウルフ5頭討伐してきたぞ。これが証明部位だ」


そう言って道具袋の中から断面に血がこびり付いた角5本を窓口に差し出した。

俺が差し出すとローラは魔物辞典をぺらぺらと捲り出し、ワイルドウルフの頁と現物を見比べていた。


「え~と、確かにワイルドウルフの角5本確認しました。これが報酬の銀貨10枚です、お受け取り下さい。」

「確かに。それでセリアの事で詳しい事を知りたいんだが?」

「耳が早いですね。どうしてその事を?」

「昨日の酒場での盛大な口喧嘩の現場に俺も居たし、ポークベアだっけ?討伐したのは俺だしな。」

「セリアの言っていた親切な男性というのはミコトさんの事だったそうですね。」

「ああ、それでセリアは無事にパーティーから離脱できたのかと思ってな。」

「本当は言ってはならない事なんですが、当事者のミコトさんには言わないといけませんね。セリアは離脱したついでに今までの討伐偽装行為も暴露して行きましたよ。」

「偽装行為は証明部位さえあれば、ギルドは討伐したものと判断すると言っていたが?」

「それは大きな間違いです。今まで偽装が分からなかったのは証明できる者が居なかったからです。」


そうか、元パーティーの一員であったセリアが暴露したんだから十分証明が出来る事か。


「リンド・イラウの両名には罰則として、DランクからEランクへの降格がギルド支部長の決定により本日早朝に執行されました。なおセリアについては内部告発により恩赦が与えられ、現状維持としてDランクのままになっております。」

「その後、セリアはどうしたんだ?」

「体力の問題の事から討伐依頼ではなく、採取依頼を受けて町の外へと歩いて行きましたよ。」


そうか元気になったなら、それで良いか。何時かどこかでバッタリと出会う事もあるだろうな・・・。




次回はセリアの内情を書く予定でいます

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