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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
風の精霊編
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第84話 世界樹の異変

お待たせしました!

ようやく世界樹の衰退に関する物語に入って行きます

空が夕焼けで赤く染まる頃、魔法であると思われる打ち上げ花火のような閃光で狩りは終了となった。

その合図から数分後、四方八方の森からワラワラと獲物もしくは武器を背負った狩人達が姿を現す。

狩りを終えた者達を見てみると獲物を担いでいるものは笑顔で陽気に笑っており、収穫が無かった者は周りに慰められながら元気がなさそうに歩いてくる・・・・・・。

残念ながら狩りは1人一頭という訳には行かなかったが、各々が森で狩って来た獲物や俺が狩ったダークラビット一頭を含む、合計23頭が所狭しと長老宅の前にある広場へと集められた。


「いや~今回は大量だったな。 此れで暫くは食料にも衣服にも困らないな」

「全くだ。 長老様の言葉じゃないけど、此れも神様の御加護という奴かね~~」


狩りに参加した者達は苦労を労うために用意された数々の料理と恐らくはアルコール類と思われる茶色の飲み物で上機嫌になっていた。

そんな者達を尻目に先程まで料理を運んでいた女性達が獲物のほうへと歩み寄っていく。

此処からは女性陣の仕事のようで、各々が各家から小型のナイフを持ち寄り、獲物を捌いていった。

獲物の両足をロープで縛り、数人で上下逆さまに吊り下げると血抜きをし、器用にホーンラビットの象徴ともいえる頭の角を根元から切り離し、同様に毛皮も切り離していく・・・。


「あれは如何するんだ?」


俺は隣で黙々と料理を食っているジェニスへ問いかけた。


「ホーンラビットの角を摩り下ろし、特定の薬品と混ぜ合わせる事で貴重な滋養強壮の薬になります。 毛皮については綺麗に洗ったあと、人間の住む街へと持って行き、物々交換に扱われます」

「人間の街に行くのか!? エルフが普通に街の中を歩いてたら拙いだろ?」

「当然、この姿のままではありませんよ? 遙か昔からエルフに伝わる魔道具によって、姿を人間と変わらない容姿へと変身させるんです」

「そんな魔道具が存在するのか・・・」


ジェニスと話していると作業組も終盤へと差し掛かったようで、角も毛皮も切り取られたホーンラビットは綺麗に一定の大きさへと切り分けられていった。


「あの肉の一部は直ぐに焼かれて食べられますが、残りは干し肉として加工され保存食になります」


まるで聞かれることが分かっていたかのようにジェニスが説明をしだした。

そんな中で気づいた事はといえば、俺が一緒に狩って来たダークラビットだった。

ホーンラビットと同じ様に黒い毛皮を剥ぎ取られたまでは分かるが、それ以降、角を切り取ろうともしなければ肉を切り分けようともしていなかった。


「なぁジェニス、あのダークラビットは如何するんだ? 加工していないようだけど」

「ホーンラビットと違いダークラビットは魔物ですので肉はどんなに加工を施しても毒が残りますし、角も薬にはなりませんからホーンラビットの骨とともに森の奥深くに捨てられます」

「毒があるのなら仕方ないよな~~~」


俺なら致死量の毒があろうと食べられるのだが、混乱を招かないためにも黙っておく事にした。

そんなこんなで夜は更けていき、宴会はお開きとなった。


翌朝、目が醒めると恐らくは二日酔いだと思われる、真っ青を通り越して真っ白な顔をした男達が死体の様に広場の至る所に転がっていた。


(マスター、おはようございます。周りを気にしなければ気持ちの良い朝ですね)

(ルゥも何気に言っている事が酷くないか?)

(気のせいじゃないですか? それにしても気持ちの良い朝なのですが、何処か不穏な空気というか気配が感じられます。)

(敵か!?)

