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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
武道大会編
81/230

第77話 界渡りの準備

2010年度最後の投稿となります。


来年も『異世界を渡りし者』をよろしくお願いいたします


ユニークアクセス50万人到達!

武道大会の優勝賞金5万リルを受け取った俺は宿屋へ帰らずに、その足でとある場所へと向かっていた。

その途中、優勝を称える街の住民の声とともに俺以外に賭けていたと見られる複数の住民達から殺気の篭った目で睨みつけられていた。

色々な視線を感じながら行き着いた先は、街の入口近くにある冒険者ギルドであった。

此処に来た理由は火山への通行許可が出ていないか調べるためだったが、通りに面した壁に吊り下げられている掲示板には既に終了している武道大会参加のお知らせや不審者に注意との張り紙だけだった。


「まだ通行許可は出ていないのかな?」


それほど急いでいるわけでもないが、詳細を聞こうとギルドに足を踏み入れた途端、集まっていた複数の剣士や魔術師といった屈強な冒険者たちからの視線を浴びた。


「あの男がレイモンド殿を打ち破ったという謎の剣士か・・・」

「とてもそんな風には見えないわね」

「どんな風に見えようと、レイモンド殿の足元にも及ばない我らの実力ではとても」


ひそひそと俺に視線を向けてきた冒険者たちからの小声が聞こえてきた。

俺は話しの内容が気になるもののギルドの案内窓口に行き、話を聞いてみることにした。


「いらっしゃいませ。御依頼ですか?それとも仕事探しでしょうか?」


ギルドに似つかわしくない、丁寧な言葉で受付と思われる女性が応答してくれた。


「いや、仕事じゃないんだ。少し聞きたいことがあるんだが、構わないだろうか?」

「私に答えられる事なら・・・・。どのような事でしょうか?」

「国境である火山への立ち入りの許可なんだが、何か詳しいことを聞いていないか?」

「はい。残念ですが、未だに騎士隊からの応答がありませんので通行は禁止になっております。 冒険者の方々には大変な苦労をおかけしていますが、何卒ご了承をお願いいたします」

「そうか、分かった。 忙しいところを悪かった」


俺は踵をかえして外に出ようとしたところでギルドの入口で騎士とぶつかってしまった。


「おっと、申し訳ない。急いでいたものでな」

「いえ、此方こそ」


騎士は俺に一礼すると、先程まで話を聞いていた窓口へと足を進めていた。


「伝令!国境の通行は解除されたがサウスラーズへの許可無き者の立ち入りは禁止する。スコルピオンへは通常通りだ」


騎士は其れだけを伝えると、足早に来た道を戻っていった。

という事は国境である火山までは入れるがサウスラーズには立ち入る事が出来ないという訳か。


「やっと解除されたか、早速向かうとするかな。だが、その前に・・・」


火山へと向かう前に旅の支度と宿屋へ挨拶をしに行く事にした。

数分後、宿屋へ足を踏み入れると真っ先にレイシアが話しかけて来た。


「ミコトさん!優勝おめでとうございます!!」

「おぅ兄ちゃん、あんたの御蔭で首が繋がったぜ!」

「良かったぁ~~~、此れで母ちゃんに殺されなくて済んだ・・・。」


最後に恐ろしい物言いをしてきた男がいたが、気にしないことにした。


「ミコトさんはこれから如何するのですか?」

「火山の通行許可も出た事だし、旅を再開する事にするよ。世話になったね」

「行ってしまうんですか・・・」

「え!?」

「い、いえ何でもありません。直ぐに出発するんですか?良ければ優勝のお祝いをしたいのですが」

「そうだな、色々と準備をしたいことがあるから出発は明朝にしようかな」


賞金で前回と同じ様に食料や向こうの世界で高く売れそうな物を買いたいからな・・・。


「そうですか!それなら宿代は結構ですので、泊まっていってくださいね」

「良いのか?なんだか悪い気がするな」

「そんな事はないですよ。ただ、お祝いの準備に時間が掛かるのでお待ち頂く事になりますが」

「じゃあ、それまで街を歩いてくるよ。旅の支度もあるしな」

「分かりました!準備して待ってますね」


その後、魔道具の店や食料品店を巡り優勝賞金の9割強を使って店の品物を買い漁った。

買ったものは人目の無いところで異空間に全てしまっておいた。

街中にある食料品店は殆んど売る物がなくなったとかで店じまいを始めている。


「それじゃあ、そろそろ日も暮れてきたし宿屋に戻るとするかな・・・。っと、あれは何だ?」


ある程度買い込んで宿屋へと向かおうとした時、薄暗い路地裏で密かに商いをしている店を見つけた。


「こんなところにも店があったのか。それにしても、何を売ってる店か分からないな」


俺は無性に気になり、謎の店へと足を運んだ。


「これは何を売ってるんだ?何やら訳のわからない小さなものが・・・。」


店頭に並んでいる『良く分からないもの』を見ていると、店の奥からオールバックのような髪型の厳つい女性が姿を現した。


「おっ?いらっしゃい!見たことの無い客だね。」

「あの、此処は何を売っている店なんですか?看板もないし、店先にもよく分からないものがあるし」

「誰かに紹介されてきたんじゃないのかい?」

「いえ、たまたま歩いてたらこの店を見つけたので立ち入っただけなんですが・・・。」

「へぇ~自力で見つけるとは大したものだ!此処は薬草、果物、野菜の種を専門に扱っている種専門の店さ」

「種?」

「そうさ、此処らへんのようなれた大地では育てにくいけどね」


種を売る店か、そういえばどんな植物でも種が付き物なのに如何してその事を考えなかったんだろう。


「お兄さん、折角だから買って行かないかい?果物の種なら安いもので10粒で5リルっていう位だからさ」

「どんな品物があるんですか?」

「ん?えっとね、今は薬草の種が5粒で1リルと毒消し草の種が5粒で2リル、果物の種は種類が多いんだけど一番安いもので10粒5リルから、一番高いもので10粒20リルで売ってるよ?」

「薬草は要らないから果物の種が欲しいな」


俺は散々店先で悩んだ結果、手持ちの金を全て使い切って合計で約400弱の種を買い込む事にした。

400粒といえば多く聞えるが実際には掌に収まる量でしかない。


「ありがとう!良かったらまた来て頂戴。いつも此処で商売してるからね!!」


恐らく2度と来る事は無いと思うが、軽く会釈をして軽くなった財布を手に宿屋へと歩いていった。

その後、レイシアが腕によりをかけて作った豪勢な優勝祝いの食事をして、この世界での最終日を迎える事になった。



次の更新は1/3を予定しています。


それでは皆様、良いお年を・・・

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