第79話 森の中の集落
まだまだ不安な点が数多く残っていますが、取り敢えず完成しましたので更新いたします
第3の異世界開始です!
ミラに界渡りを実行してもらった直後、前の世界マルベリアからイスラントールの地に辿りついた時のように不思議な空間を通り、新たな世界に到着したのだが・・・第1歩目の感想は足が地面に着いていない感覚と凄まじい風が足元から感じられた。
(主様、新たな世界に到着いたしました)
念話で話しかけられ目を開けると、目の前には青い空と遙か下方には壮大な森が広がっていた。
(なぁミラ、前にもこんな事が無かったか?)
(申し訳ありません)
自分が今いる状況はといえば、遙か上空から地面へとパラシュートも着けずに自然落下している状態だ。
(マスター、宿屋で練習していた風の魔法で飛んでみたら如何ですか?)
(おお、その手があったな! じゃあ早速・・・)
イスラントール武道大会の開会式でログナートやフィンケルが飛んでいたように風の魔法を使って飛ぼうとするが所詮、俄仕込みで飛ぶというよりも落下速度を押さえる事で精一杯だった。
「結局、落ちるのは変わらないんじゃないかぁーーーーーー!!」
その数分後、数本の樹木を巻き添えにしながら森の中へと無事(?)に着地した。
前の世界でのデジャブを思わせるようなクレーターを地面に作って・・・。
(毎度毎度、つくづく俺が不死身でよかったと痛感する瞬間だな)
(あの高さから落ちれば普通の人間は間違いなく、全身複雑骨折&内臓破裂で見るも無残な惨死体が残るだけですしね)
(ルゥも言うようになったな)
(すいません。 調子にのってしまいました)
(いや、気にしてないから大丈夫だよ。 こうなったのも元はと言えばミラの所為だし)
俺は口元に笑みを浮かべながら冗談半分に言うと、光の宝玉が遠慮気味に鈍い光を放っていた。
(さ~て、まずはこの森から出ないとな。 この世界の精霊は何処に居るんだ?)
(え、え~と、この世界は風の精霊の管轄となっています。 場所はこの森の中央に聳え立つ世界樹にいる筈なんですが・・・・)
着地に関しては色々と問題があったけど一応は精霊の近くに送ってくれたんだな。
でも、何か言葉が詰まっていたような? 何があったんだ?
(如何したんだ?)
(理由は分からないのですが、風の精霊の波動が何かに遮られているかのように微弱なんです)
(精霊に何か危機が訪れているという事か?)
(考えられない事ではありませんね。 マスター、急ぎましょう)
ルゥに答えると、まるで迷路のように入り組んだ獣道を勘を頼りに、遙か遠くに見える巨木を目印として只管に枝を掻き分けて進んでいく・・・。
森の中を歩き始めてから2時間が経過したが、森が広すぎるのか、はたまた俺が道に迷っているのか分からないが一向に巨木に近づいている気配は感じられなかった。
(一体どうなっているんだ? 魔物にでも化かされたか?)
誰に文句をいう訳でもなく、闇雲に歩いていると開けた場所に出る事が出来た。
(ようやく森を抜けたか・・・)
(いえ、マスターよく見てください! 此処はマスターが着地した場所です)
ルゥに言われて周りを見てみると、言われるとおり俺の着地点のクレーターと薙ぎ倒された木々といった僅か数時間前に見た景色が目の前に広がっていた。
(そんな、確かに目の前の巨木を目印に真っ直ぐ進んでいたはず・・・)
(マスター、もしかすると人を寄せ付けないために魔力の結界が森全体に張り巡らされているかもしれませんね)
(如何にかして結界を解除できないのか?)
(方法としては結界を張った本人に解除してもらうか、結界の魔力を探知しながら進むかしかないですね)
(魔力探知ってマルベリアの魔術師のフィルが使ってたような物か?)
(同じ様な物ですが、少し違います。 結界の場合は高確率で魔力により道を惑わせるので逆に魔力の感じられない道を進めば、突破する事が可能だと思います)
(それじゃあ魔力探知はルゥに任せる! 俺はルゥの言ったとおりに歩くから道案内は任せたぞ)
(了解しました。 其れと探知がし難くなりますからマスターは魔力を出さないで下さいね)
(分かった)
こうして俺はルゥの道案内の元、森の中を進み始めた。
(この場所は左右に分かれていますが真ん中の茂みに向かって進んでください。 その次は右です)
ルゥに道を教えられながら獣道を只管に歩き続ける事およそ4時間半、ついに生活しているような雰囲気の村にたどり着くことが出来た。
(どうやら無事に結界を抜けられたようだな)
俺は人の気配があまりしない森の中の集落を歩いていると、不意に声を掛けられた。
「貴様、何者だ! 人間がどうやって結界を抜けてきた!?」
猛々しい女性の声がしたと思ったら次の瞬間には首元に剣の切っ先が突きつけられていた。
「答えろ!貴様は何の用があって集落を訪れた? 返答次第では生きてこの森を出られはせぬぞ」
「ジェニス。 待ちなさい!」
今まさに剣で首を斬られようとした瞬間、村の奥から杖を突いた御爺さんが姿を現した。
あれっ?落ち着いて見てみれば、御爺さんも女性も耳が尖がっているような・・・。
「長老様!?此処は危険です。 お下がりください」
「ジェニス、ワシの言った事が聞こえなかったのか?」
「・・・・・・分かりました」
俺の首に剣を突きつけてきたジェニスと呼ばれた女性は『チッ』という舌打ちをしたあと剣を首から離すと腰の鞘に剣を収めて御爺さんへと跪いた。
女性とすれ違う様に御爺さんが俺の目の前に静かな足取りで歩み寄ってくる。
「ジェニスも言っておったが結界を抜けてくる人間が居ようとは、オヌシは一体・・・!?」
俺に近寄ってきた『長老様』と呼ばれる御爺さんは眉を吊り上げ、目を極限まで見開いた状態で口調を改めて問いかけてきた。
「いえ、貴方様は一体何者なんですか?」
「長老様! そのような怪しげな男に何を・・・」
「黙りなさい! 本来なら私達風情が声を掛けられないほど、高貴な御方の可能性があるのですよ!?」
ジェニスは俺と御爺さんの顔を交互に見ながら『わけが分からない』といった表情を見せている。
「何を言ってるんです? 俺は貴方達が言うただの何の変哲も無い人間ですよ?」
一瞬、神である事がバレたと思ったが、見破られる筈がないので平常心で答えたのだが・・・。
「謙遜なさらなくとも宜しいです。 貴方様が人間というなら、その御身体から溢れ出る人間とは思えないほどの途轍もない魔力と貴方様に付き従うように傍に浮かんでいる、2体の精霊様とその剣に宿っている精霊様のご説明をお願いいたします」
この一言によって俺も確信した。
ルゥやミラ、フレイといった精霊の姿を見ることが出来る人間などいるわけがないと・・・。
未だ次話は完成していませんが、これからじっくりと考え更新を遅れないようにしますので宜しくお願いいたします。