(いえ、此方に対しての殺気は見受けられません)


何処かから狙っているのかとも考えたが、其処には生きた死体が転がっているだけだった。

時折、呻き声がしているところを見ると本当の死体ではないようだが。

そんな死屍累々な現状を尻目に何時ものように朝食として果物を齧っていると、何か問題が発生したのか、長老が息を切らせながらジェニスとともに此方へと飛びこんできた。


「た、大変でございます! ミコト殿、ミコト殿ーーーーーー!」

「如何したんですか? そんなに慌てて」

「魔力が、精霊様が、枯れた木が!」

「とりあえず何を言っているか分からないから落ち着きましょうか、ほら深呼吸して」

「「スーハー、スーハー、スーハー・・・ゲホ、ゴホ、ガハ、ゲホ」」


盛大にむせこんだ2人は冷静さを取り戻したようで、息を整えていた。

周りにいる死体のような者達も何があったのか気にはなっていたが、聞き耳を立てる元気は無かったようで・・・・・・相変わらずに倒れ伏したままだった。


「落ち着きましたか? そんなに慌てて一体、如何したんですか?」

「そうでした。 此処では皆の目がありますので、世界樹の方へお越し下さい」


俺は長老とジェニスに連れられ風の精霊が住むといわれる巨木、世界樹へくると驚愕に目を見開いた。


「こ、これは如何いうことだ!? 何故、何故また木が枯れかかっているんだ!?」

「その通りで御座います。 10日ほど前、貴方様に魔力を注いでいただいて持ち直しをしていた世界樹が今まさに枯れようとしているのです」


前回ほどではないにしろ、明らかに魔力の許容量が下がっている。

もう一度、魔力を注ぎ込んでみるが巨木にではなく、何か別の物に吸い取られているような感覚がある。


「何かがおかしい・・・」

「いかがなされました!?」

「俺の魔力が木に吸収されずに、別の何かにおびき寄せられるかのように移動していく」

「何ですと!!?」


俺は他の精霊を使役し異常や不審物が無いか確認させる事にした。


(ミラ、フレイ、すまないが世界樹の周りを飛んで変な物がないか確認してくれ!)

(分かりました主様)

(了解で~す)

(あ、言い忘れた。 変な物があっても決して手を触れないようにな?詳細を伝えてくれればいいから)


2人(?)の精霊はもう一度返事をすると思い思いの方向へと飛んでいった。

それから数分後、ミラとフレイが驚くべき報告をもたらしてきた。


(主様、ご報告いたします。 フレイとともに調べましたところ、世界樹の根元に十数個の魔力を帯びた石を発見いたしました。 どうやら、その石が魔力を吸い取っているようです)


その報告を受け、俺と長老は驚きの表情を見せる。

ジェニスに至っては精霊の声が聞えないため、暇そうに立っている。


(その石のある場所に案内してくれ)

(はい、此方です)


ミラに案内してもらうと世界樹の根元に微弱な青い光で明滅する十数個の石が見受けられた。


「この石が魔力枯渇の原因か?」


何気なく光っている石に手を触れると、急激な勢いで吸い出される魔力を感じ取り瞬時に手を離した。


「な、何だ今のは・・・。」

「此れが精霊様の言う、原因の石ですかな?」


長老が今まさに石を拾おうとしているのを突き飛ばす事で阻止した。


「な、何をなさるのですか!?」

「その石に触れるな! 魔力を吸われるぞ」

「なっ!?」


俺は長老と何も現状を分かっていないジェニスに注意を促すと足元に落ちていた木の枝を使い、世界樹の根元に置かれていた光る石を木に触れないように突き放した。

すると突然、電池が無くなったかのように謎の石の明滅は収まり、ただの石と変わらない物が地面に転がっていた。


その後、改めて世界樹に魔力を注ぎ込むと何の問題もなく木に吸収されていく。

風の精霊の具合が良くなったと判断して森を離れていたら、どうなっていた事か・・・・・・。




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