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異世界を渡りし者  作者: 山田 隆行
武道大会編
79/230

第76話 武道大会決勝 【後編】

お待たせいたしました!


武道大会最終話が完成いたしました。

武道大会決勝戦が開始されてから凡そ1時間あまりが経過したが、互角の攻防が続いており、どちらも相手に勝負の決め手となる決定打を与えられずに居た。

俺も体力は無限だが、目の前に居るレイモンドという爺さんも人間とは思えないほどの強さと並外れた運動神経を見せ付けていた。

このままでは勝負がつかないと判断した俺は爺さんを倒す事ではなく、魔力を解放して剣に纏わせる事で魔法剣とし、爺さんが装備している剣を砕く事に方針を切り替えることにした。

かといって全力で攻撃しては、爺さんを殺してしまう懼れがあるので事前に忠告する事にした。


「爺さん・・・。 正直、俺はあんたの事を殺したくないと思って手加減していたが、このままでは一向に勝負がつかない。 此れから俺の最大の攻撃を放つ!死にたくなければ全力で防御しろ!」

「ほう?すると、今までは手加減していたということか!? 我も舐められたものじゃな!」


レイモンドは俺の『手加減』という言葉に反応したのか、剣を持つ手を震わせながら殺気ともとれる闘気を俺へとぶつけてきた。


「このレイモンド、老いても剣士の端くれ!手加減されるなど、もってのほかじゃ!!」


『やはり相手のプライドを傷つけてしまっていたか』と考えていると。


「だが・・・。」

「ん!?」

「オヌシの本気での攻撃を見たくなった。その一撃に全てを賭けるという訳じゃな?」

「ああ次はいわば捨て身の攻撃、防御など全く考えていない最後の攻撃です。 失敗すれば俺の負けは確実でしょう」


『馬鹿な事を申すな!』と怒鳴られる覚悟をしていたが、返って来たのは盛大な笑い声だった。


「グワッハッハッハ!気に入った。 オヌシの剣、我が全力で受け止めよう!その代わり、その攻撃が我に通じなかった場合は覚悟は出来ておろうな?」

「勿論ですよ。 ただ先程も言ったとおり、全力で防御してくださいよ?」

「分かっておる! 安心して打ち込んで来い」


了承を得たところで、俺はレイモンドから距離を取り舞台の端まで歩いていった。

相手に背中を向けて歩き出した時、襲われる危険性も多少は考えたのだが流石は近衛騎士名誉顧問といったところか、微動だにせずに元の位置で防御の構えを取っていた。

最初はクラス50の魔力を剣に纏って攻撃しようと考えていたのだが、それでも少ないかもと考えクラス100の魔力を出す事にした。 

次に宿屋の自室で練習しておいた、剣に魔力を纏わせるといった行為を始めると次第に白銀の剣が俺の魔力を吸収し、刀身が金色に輝き始める。

魔力を放出させながら静かになっていた周りを見てみると、観客達は何が始まるのか分からずに固唾をのんで舞台に視線を釘付けにし、舞台の周りに配備されている治療を担当する魔術師は俺の魔力に当てられたのか、だらしない格好で地面にしゃがみ込んで唸っていた。


「我は剣士じゃから魔法というものは分からぬが、大気が震えておるの~~~」

「長らくお待たせ致しましたが、そろそろ行きますよ?」


魔力によって金色へと変化した剣を上段に構え、体勢を中腰にして構えを取る。


「なるほど隙だらけじゃな」

「攻撃を重視した構えはこうなんです。では行きますよ?全身で防御してくださいね」


レイモンドは俺の言葉を聞くと、緩んだ口元を締め、身体を屈め剣を盾の様に前方へと突き出してしゃがみ込んだ。 どんな攻撃が来るのか予想しているのか、頭は剣の延長上には配置されていない。

俺はその様子を見て安心していた。

理由はというと剣を砕いた後、延長上に頭があると首を刎ねてしまう恐れがあるからだ。

爺さんが身体全体で防御している事を再度確認した俺は精神を落ち着かせると剣を構えたままレイモンドに突進し剣を打ちつけた。

試合が始まってから凡そ1時間もの間、散々打ち合ってきたレイモンドの剣が呆気ないほど軽々と根元から砕け散り、打ち付けたその威力は剣を砕けても収まらず衝撃波がレイモンドの腕を掠め闘技場の壁へと飛び、轟音を立てて壁の一角が砕け散っていた。

あまりの威力にルゥの心配をしたが、傷一つ無い状態で元通り白銀の剣として手元にあった。

審判も一瞬何があったのか分からないような表情で見ていたが、我に返り動き出していた。


「それまで!レイモンド選手の剣が砕かれた事により第38回イスラントール武道大会優勝者はまさかの大番狂わせ、無名剣士ミコト選手に決定いたしましたーーーー!!」


その直後に舞台を取り囲んでいる観客席から、俺を称える盛大な拍手と歓声が零れ落ちそうなほど寄せられた。

俺は歓声に答えながらレイモンドの方を見てみると、思っていたよりも腕の傷は深いらしく魔術師4人がかりで治療に当たっていた。


「爺さん、大丈夫か?」

「何のこれしき!掠り傷に過ぎぬわ」


レイモンドは笑いながら起き上がろうとするが・・・。


「レイモンド様!動かないで下さい。 治療に専念できません」

「たかが掠り傷ごときで大袈裟じゃのう」

「大袈裟じゃありません! 傷は骨を掠めているんですよ!?最悪、剣が持てなくなる可能性だってあるんですから・・・」


魔術師達は治療魔法の錬度が低いのか、4人がかりでも血を止める事で精一杯のようだった。

俺は魔術師達を見かねて魔術師の1人を押しのけてレイモンドの治療に参加する。


「ちょ、ちょっと!? 治療の邪魔をする気ですか!」

「お前らの治療じゃ手遅れになってしまう。 俺に任せろ」


俺が治療をすると言っても食い下がらない魔術師を無視して掌をレイモンドの腕へとそっと差し伸べる。


「ヒール!」


俺が回復魔法を唱えると、まるで巻き戻しをしているかのように腕の傷が塞がっていき、数秒後には傷があったことさえ分からないほど、綺麗に治療されていた。


「傷は治しました。今までどおりに剣を振るう事が出来る筈です」


その様子に散々文句を言っていた魔術師は目が点になったように立ちすくんでいた。


「ふむ。違和感も感じられぬし、力の入れ具合も問題ない。

 すまんなワシの方こそ舐めておった、正直オヌシの剣戟で寿命が縮むかと思ったわい」

「それ以上、寿命が縮んだら不味いでしょうに・・・」

「違いない、ワァッハッハッハ!」


その後、重傷者は出したものの試合中1人の死者も出さずに武道大会の閉会式が終了し、俺は5万リル、レイモンドは3万リル貰い会場を後にした。

余談ながら闘技場を出る時にレイモンドやタルカス、フィンケルの近衛騎士や魔法騎士から『ぜひ国に仕官を!』や『近衛騎士隊に入隊を』と散々声を掛けられたが“やらなければならない事がある”の理由で断り、その場を後にした。



あと2、3話ほど挟んだあと次の精霊が待つ世界へと旅立ちます。

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